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富士通とMoBagel、効率よくAIモデルを構築するためのソリューションを提供

 富士通株式会社とAIスタートアップの米MoBagelは5日、AIにより企業のビジネスプロセスを変革するために2023年12月に締結した戦略的パートナーシップに基づき、今回、MoBagelのAutoMLプラットフォーム「Decanter AI」に、富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」からも提供されている技術の一部を搭載し、AIによる予測を高速化するソリューションとしてグローバルに提供を開始すると発表した。

 具体的には、機械学習モデルの構築を自動化する技術「Fujitsu Kozuchi AutoML」と、説明可能なAI技術「Fujitsu Kozuchi XAI」の一部である「Wide Learning」のライセンスを富士通がMoBagelに提供し、MoBagelは同社の「Decanter AI」に新規のソリューションとして実装することで、データ分析とモデリングを合理化しながら、正確かつコスト効率よくAIモデルを構築するための高度なAIソリューションを実現する。

 Decanter AIに実装されたAIによる予測を高速化するソリューションは、「データ検証と異常スコアリング」「アルゴリズム推奨システム」「説明可能なAIのための特徴分析」の3つの機能からなる。

 「データ検証と異常スコアリング」では、入力されたデータが、モデリングの際の精度の確保と処理の高速化のために、DecanterAIのデータ処理技術によって検証される。このスコアリングでは、情報の整合性と有用性の観点から、データが3段階でランク付けされる。このシステムは、分析とモデリングのためにデータセットを正確に評価し、より良いデータ管理のためにデータを調整する方法を提案する。

 「アルゴリズム推奨システム」では、Fujitsu Kozuchi AutoMLの技術をベースとしたアルゴリズム推奨システムが、最適な機械学習モデルを提案する。これにより、モデリングの効率と精度の向上が可能になった。

 「説明可能なAIのための特徴分析」では、機械学習モデルによって分析された結果に、Wide Learningの技術をベースとした特徴分析技術が、実践的な洞察を提供する。特徴分析により、重要な特徴を重み付けとともに提示し、それらの重要性と関連性を示す。さらに、特定された特徴は大規模言語モデル(LLM)により自然言語で要約される。

 例えば、過去の加入履歴データを使用して、自動車保険に加入する可能性が高い人を予測することを目的としたデモンストレーションでは、データ検証と異常スコアリングを行うことにより異常値が検出され、例外的なデータを排除する。続いて、アルゴリズム推奨システムでは、予測に最適なモデルとして、ランダムフォレストモデルが提案される。さらに特徴分析では、自動車保険に加入する可能性が高い人を見分ける上で最も重要な特徴を、重み付けとともに特定できる。

 自動車保険の例では、車の所有歴や居住地域などにひも付けて、特定の特徴を持つ顧客が自動車保険に加入する可能性が高いことを見いだした。この分析は、LLMを用いて理解しやすい自然言語の形に変換される。このように企業は、マーケティングおよび販売戦略を洗練し、ターゲットを絞り、企業の収益を最大化できるとしている。

 Decanter AIに、Fujitsu Kozuchi AutoMLとWide Learningを搭載した結果、最適化された機械学習モデルがシステムから推奨されることで、AIによる市場予測において、従来のDecanter AIと比べて、精度を維持したまま処理速度を4倍に高速化したと説明。また、Wide Learningによって強化された特徴分析技術により、関係性を最適化して複雑なデータを考察し、自然言語の形で表示されることで、実行に移せるレベルの提言を導き出すことが可能になったという。

 近年は専門性の高いAI技術者が不足しており、企業がAIを導入する際にはコストや期間の長期化などの課題があるが、今回開発したAIソリューションは適応性やコスト効率に優れており、迅速な導入が可能だとしている。

 MoBagelは今後、Deloitte Touche Tohmatsuのチームと共同で、今回開発したソリューションを用いて金融犯罪を防止する実証実験を実施する。この実証実験は、Decanter AIに実装されたソリューションを用いたハンズオンワークショップの形をとり、実際に膨大な取引データを分析し、異常な行動や疑わしい取引パターンを迅速に特定する過程について検証することを目的としている。

 富士通とMoBagelは今後も、AIソリューションをさまざまな業界の顧客に提供していくことで、顧客のビジネスプロセスの変革と効率化に貢献していくとしている。