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CFOの役割が「金庫番」から「全社変革プロジェクトのオーナー」へと変化――、アクセンチュア

 アクセンチュア株式会社は21日、最高財務責任者(CFO)や財務リーダーを対象とした調査を基に、CFOの役割が変化しているトレンドについて説明会を開催した。説明にあたったアクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 Enterprise Valueマネジメント プラクティス 日本統括 マネジング・ディレクターの山路篤氏は、経営におけるCFOの役割について、「金庫番型のCFOではなく、現在のCFOは全社変革プロジェクトのオーナーへと進化しつつある」と述べた。

アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 Enterprise Valueマネジメント プラクティス 日本統括 マネジング・ディレクターの山路篤氏

 その背景には、企業価値の持続的向上のため、全社変革プロジェクトが増加していることにある。調査によると、全社変革に向け取り組んでいる改革プロジェクトの数は、1社あたり平均3.1件。今後1年で着手するという2.1件を加えると、「来年は1社あたり約5件の全社変革プロジェクトに取り組むことになる」と山路氏は言う。

全社変革プロジェクトの増加

 その中でCFOは、「全社変革を成し遂げるプロジェクトのオーナーとして、全社変革をより多く、より早く推進する重要な役割が求められるようになっている」と山路氏。調査でも、全社変革プロジェクトを2つ以上主導しているCFOの割合は、過去2年間の11%から、今後1年間では34%へと大幅に増加することが見込まれており、「CFOは今後複数の全社変革プロジェクトをリードしていくだろう」と山路氏は述べている。

 また山路氏は、「成果を生み出すCFOは、他部門を巻き込んで真に全社を変革している」と話す。調査で「期待以上の成果を生み出せたか」を聞いたところ、「成果を生み出せている」と答えたCFOは、4部門以上に影響を与えるような変革を実施した割合が57%にのぼっている点を山路氏は指摘。

 一方、「成果を生み出せていない」と答えたCFOで、4部門以上に影響を与えるような変革を実施した割合は21%にとどまっているという。全社変革の中でも、「特に事業のフロントエンドとなる現場部門や顧客対応部門、販売部門、マーケティング部門などに影響を与えているかどうかで、成果に差が出ているようだ」と山路氏は説明する。

成果を生み出すCFO

日本のCFOの現状と今後に向けたアドバイス

 これまでの数値はグローバルでの調査結果に基づくものだが、日本でも全社変革プログラムはグローバルと同様、増加傾向にあり、CFOが多くの全社変革をリードしているという。

 ただ、日本のCFOは「限定的な範囲での変革のみで、真の全社変革には取り組めていない」と山路氏。IT部門に影響を与えるようなプロジェクトにはある程度関わっているものの、「事業現場や顧客対応、マーケティングといった事業フロントには影響を与えられておらず、全社変革とうたっていても、実態は部門に閉じた変革にとどまっている」と山路氏は語る。

日本のCFOの問題

 その背景として山路氏は、CFOと事業責任者が事前に目指す価値を把握しきれていないことや、定量的な財務効果を掲げられていないこと、そしてデータの質に対する感度が低いことなどを挙げ、「日本では、質の高いデータを収集できる状況になっておらず、その価値を定量化することも難しいため、価値を掲げて全社変革を推進することが困難」と指摘する。

全社変革に向けた課題

 そこで山路氏は、日本のCFOが行うべきこととして、「まずは推進中の改革でアプローチする価値を定量化すること。中長期的には、事業フロントも含めた全社変革を推進できるよう、データが集まる仕組みを整えること。また、効果創出支援チームを立ち上げて全社変革プロジェクトに送り込み、効果を管理できる仕組みを作ること。そして次世代に向けては、経理・財務人材の育成モデルを改革し、ビジネスの最前線での経験も積めるような育成モデルを導入することだ」とアドバイスした。