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日立建機、全社DXを支援する大規模基幹システム基盤をOCIで刷新

 日本オラクル株式会社は6月28日、日立建機株式会社の経理、開発、生産、設計、販売、部品、輸出、人事、サービスを担う、大規模かつミッションクリティカルな基幹業務システム基盤のクラウド移行に「Oracle Cloud Infrastructure (OCI)」を導入したと発表した。

 日立建機は、OCI上で稼働する「Oracle Cloud VMware Solution」と「Oracle Exadata Database Service」を活用し、アプリケーションやデータベースの構成変更を最小限に抑えた確実なクラウド移行を短期間で実現。OCI上で柔軟性、拡張性、性能および経済性に優れたシステム基盤に刷新し、全社で取り組むDXを加速するとしている。

 日立建機は、油圧ショベル、ホイールローダ、道路機械、鉱山機械の開発、製造、販売、レンタル、サービスを手掛けており、世界中で累計40万台以上の建設機械が稼働している。「顧客に寄り添う革新的ソリューションの提供」を経営戦略の1つとして掲げ、DXを推進している。具体的には、IT環境の自前化を前提に、アジャイル文化の醸成、人財育成、DX基盤の整備に取り組んでいる。

 この一環として、基幹システムや建設機械の稼働データを一元化し、データ活用に向けた今後のAI導入を見据え、大規模基幹システムのパブリッククラウドへの移行を決定した。クラウドの柔軟性と拡張性に加え、従前のオンプレミス環境からの安心・安全な移行、同様の可用性とデータ保護の実現、事業継続性の強化、TCO削減などの要件を元に、複数のパブリッククラウドを検討した結果、これらの全ての要件を満たすOCIを選定したという。

 日立建機は、オンプレミスのVMware仮想化環境にあった約500のアプリケーションサーバーと約100のデータベースを「Oracle Cloud VMware Solution」「Oracle Exadata Cloud Service」に移行し、オンプレミス環境と同じアーキテクチャ、管理性を維持しながら、より高い性能、可用性、データセキュリティ構成を実現し、コストを最適化する。また、事業継続性の強化に向け、「Oracle Cloud」東京と大阪リージョンを活用した災害復旧環境も新たに構築する。

 このプロジェクトは、日本オラクルのコンサルティング・サービス部門の支援のもと、データベース統合および移行は株式会社日立ソリューションズによる協力、「Oracle Cloud VMware Solution」へのアプリケーション移行は、株式会社日立製作所と株式会社日立システムズの協力を得て、日立建機が自社で行っている。2023年4月から4カ月でOCI上に環境構築を行い、2023年8月に開発環境を先行して移行したあと、本番環境を段階的に移行し、2024年5月に「Oracle Exadata Database Service」への移行を完了した。2024年8月に「Oracle Cloud VMware Solution」への移行を完了し、2024年内に災害復旧環境の稼働開始を予定している。

 日本オラクルは、「Oracle Cloud Lift Services」のフィジビリティスタディとPOC支援サービスを提供し、大規模基幹システム移行の課題や懸念の整理・解消、「Oracle Cloud VMware Solution」「Oracle Exadata Database Service」のスキル習得を支援した。PoCにおいては、OCIの基本機能、可用性、移行、運用に関する約700のシナリオを検証し、移行段階においてOCI上で先行して稼働する開発環境を活用し、各ワークロードに事前計画、テスト、および検証を行うことで、ビジネスの停止期間を最小限に抑え、確実に移行している。

 日立建機は、クラウドへの移行により、リソースの容易なスケーリングが可能になり、ビジネスの成長や変化に応じる柔軟性が向上し、インフラストラクチャの運用コストを約20%削減。従前環境では整備していなかった災害復旧環境を含めても、コストの低減を達成できる見込みとしている。また、主要なシステムにおいて、オンライン処理性能が最大50%向上し、バッチ処理性能は最大60%向上。インフラストラクチャの管理から解放されたことで、ITチームのリソースをビジネスの中核となる新しいイノベーションやプロジェクトに時間を充てられ、DX推進の原動力強化につながっているという。

 日立建機は、OCI上に移行したアプリケーションのクラウドネイティブ化やオンプレミス環境で稼働する他のデータベースの移行も予定する。データドリブン経営を目指し、重要なデータをOCIに集約することで、マルチクラウドやAIの活用を見据えたDX基盤の整備に取り組む方針としている。