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日本IBM、エンタープライズ向けAI駆動開発ソリューション「ALSEA」の正式提供を開始
先行プロジェクトによる検証結果をふまえアップデートを実施
2026年7月16日 06:15
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は、エンタープライズ向けAI駆動開発ソリューション「AI Lifecycle Shared Engineering Artifacts(以下、ALSEA(アリーシア))」を、7月15日より提供開始した。
AI駆動開発(仕様駆動開発)は、仕様を策定して文書化し、それを基にコードを生成し検証する一連の開発プロセスを、自律的なAIエージェントが中心となって行うソフトウェア開発方式だ。ALSEAは、この開発方式をエンタープライズ開発に求められる品質で実施できるようにするものである。
日本IBMはALSEAを4月に発表し、80社以上の企業への適用に向けて先行プロジェクトでの検証を実施してきた。この検証により効果を確認し、改善要望などのフィードバックを反映して、今回の提供開始に至ったという。
提供形態としては、まずシステム構築サービスの中で提供を開始。9月までには、単独で提供する有償版の提供開始も予定している。
ALSEAは、年内100件のプロジェクトへの適用を目指す。これを実現すべくIBM社内の技術者の育成を進めており、6月末現在で国内800人と海外500人を育成済みだという。本格展開に合わせて、社内のサポートデスクをフィリピンで7月中に立ち上げる予定だ。
なおALSEAは、IBMのコーディングAIエージェント「IBM Bob」をベースとし、日本IBMの独自のシステム開発のノウハウを組み込んだAI駆動開発ソリューションである。このIBM Bobの新バージョン「IBM Bob 2.0」も、7月14日(米国では7月9日)に発表されている。
AIが日本IBMのノウハウを参照しながらウォーターフォール開発の工程をなぞる
7月15日に開催された記者会見において、日本IBM 取締役副社長執行役員 村田将輝氏は、「IBMは2026年を、システム開発のあり方を過去40年で最も変える年と位置づけている」と、AI駆動開発(仕様駆動開発)への意気込みを見せ、IBM BobとALSEAはそれを支えるツールだと語った。
村田氏はまず、IBM Bobの特徴を「早い・安い・うまい」と表現した。より具体的には、ユーザーが依頼したタスクをすべて高性能なAIモデルに処理させるのではなく、最適なモデルやAI以外のツールに分ける「トークン消費の最小化」、そのトークン単価を下げ変動のないシンプルな料金体系で提供する「業界平均を大きく下回るトークン単価」、IBM製品や関連技術に特化したプレミアムパッケージの提供や脆弱性の混入を防止するAIツールとの連携など「成果物の価値」の3つを同氏は挙げる。
このIBM Bobをベースに、日本IBMの独自のシステム開発のノウハウを組み込んだAI駆動開発ソリューションがALSEAだ。「AIエージェント(IBM Bob)に対する参考書のようなもの」と村田氏は説明する。
「AIエージェントは作業指示に対してまじめに作業するため、開発者の作業指示に曖昧さやばらつきがあると、成果物にもばらつきが生じて人間が修正に追われてしまう。そこで、システム開発のノウハウをAIが理解できるように文書化・構造化して参考書(コンテキスト)として渡す。AIエージェントがコンテキストを理解して成果物を作るため、人間は設計と監督に集中でき、トータルの生産性が上がるという考え方だ」(村田氏)。
4月の発表の時点で、日本IBMでは、ALSEAにより、2027年以降にシステム開発ライフサイクル全体で35%の工数削減と30%の期間短縮を目標としている。
ALSEAがエンタープライズ向けAI駆動開発にもたらすものとして「成果物の品質均一化」「人間のワークロード削減」「大規模開発プロジェクト」の3点を、日本IBM 技術理事 技術戦略&変革担当(AI for ITリーダー) 前田幸一郎氏は挙げた。
「このソリューションを活用することで、『2025年の崖』で指摘されているような、レガシーシステムが抱える課題、例えばブラックボックス化や、複雑化、人材制約などを解消して、システムの戦略価値の最大化を促進することを目指している」(前田氏)。
IBM BobとALSEAの動作としては、ウォーターフォール開発の工程をなぞり、各工程の作成物を次の工程の入力としていく。各工程は、顧客やプロジェクト固有のルールを作成するところと、それに基づいて成果物を生成するところの2段階からなる。ここでALSEAのガイドやテンプレートを参照させることで、求めるアウトプットが得られるようにしている。
4月時点からのアップデート点の説明にあたり、前田氏は、AIによる開発を、人が主体になる段階からAIが主体となる段階まで、一問一答の「プロンプトエンジニアリング」、自律的なAIに人間が背景情報を与える「コンテキストエンジニアリング」、自律的なAIの挙動を人間が制御する「ハーネスエンジニアリング」の3段階に分類。そして、IBM Bob 1.0と4月時点のALSEAはコンテキストエンジニアリングの段階だったが、今回のIBM Bob 2.0と7月時点のALSEAはハーネスエンジニアリングだと説明した。
具体的に、今回のアップデートとして、IBM Bobについては、Skillsによる標準化と、サブエージェントに分割することによる処理の高速化が行われた。
また、ALSEAについては、先行プロジェクトによる検証結果をふまえ、品質と使い勝手の向上や、フィードバックが多かった曖昧さの排除、品質の確保と成功の確実性を高めるためのハーネス機能への対応などがなされた。
ハーネス機能としては、入力に曖昧さや不足があった場合に、AIが推測するのではなく必ず人間に尋ねる機能や、生成物の整合性をAIが自ら確認して不備がなくなるまで修正を繰り返すような仕組みを実装したという。
4月からの先行プロジェクトの取り組みについても前田氏は報告した。80社以上の企業への適用に向けて事前検証を実施。銀行業、保険業、運輸業、旅行業などの顧客プロジェクトで検証を実施したところ、20~30%の工数削減効果があったとした。
またそこから得られたフィードバックのうち、今回は仕様書との整合性チェックの機能を優先的に実装するとともに、残りの要望についても対応を予定しているという。
ALSEAの今後のロードマップとしては、7~9月には、単独で提供する有償版や、既存プロジェクトのモダナイズ支援機能、SAP(ABAP)開発への対応を予定している。
そして10~12月には、既存のテスト自動化のアセットやツールとの統合や、IaC(クラウド基盤構築)への対応、アジャイル開発への対応を予定する。
最後に前田氏は、開発にAIの関与が深まるにつれて、人間の役割はコードから仕様、要件へとより上流にシフトレフトしていくだろうと述べ、「IBMはこのビジョンのもと、お客さまのプロジェクトにおけるAI駆動開発の実践と定着を推進していく」と語った。
みずほのAI駆動開発への取り組み
記者会見には、株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役常務 グループCIO / 株式会社みずほ銀行 常務執行役員 CIO 檜原伸一郎氏も登壇した。
みずほでは2023年ごろから、ビジネスとITが一体となって、ITだけでなく業務のあり方も変えるIT改革に取り組んでいると檜原氏は語った。
ゴールはアジリティの高いビジネスの実現。それに向けて、投資に優先度をつけシステムの新陳代謝を進め、アーキテクチャやプロセス標準化、共通プラットフォームなどによりデリバリーの高速化を目指す。
この共通プラットフォーム自体はすでに実装できているが、先行投資の理解・承認や、開発チームの理解と現状維持バイアス、移行のコストや期間といった壁が残っていると檜原氏は言う。この課題に対して、プロトタイプによる効果の実装や、サポート組織の設置、そしてAI活用の推進で対応を進めている。
AI駆動開発は現在はまだ初期段階だという。まずフェーズ1として2027年までには、AI導入とプロセスの整理・標準化によるAI Ready化を実施する。その後、フェーズ2としてAIの自律化、そしてフェーズ3としてAIがE2E(End to End)のプロセスを主導し人間が共に活動する姿を目指す。
そして、日本IBMとAI駆動開発に取り組んでいる。具体的には、個人の顧客が利用するようなアプリケーションの領域で、IBM BobによるAI駆動開発のPoCを実施しているという。
「今のところ、設計から実装までで3割程度の工数削減が可能というところまでは見えてきている」と檜原氏は言いつつ、「ただし、実装から単体テストのような手を動かす開発では非常に効果が出るということは見えてきた。一方で、レビューやプロセスの最適化は、まだまだ課題と思っている」と今後の取り組みに触れ、「ALSEAについても、このプロジェクト全体でより大きな生産性向上を果たせる、あるいは品質の向上を同時に果たせるということで期待をしている」と語った。





















