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富士通、複数の交通手段を組み合わせた移動を再現する複合型行動選択モデル技術を開発

 富士通株式会社は26日、複数の交通手段を組み合わせた移動において、料金設定などの変更によって人々の移動がどのように変化するかを予測し、その効果を評価できる複合型行動選択モデル技術を開発したと発表した。

 同技術により、都市全体の環境負荷を抑えつつ、利便性や経済性を損なわない移動を、自家用車や公共交通、徒歩などの複数の交通手段の組み合わせを考慮し実現するマルチモダリティ施策の検討と効果予測が可能になるとしている。

 富士通は既に、単一交通手段を想定した移動をシミュレーションするデジタルリハーサル技術を開発済みだが、今回開発した、複数の交通手段を考慮したデジタルリハーサルを可能にする複合型行動選択モデル技術は、1)交通手段の組み合わせパターン全てではなく、組み合わせに含まれている主要な移動手段のみに着目することで組み合わせ数によらず学習が必要な要素を一定数にする、2)主要な移動手段に対して移動者の優先度を示す選好度関数を定義して学習することで、乗り換えなどの詳細な移動履歴データが無くても、主要な移動手段のみの利用履歴データを用いてモデルの学習が可能――という2つの特長を備えているという。

複合型行動選択モデル技術とデジタルリハーサル

 開発した技術を用いて、通勤者の実データ1.5万人分を利用して評価を行ったところ、郊外から都心へ通勤する人の交通手段選択を95%の確率で高精度にシミュレーション上で再現できることを確認した。さらに、同技術を用いたデジタルリハーサルで郊外の駐車場料金を下げるインセンティブを導入すると、人々が最寄り駅までのみ車を利用し、その先は公共交通を利用する通勤形態に変容し、公共交通の利用率が9%増え、CO2排出量を12%削減する施策の導出にも成功した。

 富士通は、デジタルリハーサル技術を用いたモビリティのユースケースとして、これまで特定エリアを車が走行する際に課金をすることで、エリア内の渋滞や炭素排出量を抑えるロードプライシング施策や、シェアードeスクーター事業の運用改善を図るシェアードモビリティ施策、今回のマルチモダリティ施策へと展開してきた。今後も、移動に関わる社会課題解決につながる施策の立案を可能とする技術として、研究開発を進めていくとしている。

 また、富士通は1月19日に、さまざまな都市でのシェアードモビリティの導入効果を検証できるデジタルリハーサル技術を、Fujitsu Research Portalで公開しており、今後、今回開発した複合型行動選択モデル技術をはじめとする、AIを含むICT技術に最新の行動経済学の知見を取り入れたソーシャルデジタルツイン技術について、順次公開していくとしている。

公開するサンプルアプリケーションでのデジタルリハーサル画面例