ニュース

データマネジメントの予算は過半数の企業が「IT投資予算の5%以下」、インプレス総合研究所「データマネジメントの実態と最新動向2024」

 株式会社インプレスのインプレス総合研究所は、データマネジメントに関する調査結果を発表した。また、同調査の詳細は、新産業調査レポート「データマネジメントの実態と最新動向2024」として発売した。

 データマネジメントとは、企業がデータをビジネスに生かせるように維持していく取り組みのこと。近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や、そのためのデータドリブン経営などの観点から、ビジネスにおけるデータの価値は高まっており、最近関心を集めている生成AIを含め、データを活用する技術も進化する中で、企業にとってデータマネジメントの重要性も高まっている。

 調査では企業におけるデータマネジメントの取り組みの実態を、アンケート調査の結果をもとに多角的に分析し、明らかにしている。また、主要なベンダーを対象に、データマネジメントに関連する製品・サービスの特徴や、各社のビジネス動向・戦略を調査している。

 調査では、多くの企業のデータマネジメントは道半ばであると言え、多くの企業でデータマネジメントをIT部門が担っており、事業部門の関与は限定的であるほか、専門組織や人材が担当するケースも少数にとどまると指摘。また、多くの企業が、スキルを持つ人材や予算の不足を課題として挙げている。

 必要なデータを正確かつ最新の状態に保つための、重複や表記ゆれなどの不備の修正や名寄せといったデータ品質の維持・向上の活動状況に関する質問では、「必要に応じて、システムごとにデータの品質を維持・向上する活動を行っている」が39.8%で最も多い回答で、「部門レベルでデータの品質を維持・向上する活動を行っている」が19.2%で続いた。一方で、「全社レベルでデータの品質を維持・向上する活動を行っている」は17.3%となった。

データ品質の維持・向上の活動状況(出典:インプレス総合研究所「データマネジメントの実態と最新動向2024」)

 マスターデータ(ビジネスの基本となる社員、商品、取引先などのデータ)の一貫性を維持するための取り組みである、マスターデータマネジメントの実施状況についての質問では、「特に共通のマスターデータはなく、システムごとに管理している」が30.8%で最も多い回答となった。「部門単位で限られたマスターデータのみ整備し利用している」は15.8%であり、マスターデータを全社的に整備していない企業が半数弱となっている。一方で、残りの半数弱は「主要なマスターデータ」あるいは「一部のマスターデータ」を全社的に整備し、利用している。

マスターデータマネジメントの取り組み状況(出典:インプレス総合研究所「データマネジメントの実態と最新動向2024」)

 データ品質の維持・向上の活動では6割弱、マスターデータマネジメントでは約半数の企業が、部門単位やシステム単位での取り組みとなっている。部門やシステムの単位でデータを管理することは、データ間の整合が次第に失われ、サイロ化(孤立し連携できない状態)が進む一因となるが、データ品質の維持・向上などへの取り組みは、コストの肥大化につながる。

 こうしたことを防ぐためには、社内に散在するさまざまなデータを可視化し、体系的に管理するためのデータアーキテクチャを策定することが有効となるが、データアーキテクチャを策定済みである企業は約1割で、多くの企業では策定していないことが推測されるとしている。

データアーキテクチャの策定状況(出典:インプレス総合研究所「データマネジメントの実態と最新動向2024」)

 データ品質に関する課題についての質問では、「鮮度や精度・粒度が適切でないデータがある」という回答が70.3%で最も多く、「重複データがある」が56.0%、「どこにどんなデータが存在するのか明確でない」が53.0%で続いた。また、マスターデータマネジメントの課題では、「既に多くのシステムが稼働しており、一元化や統合が現実的でない」が48.9%で最も多かった。こうしたことから、多くの企業では社内に散在するデータが多岐にわたり、統制が効かない状態であることがうかがえると分析している。

データ品質に関する課題(複数回答)(出典:インプレス総合研究所「データマネジメントの実態と最新動向2024」)
マスターデータマネジメントの課題(複数回答)(出典:インプレス総合研究所「データマネジメントの実態と最新動向2024」)

 企業がデータマネジメントに期待する効果を聞いた質問では、「業務の効率化・生産性の向上」が72.6%、「意思決定の迅速化」が51.1%、「デジタルトランスフォーメーションの推進」が44.7%で続いた。いずれも多くの企業が直面している大きな経営課題であり、データマネジメントがその解決につながると期待されるとしている。

データマネジメントに期待する効果(複数回答)(出典:インプレス総合研究所「データマネジメントの実態と最新動向2024」)

 一方で、企業のIT投資予算に占めるデータマネジメントに関わる投資を聞いた質問では、54.1%の企業が「5%未満」と回答した。また、データマネジメントに関わる投資の効果の明確化について、「明確になっている」または「ある程度は明確である」と回答した企業は合わせて1割強で、ほとんどの企業では明確化していないと回答しており、データマネジメントは費用対効果を明確な数値で説明することが難しく、予算を確保しにくいことがうかがえると分析している。

IT投資予算に占めるデータマネジメントに関わる投資の割合(出典:インプレス総合研究所「データマネジメントの実態と最新動向2024」)
データマネジメントに関わる投資の効果の明確化(出典:インプレス総合研究所「データマネジメントの実態と最新動向2024」)