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KDDIとKDDI総合研究所、暗号化データをそのまま高速に分析できる技術を開発

 KDDI株式会社と株式会社KDDI総合研究所は8日、次世代暗号である完全準同型暗号を使い、暗号化されたデータをそのまま高速に分析する手法の開発に成功したと発表した。

 完全準同型暗号は、データを暗号化したまま分析できるため安全性が非常に高いことが特徴で、医療データなどの機密性の高いデータを暗号化したままさまざまな操作ができることが期待されている。KDDIとKDDI総合研究所は、完全準同型暗号の2030年代半ばでの実用化を目指して、プライバシーを守りながら企業間のデータ利活用を推進し、顧客に新たな価値を提供できるサービスの実現に向けた取り組みを進めていくとしている。

 完全準同型暗号では、暗号化を行う際に安全性を確保するため乱数をノイズとして加えるが、暗号化したデータを使って演算を行うと、各データのノイズが累積し、処理できなくなる。そのため、ブートストラップ処理と呼ばれる処理が必要になるが、従来の完全準同型暗号では、ブートストラップ処理に要する計算量が大きく、演算時間がかかることが課題だった。

 今回、開発した新たな手法では、ブートストラップ処理を1.6倍高速化することに成功した。また、完全準同型暗号の基本演算処理の高速化にも取り組んでおり、標準的な手法と比較し、加算において100倍、乗算において60倍の高速化を達成しているという。

 KDDIとKDDI総合研究所は、完全準同型暗号が実用化されることで、プライバシーや情報漏えいを懸念することなく、多種多様なデータが分析できるようになると説明。今後、複数機関をまたぐ、さまざまな種類のヘルスケア情報を活用した新薬開発や、リアルタイムの位置情報に合わせたコンシェルジュサービスなど、新しい価値やサービスの創出を目指すとしている。

完全準同型暗号の利用イメージ