ニュース

日本オラクル、NetSuiteの国内事業戦略を発表 特徴を生かして中小企業への訴求を図る

 日本オラクル株式会社は13日、クラウドERP「Oracle NetSuite」の事業戦略説明会を開催した。2023年7月にバイスプレジデント NetSuite事業統括 カントリーマネージャーに就任した渋谷由貴氏は、「これまでは当社の直販で提供してきたが、日本の中小企業のお客さまに利用していただくために、パートナー経由での販売を新たに開始するなど、事業のてこ入れを行った」と説明。パートナーと連携することで、これまでは訴求できていなかった中堅・中小企業をターゲットとしていく。

 日本オラクル 取締役執行役社長の三澤智光氏は、「われわれのアプリケーション戦略は、大は小を兼ねないという戦略」と述べ、中小企業に適したアーキテクチャのNetSuiteを中小企業に提供していくことを強調した。

日本オラクル株式会社 取締役 執行役社長の三澤智光氏

 クラウドERPの先駆けであるNetSuiteは、創業から25年となり、日本での事業展開を開始してから18年になる。グローバルでは3万7000カスタマーを持ち、日本でのユーザー数は未公表であるものの、「3桁のお客さまがいる」(渋谷氏)という状況となっている。

 日本オラクルには、NetSuite以外にも、基幹システムとしてOracle Fusion Cloud、Industry SaaSがあるが、三澤氏はまず、Fusion Cloudと他社のERPについて、「われわれのFusion Cloudは、ERP、SCM、CRM、HCMがコンポーザルな形、いわゆる独立した形で段階導入しやすい設計になっているほか、シングルデータモデルを採用していることが大きな特徴となっている。また一般的な大企業向けERPは、ERP、SCM、HCMが独立したモジュールで、それぞれ独立したモジュールに対してそれぞれのデータモデルが存在し、それをさらにインテグレーションするため、非常にコストがかかる仕組みとなっている。それに対し、われわれのFusion、さらにNetSuiteも単一のアーキテクチャーで、単一のクラウドで動作している点が一般的なERPとの大きな違いだ」と説明。

 そして、「NetSuiteはそれに加え、中小企業での利用を想定し、ERP、SCM、HCMを統合したモジュールでデザインしている。財務、人事といった部門が存在する大企業に対し、中小企業にはそこまで部門がきちんと分かれていないことも多い。中小企業が導入しやすいアーキテクチャとなっているのがNetSuiteだ」と、それぞれの特徴を説明した。

他社ERP、Oracle Fusion Cloud、NetSuiteの違い

 中小企業にとって導入しやすいデザインであることに加え、今後の中小企業に求められる変動が大きい経済状況に迅速に対応するため、すべてのシステムからデータを集約し一元管理することができる。

 「単一ビューで、すべての人が同じ情報を見ることができる。そのデータを元にROIを最大化し、適切なタイミングで、適切に投資を行っているのか、チャネル間で一貫性を持った価格管理を行っているのかを管理することができる。目標達成に向けKPIを正しく管理するなど、お客さまが少ない労力で効率よく基幹システムを管理していくイノベーションを行うことをサポートする。NetSuiteを利用することで、データの一元化、あらゆる情報の把握、キーとなる作業の自動化などを進めることができる」(渋谷氏)。

日本オラクル株式会社 バイスプレジデント NetSuite事業統括 カントリーマネージャー 渋谷由貴氏

 日本での利用に向け、法令対応として、適格請求書等保存方式に対応するための請求書、クレジットメモ、現金売上帳簿のテンプレート、締め請求書の帳票テンプレートなどを搭載。電子帳簿保存法への対応のために、NetSuiteの運用に関するガイダンスを提供するほか、消費税や消費税申告準備機能も持っている。また日本向けのローカライゼーションとして、日本で定番の財務諸表フォーマット、締め請求書、手形などにも対応しているとのこと。

日本の要件対応

 会計では、Bank Feedsとして既に北米・豪州などで提供されている銀行口座明細連携を、日本の金融機関向けモジュールとして提供予定。日本でもPEPPOLベースのデジタルインボイス導入が始まることに対応し、日本版デジタルインボイステンプレートの提供も予定している。さらに、手形管理機能もSuiteApp化し、他国の要件も取り入れた汎用機能として提供される予定だ。

24会計年度以降に追加される新機能

 AIにも対応し、ドキュメントでは文書の自動分類、請求書のキャプチャなどを行うほか、予測・予知機能として、インテリジェントインサイトでサプライチェーンリスク予測なども行っていく。言語についても、翻訳機能などがさらに充実する見込みとなっている。

NetSuiteをさらに進化させる機械学習とAI

 導入にあたっては、無料で提供する導入前のガイダンスとサポートを行うサービス、有料の導入サービス、有料の導入後サービス・サポートを一貫して提供していく。

 「日本でのお客さまを増やしていくためには、パートナー企業とのエコシステムを作っていくことが欠かせない。SB C&S、イメージ情報システムなどのパートナー企業さまとの協力関係によって導入企業拡大を目指したい」(渋谷氏)。

Oracle NetSuiteのサービス

 説明会には、日本でNetSuiteを活用した経営システムDXを標榜するタナベコンサルティンググループ、導入企業である株式会社SkyDrive、販売パートナーであるSB C&Sが登壇した。

 タナベコンサルティンググループでは、NetSuiteを導入することで経営システム刷新を行うことを企業に勧めている。Oneプラットフォーム戦略によって経営に関わるリソースを集約し、管理する体制とする。マネジメント・ダッシュボード活用で、予算・実績管理だけでなく全社・部門・個人の「先行差額管理」を行い、財務会計と直結したマンスリー・ウィークリー・デイリーの管理会計を実践できることなどが大きな価値だとしている。

 タナベコンサルティンググループ 専務取締役の藁田勝氏は、「当社自身が6社でグループ経営を行い、9つの基幹システムが存在していたが、NetSuiteに集約し、Oneプラットフォーム戦略と社内で呼んでいる、システムと経営戦略が直結する基幹システムへと変貌することができた」と説明。NetSuiteを利用することで、経営に直結した基幹システムに生まれ変わったとアピールした。

 SkyDriveは、空飛ぶ車や物流ドローンを開発するスタートアップ企業。2020年にNetSuiteを導入したが、導入を決めたのはIT部門が少人数でも利用しやすいERPである上、カスタマイズ機能の豊富さだった。「当社のIT部門は少人数だが、コーディング不要のワークフローや入力フォームのカスタマイズができる。基本的にはノーコードでカスタマイズができる上、特殊なボタンアクションやチェックロジック等が必要になった場合には、スクリプトを利用すれば、画面の動作に技術的に限界無くカスタマイズが行える点を高く評価している」(SkyDrive 管理部ITグループ マネージャーの佐野琢也氏)という。

株式会社SkyDrive 管理部ITグループ マネージャーの佐野琢也氏

 ソフトウェアの卸事業を展開するSB C&Sは、NetSuiteを取り扱うが、これまでのパッケージ販売とは異なりSaaSであることを生かし、アフィリエイトビジネスを行う。2023年8月から販売パートナー向けに、「Oracle NetSuiteアフィリエイトプログラム」を提供している。

 「アフィリエイトプログラムは、携帯電話販売などでは行われているが、ソフトウェア卸事業では初めての試みとなる。初期費用やノルマ無くビジネスをスタートできるので、さまざまなお客さまにNetSuiteをアピールしていきたい」(SB C&S ICT事業本部 クラウド・ソフトウェア推進本部 本部長・菅野信義氏)。

SB C&S株式会社 ICT事業本部 クラウド・ソフトウェア推進本部 本部長の菅野信義氏