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シスコが中堅・中小企業向け戦略を説明、2万円台からのCatalystスイッチなど中小向けポートフォリオも拡充へ

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は28日、中堅中小企業向けビジネス戦略について説明。これまで打ち出してきた「パートナーとの連携」、「オンライン体験の拡充」、「市場への新たなルート」の3つの基本方針を踏襲する一方で、中堅中小企業向けの商品ポートフォリオの拡充に力を注ぐ考えを明らかにした。

2024年度中堅・中小企業向け重点戦略

 シスコ 執行役員 SMB・デジタル事業統括の石黒圭祐氏は、「2024年度は、中堅中小企業のニーズに合った商品提供や商品拡充に取り組む。中堅中小企業が、簡単に購入し、簡単に設置し、簡単に運用できるネットワーク製品を提供する。中堅中小企業のニーズに最適化した商品としてパッケージ化し、ブランディングしていく。マネージドサービスには引き続き注力する一方で、ネットワークの視点でセキュリティを強化していく考えを中堅中小企業にも取り入れることになる。今後も中堅中小企業のニーズにあった商品提供と、パートナー戦略を推進していく」と語った。

シスコシステムズ 執行役員 SMB・デジタル事業統括の石黒圭祐氏

 ひとつめは、Cisco Catalystシリーズにおける中堅中小企業向けモデルの発売である。

 大手企業や公共分野向けに発売していたネットワークスイッチのCisco Catalyst 9000シリーズの基本機能やサポート体制を維持しながら、中堅中小企業向けに最適な性能を持った商品として、Cisco Catalyst1300シリーズおよびCisco Catalyst 1200シリーズを新たに発売する。ラインアップは35機種と幅広く、2万円台からの価格設定としている。

Cisco Catalyst 中小企業向けモデル発売

 Cisco Catalyst 1200シリーズでは、8~48ポートのギガビットイーサネット接続、GbEまたは10GbEアップリンク、PoEを提供。追加のファイバー接続により、高いアップリンク帯域幅を実現し、PoEの電力バジェットを増やすことでオプションを拡張できる。

 Cisco Catalyst 1300シリーズは、ギガビットやマルチギガビット、10Gポートにより、強固なネットワーク基盤を提供できる。直感的なダッシュボードにより、スイッチの導入やモニタリング、ライフサイクル管理を自動化。最大4台のスイッチをスタックして単一のデバイスとして機能させることもでき、管理と制御を統合可能だ。

 いずれの製品も、特別なスキルを必要とせずにDIYの感覚で設定・管理が可能であり、スマートフォンを利用しながら、アプリ経由で運用や管理を行える点も特徴である。

Cisco Catalystをスマホで購入~設定・管理まで完結
Cisco Catalyst 1200シリーズ/1300シリーズ

 2つめは、中堅中小企業におけるサイバーセキュリティ対策の支援だ。

 中堅中小企業におけるクラウドアプリケーションの広がり、リモートワークの浸透などが進む一方で、オフィスなどの現場では、ファイアウォールによる対策だけにとどまっていたり、VPN接続によってユーザーエクスペリエンスが低下していたり、UTMのアップデートが行われていなかったり、セキュリティポリシーの一貫性が欠如をしているといった課題が発生している。

中堅中小サイバーセキュリティの課題

 「ハイブリッドワークのために、どこからでも安全で快適なアクセスができ、簡単に最新のセキュリティ環境を実現したいという中堅中小企業が多いものの、実態はパッチワーク型のセキュリティ対策に陥っており、対策そのものが、すでに限界に達している」と指摘する。

パッチワークでの防御は限界

 シスコが2023年9月から新たに提供するCisco+ Secure Connectは、クラウドアクセスとリモートワークに対応した最新のクラウドセキュリティを、シスコ1社で提供。中堅中小企業のための単一ベンダーによるSASEソリューションになると位置づける。

 Merakiを中心としたネットワークセキュリティと、新たなクラウドセキュリティを統合し、単一の管理ポータルから、高度なセキュリティとあらゆる接続性をシームレスに実現するのが特徴であり、すべての通信がCisco+ Secure Connectを通過することで、安全で、快適なネットワーク環境が可能になるという。

 「シスコは、ネットワークを起点としたセキュリティを提供しており、ポイントソリューションを削減して、ネットワーク全体を守るという考え方を用いている。大手企業向けに展開していたセキュリティソリューションを、中堅中小企業向けに安く売るのではなく、中堅中小企業に最適化したクラウドパッケージとして提供することになる」と述べた。

ネットワークのその先にCisco+ Secure Connect

 中堅中小企業向けキャンペーンとして、Meraki 無線アクセスポイントとMeraki UTM、セキュリティライセンスをバンドルした特別価格での提供や、Cisco+ Secure Connect対応のMeraki UTMと、セキュリティライセンスをセットにした商品も特別価格で提供するという。

 なおシスコでは、毎日5500億件のインシデントを、500人の脅威アナリストとAIによって研究、解析を行う脅威インテリジェンス「Talos」を用意。これを活用したサービスを、中堅中小企業にも提供できるという。

あらゆる脅威に対処する脅威インテリジェンス「Talos」

 一方、国内におけるこれまでの中堅中小企業向けビジネスを振り返った。

 セキュリティ関連ソフトウェアビジネスが前年比20%以上の成長を遂げているほか、ハイブリッドワークを推進するWebex Callingが60%以上の成長を遂げるなど、SaaSビジネスが加速していることに言及。また、マネージドサービスについても、マネージドSD-WANビジネスが2年連続で50%以上の成長となり、日本発の中堅中小企業向けマネージドサービスモデルがアジア太平洋地域にも展開を開始するという新たな成果もあがっているという。

 さらに、eコマースビジネスを強化し、Amazonだけの取り扱いから、ビックカメラやソフマップ、コジマの法人部門、カウネット、モノタロウにも販路を拡大し、取扱商品を70製品から、124製品に広げているとのこと。

 「この半年間で半導体不足が緩和し、ハードウェア供給が改善しており、これが中小企業向けビジネスの拡大につながっている。想定していた以上に販売ルートの拡大や販売台数の増加、販売機会のポテンシャルが大きいと考えている。セキュアなネットワークの実現と、持続可能なハイブリッドワークの実現を2軸として、中堅中小企業ビジネスを推進していくことになる」と総括した。

中堅・中小企業向けビジネスハイライト

 なお会見では、サイバーセキュリティ分野のエキスパートである立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授が、中堅中小企業におけるサイバー攻撃の脅威について解説した。

 IPAが発表している情報セキュリティ10大脅威では、「ランサムウェアによる被害」、「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」、「標的型攻撃による機密情報の窃取」が、毎年上位に入っていることを指摘しながら、「ランサムウェアの攻撃は、中小企業も例外ではなく狙われているという現実がある。だが、中小企業の経営者は、セキュリティにまで投資がまわらない、セキュリティを強化すると効率が落ちる、担当者もセキュリティ対策のやり方がわからないという声があがっているのが実態だ。また、SIerも顧客にセキュリティの予算を取ってもらえないことや、最終的な責任はユーザー側にあると考え、運用面が手つかずになっている場合もある」とする。

 だが、ここにきて状況が少し変化してきているという。

 ランサムウェアの被害にあった徳島県つるぎ町立半田病院の報告書では、VPN設置業者の善管注意義務があったと指摘。また、別の事例では、ネットワークカメラとともに設置された1500台のモバイルルーターが攻撃にあうという事件が発生。ルーターが売り切りになっている商流に原因があるとの見方が出始めているという。その一方で、政府が打ち出したサイバーセキュリティ経営ガイドラインにより、中小企業の経営層に対しても、セキュリティ管理への関与が求められ、これが意識変化につながっていることも指摘する。

 「中小企業のセキュリティ対策は極端に低いといえる。ITガバナンスにおいても、それに取り組む能力には限界がある。いまやるべきことはバックアップを正しく取得したり、OSやミドルウェア、アプリケーションを正しくアップデートしたりすることだが、VPN装置の脆弱性を修正し、認証方法を確認することも大切である。VPNは、境界線防御モデルに穴を開けるものであり、これまでの前提を崩すことになる。事故前提でセキュリティをとらえるならば、管理や監視にも投資をすることが必要である。例えば、中小企業に対しても、VPN装置のサポートの重要性をしっかりと伝え、必要に応じて契約を結ぶことが大切だ。IPA認定サービスとして提供されている『サイバーセキュリティお助け隊』を利用することもいいだろう。シスコの新たな商品もこうした流れと方向性が一致している」などと述べた。

立命館大学情報理工学部教授の上原哲太郎氏