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ギットハブ、生成AIによるコーディング支援機能「GitHub Copilot」の意義を説明

ユーザーとしてパナソニックコネクトの榊原彰CTOも登壇

 米GitHubの日本法人であるギットハブ・ジャパン合同会社(ギットハブ)は30日、生成AIによるコーディング支援機能「GitHub Copilot」に関する記者説明会を開催した。

 説明会には、パナソニックコネクト株式会社の榊原彰氏(執行役員 常務 CTO、技術研究開発本部長、知財担当)が登場。同社のソフトウェア開発体制のトランスフォーメーションと、その中でのGitHubおよびGitHub Copilot for Businessの利用について語った。

GitHub Copilotのデモ。コメントに書かれたデータベース構造から、Ruby on Railsのデータベース定義コードを生成する

「開発者不足の問題の答えが生成AI」

 まずギットハブ・ジャパンのリージョナルディレクターの山銅章太氏が、GitHub Copilotとその意義について解説した。

ギットハブ・ジャパン リージョナルディレクター 山銅章太氏

 現在では、「ソフトウェアが世界を飲み込む」とよく言われるように、人間が起きてから寝るまでさまざまなアプリにアクセスする状態にあり、世界がソフトウェアに埋め尽されている、と山銅氏。

 それにともない、開発者の仕事が膨大になり、特に日本で開発者不足が問題になっていることを山銅氏は指摘し、「この問題の答えが生成AI。生産性に変革をもたらしてイノベーションを加速させる絶好の機会になる」と述べた。

 GitHub Copilotはすでに、世界で150万人以上に利用され、30億行を超えるコードを生成しているという。ユーザー調査によると、コーディングが55%高速化し、Copilotの提案したコードの46%が開発者に採用され、75%のユーザーが満足と答えているとした。

 日本でも、デジタルネイティブの会社だけでなく、製造業や小売、組み込み、自動車産業など、幅広い業界で利用されているという。例えば特に製造業では、わかっている人も少なくなったレガシーコードについて、GitHub Copilotに内容を説明させたり別の言語に変換させたりすることで、メンテナンスやブラッシュアップをするニーズがあると山銅氏は語った。

「開発者不足の問題の答えが生成AI」
GitHub Copilotに関するユーザー調査の結果

 GitHub Copilotについては、3月に「Copilot X」が発表された。これは製品名ではなく取り組みの名前だと山銅氏。「ソフトウェア開発におけるすべてのステップにおいてAIを活用できるようにすることで、開発者の生産性を根本的に再定義するもの」(山銅氏)だという。

 Copilot Xの中では、さまざまな機能が予定されている。「それらをいち早く市場に投入するのが、いまのGitHubの重要なミッション。Copilot Xにより開発者の生産性を10倍に高めることができると考えている」と山銅氏は語った。

Copilot X
Copilot Xによって開発者の生産性を10倍に

パナソニックコネクトのソフトウェア開発のトランスフォーメーションとGitHub導入を紹介

 パナソニックコネクトの榊原氏は、同社のソフトウェア開発体制のトランスフォーメーションについて紹介した。

パナソニックコネクト株式会社 榊原彰氏(執行役員 常務 CTO、技術研究開発本部長、知財担当)

ソフトウェア開発の考え方と環境を変革

 パナソニックコネクトは2022年4月のホールディング制移行にともない発足した、B2Bソリューションの会社で、ハードウェアおよびソフトウェアの両方の事業を行っている。

 「パナソニックのソフトウェア開発には、いろいろ古いやりかたがあった」と榊原氏。古いルールがガチガチで固定化され、ソフトウェアの生産性がまったく上がらない状態が続いていたという。「私は長くITの会社にいて、そこからパナソニックにジョインしたので、なんとか刷新したいと思っていた」と氏は語る。なお榊原氏はかつて日本マイクロソフトのCTOなども務めていた。

 氏によると、R&D部門も古いやりかただったため、まずはR&D部門からトランスフォーメーションに取り組んだ。特に、社内でも共有しない文化だったのを、研究状況やソースコードなどを共有し可視化するように文化を変えたという。

 また、「アジャイルはソフトウェア開発手法だとパナソニックは思っていた。アジャイルはビジネスサイクルを回す手法であり、その中の一つでソフトウェア開発がある」と榊原氏。アジャイルを採用するためには、各段階を自動化する必要がある。その新しいワークフローの一角としてGitHubを採用し、コード共有やレビュー、GitHub Actionsによるテスト自動化などで利用していると説明した。

 このような開発環境整備は、R&D部門についてはひととおり終わり、次は全社導入をはかるという。なお、8月25日の段階で、GitHubの利用状況は、1100リポジトリと539ユーザーだという。

まずはR&D部門から開発体制をトランスフォーメーション
GitHubを含む新しいワークフロー
開発環境整備の計画
8月25日段階のGitHub利用状況

GitHub Copilot for Businessを試験導入、ほとんどが生産性が向上したと回答

 こうした中で、7月10日から30日の間、GitHub Copilot for Businessを試験導入した。コーディング能力の高そうな50名が対象。実施にあたっては、ハンズオンワークショップを行ったほか、事前に知財部門・AI倫理規定委員会と相談のうえでガイドラインも作った。

 榊原氏は、参加した50名のうち24名が回答したアンケート結果を紹介した。言語はPythonが多く、エディタはVSCodeが多い。より生産的になったかどうかについては、ほとんどの人が「そう思う」または「とてもそう思う」と答えている。

 アンケートのコメントとしては、リーダブルなコードを提案してくれるという声や、サジェスト機能が便利、特にテストコードの生成で助かるという人が多く見られたという。

 また、いままでは知らないアルゴリズムについて調べていた時間が、コードがサジェストされることで効率向上したという声もあったという。継続する費用については、効率向上の効果に対して十分安いという意見が集まったと榊原氏は紹介した。

 この試験導入を受けて、Copilotについて「本格導入しようとは思っている」と榊原氏は語った。ただし、どのぐらいのライセンス数で、どの部署から入れるかなどについては、いま計画している段階だという。できれば全社に入れたいが、まずは、R&D部門や事業部横断のクラウドエンジニアリングセンターから考えているとのことだった。

GitHub Copilot for Businessの試験導入
試験導入に参加した中の24人へのアンケート結果