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日立、水害リスク情報の作成、対策の検討に利用可能な「流域治水 浸水被害予測システム」を青森県に納入

 株式会社日立製作所(以下、日立)は25日、青森県向けに「流域治水 浸水被害予測システム」を納入したと発表した。同システムは4月から、青森県における本格運用が開始されているという。

 昨今の日本では、気候変動などの影響から水害が激甚化・頻発化する傾向にあり、2021年11月には、インフラ整備の加速化・充実、治水計画の見直し、流域全体を俯瞰(ふかん)した水害対策などの治水対策強化を目的に、「流域治水関連法」が全面施行された。このため自治体には、ハード面だけでなく、データなどを活用するソフト面(中小河川にまで拡大した水害に関するハザードマップの作成など)でも対策強化が求められているという。

 そうした中で、青森県でも「流域治水プロジェクト」に取り組んできたが、2022年8月の大雨により、中村川流域で甚大な浸水被害が発生したことを受け、今後10年間における流域治水の緊急対策を策定。特に中村川では、外水(河川を流れる水)のみならず、内水(下水道や水路などを流れる水)による被害も顕著であったことから、水害リスク情報の充実化が求められていたとのこと。

 今回日立では、こうした青森県の取り組みを加速するため、山形県東根市との共同研究の成果を活用し、青森県向けに「流域治水 浸水被害予測システム」を構築することになった。

 このシステムでは、国土地理院の地図データに加えて、都道府県の保有する河川データやLPデータ(航空レーザー測量で得られた三次元地形データ)を取り込み、高精度かつ高速に浸水のシミュレーションを行える点が特長。任意の降雨や堤防決壊の条件を設定し、河川氾濫と内水氾濫を同時にシミュレーションできるほか、一級河川の水位が上がることで、これに合流する二級河川の水位が上がり発生する氾濫(バックウォーター現象)のシミュレーションにも対応する。さらにシミュレーションでは、遊水地・田んぼダムの治水対策効果の検証、排水機場のシミュレーションによる樋門開閉のタイミング検討なども可能にした。

 このほか、シミュレーション結果を活用した避難・緊急活動支援など、機能の拡張性も備えており、国や自治体におけるハード/ソフト両面の流域治水対策に有効とのことだ。

 青森県では今後、国や市町村と連携して取り組む県内の流域治水プロジェクトで同システムを活用し、より効果的な対策につなげていく予定。具体的には、より高精度な水害リスクマップ(浸水頻度図)、および内水ハザードマップを新たに作成することで、内水、外水の両方に対応した水害リスク情報の整備を図るとしている。また日立は、流域治水対策に取り組む自治体に対して同システムを広く展開し、大規模水害による被害軽減に貢献するとした。

2022年8月大雨時のデータを基にした「流域治水 浸水被害予測システム」による中村川の浸水シミュレーション