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NTT、コンクリート構造物の撮影画像から自動で劣化の検出と大きさの計測を行える新技術を開発

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は、コンクリート構造物の撮影画像から構造物に発生した劣化を検出し、その大きさを自動的に計測できる技術を確立したと発表した。実設備における検証の結果、誤差110%未満の精度で劣化の大きさを計測できることを確認したという。

 NTTが今回開発したのは、市販のデジタルカメラで撮影したコンクリート構造物の画像から、劣化の検出と計測を自動的にできる劣化計測技術である。

 画像から劣化の実際のサイズ(実サイズ)を計測するためには、劣化の場所(画素領域)の検出と、画像中の大きさを実サイズへ換算するための尺度(画像スケール)が必要となるが、前者については、コンクリート構造物に発生する各種劣化(ひび割れ・?離・露筋・漏水)の画素領域を検出することで、画像における劣化の大きさを把握する。

 一方の後者では、コンクリートの表面情報を用いて画像スケールを算出するスケール推定技術を利用している。例えば図1では、劣化検出技術が検出した画像中の露筋の長さは100画素、スケール推定技術が推定した画像スケールは10画素/cm(撮影画像の10画素が実サイズの1cm相当)であり、こうした結果から、露筋の実サイズを10cmとして計測した。

(図1)劣化計測技術の構造

 なお、コンクリート表面は骨材や空隙(くうげき)等により凹凸形状になっており、この凹凸の画像中における大きさを解析することで、画像スケールを推定できるが、実際のコンクリート構造物(図2)では壁面に汚れが付着し、コンクリート表面情報が画像から失われている。これにより、劣化の正確な計測が難しくなってしまう課題があったが、スケール推定技術では、独自アルゴリズムによってコンクリート表面情報を解析し、一様に汚れが付着した構造物の画像からでも、高精度に画像スケールを推定できるとのこと。

 実際に、市販のデジタルカメラを用いて通信用トンネルで3000枚の画像を撮影し、スケール推定技術を用いた画像スケールの推定を行うとともに、既往技術による推定値と比較したところ、スケール推定技術を用いた場合、誤差85.7%の精度で推定でき、既往技術の精度に対して約4割向上したことを確認できたという。また、バラツキは5.8%と、既往技術のバラツキに対して約4割抑制できることも確認された。

(図2)通信用トンネルのコンクリート壁面

 あわせて、通信用トンネルに発生した30本の露筋を対象に、劣化計測技術の性能検証を行い、劣化計測技術による露筋の計測値と、既往技術を用いた計測値を、現地でメジャー計測した実寸長と比較した。

 それによると、新技術により自動計測した露筋の実寸長さの平均の誤差は9.4%、最大の誤差は17.8%で、既往技術で発生した最大の誤差52.7%の露筋を、新技術では誤差17.1%(約7割抑制)で計測できたとした。

 NTTでは、これらの技術により、市販のデジタルカメラで構造物の画像を撮影すれば劣化の大きさを自動計測でき、計測値は劣化の規模を把握可能な精度であると説明。現行のメジャーや専用車両を用いた計測作業を行わなくても、実運用の補修要否や優先度の判断に活用可能になるため、点検稼働・コストの削減が期待できるとしている。