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NTTドコモとNEC、AWSを活用したハイブリッドクラウド構成の5GCの冗長設計とエッジ向け5Gユーザー通信装置の基本動作に成功

 株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)と日本電気株式会社(以下、NEC)は22日、Amazon Web Services(AWS)上の5Gコアネットワーク(以下、5GC)と、ドコモの自社仮想化基盤上の5GCを接続したハイブリッドクラウド構成におけるキャリアグレードの基本冗長設計を、世界で初めて完了したと発表した。

 同設計を活用することで、5GCを自社仮想化基盤とパブリッククラウドの双方に柔軟に配備し、故障時に切り替え可能となるため、ネットワーク安定性のさらなる向上が期待できるとしている。

 加えて、NECが開発したソフトウェアベースのエッジコンピューティング用途の5Gのユーザー通信を扱う装置(以下、エッジ向けUPF)の基本的な機能を、高性能かつ低消費電力なプロセッサーであるAWS Graviton3(以下、Graviton3)を活用した環境において、問題なく動作させることに成功した。この成功により、AWS上でもユーザー通信が利用可能であることを確認した。

 Graviton3を活用した環境において、エッジ向けUPFの動作確認に成功したのは世界で初めてで、将来的には、IoT用途の顧客に対してGravitonを活用した5GCおよびエッジ向けUPFを合わせて提供することで、環境負荷が小さいネットワークの実現が可能となることに加え、構築期間の短縮化によるサービス提供までのリードタイム短縮が期待できるとしている。

 ドコモとNECは、AWSを活用してハイブリッドクラウド環境上で動作する5Gネットワーク装置の技術検証を2022年3月から実施しており、2022年9月にはGraviton2上の5GCの消費電力の7割削減と、Graviton2上の5GCおよびドコモの自社仮想化基盤上の5GCを接続したハイブリッドクラウド環境上での基本動作に成功している。

 両社はさらに、Graviton2上の5GCと、ドコモの自社仮想化基盤上の5GCを接続したハイブリッドクラウド環境の技術検討を進めてきた。ドコモの商用ネットワークでは、顧客に絶え間なくサービスを提供するため、装置故障時に予備のネットワーク装置への切り替えを可能とする設計をしており、AWS上の5GCとドコモの自社仮想化基盤上の5GCを接続したハイブリッドクラウド構成でも、同様に予備のネットワーク装置への切り替えを可能とする設計に取り組んできた。自社仮想化基盤を含むドコモの商用ネットワークへの接続や切り替え方式に関して課題があったが、両社は新しいAWS上の機能を活用しつつ解決することで、基本的な設計を完了した。

 加えて、実証の一環として、最新のGravitonファミリーであるGraviton3上でのエッジ向けUPFの基本的な動作確認と、スループット性能の測定を実施した。AWS上のGraviton3プロセッサーで、NECのUPFソフトウェアを動作させ、商用を模擬したユーザーパケットを処理させることで、スループット性能を定量化した。具体的には、AWS Graviton3プロセッサーベースのEC2インスタンスと、第6世代x86ベースのAmazon EC2インスタンス上に実験用のUPFを用意し、5GCに商用運用の平均と同じサイズのユーザーパケットをUPFに対して徐々に増やしながら送信し、スループット性能の上限を測定した。その結果、Graviton3環境のUPFのスループット性能が、x86環境UPFのスループット性能に対して、約2割向上したことを確認したという。

 2022年9月に先行して検証を完了していた5GCの確認結果と今回の成果から、AWS上には5GCとエッジ向けUPFまで配置可能で、それらと自社仮想化基盤上の5GC、自社装置の大容量なUPFという組み合わせでハイブリッドクラウド構成が可能になるとしている。

 ドコモとNECは、今後もAWS上での一連の検証結果をもとに、ハイブリッドクラウド構成の5GCの各種課題の解決に取り組み、高可用かつ柔軟なネットワークの実現に向けた技術検討を推進していくと説明。また、両社は、これまでの検証結果と本設計により、性能を向上しつつ消費電力を削減したネットワークの実現に向けた課題解決に取り組み、環境に配慮し持続可能な社会にふさわしい5G時代に求められるネットワークの提供に向けた技術検討を推進していくとしている。