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経産省とIPA、DXを推進する人材の役割とスキルを定義した「DX推進スキル標準」を公開

 経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は21日、企業・組織のDX推進を人材のスキル面から支援するため、個人の学習や企業の人材育成・確保の指針となる「デジタルスキル標準(DSS)」を策定し、公開した。

 経済産業省は、2022年3月に、ビジネスパーソン一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになることを目指し、「DXリテラシー標準(DSS-L)」を公開した。

 さらに、政府のデジタル田園都市国家構想基本方針では、「DXリテラシー標準」に加え、より専門的な知識や能力が必要とされる、DXを推進する立場の人材向けのスキル標準を策定することが明示されたことを受け、IPAは経済産業省とともに、6月に有識者WGを設置し、専門家による検討・議論を重ね、DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルを定義した「DX推進スキル標準(DSS-P)」を新たに策定した。

 これら2つを、経済産業省が主催する「デジタル時代の人材政策に関する検討会」において、「デジタルスキル標準」として取りまとめた。全てのビジネスパーソンに向けた学びの指針や、それに応じた学習項目例を定義した「DXリテラシー標準」と、専門性を持ってDXの取り組みを推進する人材向けの「DX推進スキル標準」を合わせて提供することで、DXに必要となるスキルを総合的に参照できるとしている。

 「DX推進スキル標準」は、DXを推進する人材について、5つの人材類型および15のロール(役割)と、それらの人材に必要となる49個のスキル項目で構成される。

「DX推進スキル標準」の全体図

 DX推進の中心的役割を果たす人材類型を、ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティの5つに定義。これらの人材は、他の類型とのつながりを積極的に構築した上で、他類型の巻き込みや他類型への手助けを行うことが重要となり、社内外を問わず、適切な人材を積極的に探索することも重要になるとしている。

 さらに、5つの人材類型それぞれに対し、業務やスキルをもとに「ロール」を定義・区分している。例えばソフトウェアエンジニアは、「フロントエンドエンジニア」「バックエンドエンジニア」「クラウドエンジニア/SRE」「フィジカルコンピューティングエンジニア」の4つのロールに分かれており、業務の違いによって詳細に区分することで、企業・組織は自社に必要となる人材を明確に把握できる。

5つの人材類型

 区分した15のロールごとに、DXの推進において担う責任、主な業務、そして必要なスキルとして、「共通スキルリスト」で策定した49項目に対する重要度を4段階で示している。例えば、「デザイナー」の「UX/UIデザイナー」ロールでは、「顧客・ユーザー理解」や「価値発見・定義」というスキルで高い実践力と専門性が必要とされる一方、「機械学習・深層学習」や「セキュリティマネジメント」については、位置付けや関連性の理解ができていればよいことが分かる。

 これにより、組織・企業にとっては、自社のDXに必要なスキルがより明確となり、組織の人材育成、採用やリスキリングの促進に役立てられると説明。さらに、個人が学習する際には、組織から求められるスキルを認識するための指針になるとしている。

UX/UIデザイナーのロールと求められるスキル

 また、DXを推進する全人材類型に共通するスキル項目を、「共通スキルリスト」として一覧化している。このリストは、スキルを「ビジネス変革」「データ活用」「テクノロジー」「セキュリティ」「パーソナルスキル」の5カテゴリーに整理し、計49のスキル項目を定義した上で、そのスキルを身につけるための学習項目例を提示している。一覧化することで、DXに必要なスキルの全体像を俯瞰(ふかん)して把握でき、スキルを共通にすることで、他類型の人材との連携がしやすくなるとしている。

共通スキルリストの全体図

 経済産業省とIPAは今後、デジタルスキルに関するポータルサイト「マナビDX」上で、研修事業者が提供する学習コンテンツと「DX推進スキル標準」をひも付けて可視化していく予定。これにより、利用者は自身が目指すロールに必要な知識やスキルが効果的に学べるコンテンツを選択、学習しやすくなり、より実践的な学びの場を創出することで、リスキリングが促進されることを期待するとしている。