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NRI、量子コンピューターによるデータセンターの電力消費量削減に向けた実証実験を実施

 株式会社野村総合研究所(以下、NRI)は6日、NRIが運用する東京第一データセンターの設備運転計画を、量子コンピューティング技術により最適化するための実証実験を2022年4月から9月にかけて実施したと発表した。センターにおける電力消費量の削減効果が見込める運転計画を立案できることが机上で確認でき、技術の具体的な適用例として示せたとしている。

 NRIでは、昨今、脱炭素化の動きや電力価格の高騰に伴って、電力消費量の削減が注目を集めていると説明。NRIの事業における電力消費量の約8割を占めるデータセンターにおいても、電力効率が高い設備運転計画が求められているという。

 実証実験では、データセンターの空調などで使用する熱源設備に関して、電力効率の観点から最適な運転計画を量子コンピューターによって立案する試みを机上で実施した。この取り組みを通して、技術が社会課題に適用できること、適用するにあたっての要点を整理したとしている。実証実験は、量子コンピューターの応用研究を進めている東北大学の大関研究室と共同で進めている。

 実証実験ではまず、ビジネス上の課題を数式化する数理計画的なアプローチによって、データセンターの熱源設備において電力消費量に影響を与えるデータを分析し、数理モデルを構築した。次に、作成した数理モデルを用いて、アニーリング方式の量子コンピューターであるD-Wave Advantageで、電力消費量が最小となる熱源設備の運転計画を算出した。

 データセンターで稼働する機器は年々増加しているという背景から、この演算においては今後データセンターで必要となる冷却熱量が現在よりも30%増加した場合を前提条件とした。量子コンピューターで演算を行うにあたっては、Fixstars Amplifyが提供するFixstars Amplify SDKを活用した。

 演算結果に基づく運転計画に従って熱源設備を運用した場合、外気温が20度前後となる春秋の季節に限ると、電力消費量が最大で約10%削減できることを机上で試算した。これに加えて、実証実験を通じて、専門性の高い量子コンピューティング技術を、ビジネス上の具体的な課題に対して適用する際の要点を整理した。

算出した熱源設備内における冷凍機の運転計画イメージ

 実証実験で最適化に用いた数理モデルは、NRIのデータセンターに特化したものではなく、一般的な建築物の熱源設備に対しても汎用的に適用できるとして、NRIでは脱炭素化や電力価格高騰を背景としたさまざまな熱源設備運転計画の最適化の取り組みについて、支援が可能としている。

 さらに、量子コンピューティング技術を用いた演算の実装力や数理モデルを構築するプロセスは、熱源設備にとどまらず、多くのビジネスにおいて業務の効率化を検討する際に応用できるとして、それらビジネスの効率化に向けた取り組みに関しても、NRIでは支援サービスを幅広く提供するとしている。