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信金中金、地域企業のDX支援推進のためNTT東日本・西日本と提携

 8月30日、信金中央金庫(信金中金)、東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)は、全国の中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を目指し業務提携すると発表した。

 全国254の信用金庫の中央金融機関である信金中金と、全国でデジタルサービスを提供するNTT東日本・NTT西日本の連携で、地域の中小企業の課題にきめ細かく対応しながら、全国の中小企業のDXを全面的にサポートする。

 信金中央金庫の理事長である柴田弘之氏は、「フェイストゥフェイスで地域のお客さまを支援する信金の強みを生かしながら、遅れている中小企業のDXを全力でサポートしていく」とアピールした。

信金中央金庫 理事長の柴田弘之氏

 信用金庫の全国ネットワークには、全国254の信用金庫、7129の店舗、役職員数十万人、会員数約900万人、貸出先124万が存在する。

 信金中金の理事長である柴田弘之氏は、今回の提携の背景を顧客である中小企業のDXが遅れていたことだと説明した。

 「信金中金をハブとして、広域で強固なネットワークを構築している。その一方、われわれのお客さまである中小企業は、大企業に比べDXへの取り組みが遅れていることが総務省の調査でも明らかになっている。要因はDXを担当する人材が社内にいない、経営者のDXに対する理解不足など、多くの中小企業では単独でDXに取り組むことは困難な状況であるとわかる。一方、2023年10月から始まる予定のインボイス制度に対応すること、また人手不足に伴う生産性向上といった課題に対応することも必須となっていることから、今回のNTT東日本、NTT西日本との提携を決定した」。

中小企業のDX推進に向けて

 今回の提携では、次の4つを実施する。

 1)中小企業の日常業務のデジタル化推進を支援する、しんきん法人ポータル「ケイエール」を提供し、普及・拡大を進める
 2)中小企業のDX実現に向け、NTT東日本・NTT西日本協力のもと、中小企業の経営課題をICTソリューションによって解決
 3)信用金庫のDX推進体制構築に向け、NTT東日本・NTT西日本がICTソリューションの提供、研修の実施など人材の育成、ICT環境の構築を支援し、信用金庫取引先のDXと信用金庫内のDX実現を支援していく
 4)それぞれのネットワークを活用し、地域活性化に向けた取り組みを実施する

 「これらの取り組みを通じ、全国の中小企業の皆さまのDXを全力でサポートしていきたい」(信金中金の柴田理事長)。

提携内容

 今回の仕組みの核となるポータルサイト「ケイエール」は、資金繰り管理、バックオフィス業務の効率化、デジタルサービス導入支援という3点を実現するためのポータルサイト。

 「新型コロナウイルスによって、信金の特徴であるフェイストゥフェイスでお客さまに寄り添うビジネスのあり方が、大きな変更を強いられることとなった。お客さまと直接お会いできないことで不安の声も多数寄せられた。こうした状況をかんがみ、信用金庫として新たな一歩を踏み出すこととした。非対面であっても信金がお客さまと寄り添っていくという姿勢は以前とは変わらない」(信金中央金庫 副理事長の須藤浩氏)。

信金中央金庫 副理事長の須藤浩氏

 具体的な機能としては、複数金融機関の口座残高や入出金記録を一元管理するなどの資金繰り把握機能、請求書の作成から入金管理までをワンストップで行う電子請求書対応機能、紙で保存してきた書類を電子化し、オンラインで管理する電子ファイル共有・保存機能、勤怠管理や経費精算などバックオフィス機能、経営上の課題を信金側に相談できる課題解決サービス、グループチャットや掲示板などコミュニケーション・情報発信、大口入金や支払いが不足しそうな場合などにアラートする機能、の7つを備えている。

 「2022年10月から提供を開始し、サービス開始から5年後となる2027年3月末に25万社の利用を見込む」(須藤副理事長)。

「ケイエール」の普及・拡大を図る

 今回、提携を決定した理由について、NTT東日本の代表取締役社長 澁谷直樹氏は、「信金は地域密着型の金融機関で、地域の中小企業を支えてきた。今回の提携の前から2019年のキャッシュレス化、2021年のコミュニケーションアプリdirectの提供といった提携による実績を積み重ねてきた。しかし、柴田理事長のプレゼンテーションにもあった通り、中小企業はDXへの取り組みが遅れている。信金の経営支援能力と、私どものデジタル化を推進する力によって地域の活性化に取り組み、日本を元気にしていきたいと考えている」と提携の要因を説明した。

東日本電信電話株式会社 代表取締役社長の澁谷直樹氏

 具体的には中小企業のDXへの取り組みを支援するために、次世代ネットワークやクラウド活用などによるネットワーク高度化・効率化、信金自身の業務DXを実践するためのペーパーレス化や規定・マニュアルの電子化、コンタクトセンターの高度化や非対面接点などデジタル顧客接点の確立などを進める。

信用金庫のDX推進態勢構築に向けたサポート

 「こうした取り組みを実践するためには、デジタル人財の育成も欠かせない要素となる。そうした支援も行っていきたい。さらに、将来計画としてさらなるキャッシュレス化の実現、地元の大学や商店との連携といった未来型の街づくりにつながるような支援を行っていきたい」(NTT東日本の澁谷社長)。

 3者では、今回の取り組みを進めてデジタル化を推進するとともに、信用金庫の強みであるフェイストゥフェイスで顧客を支援していく、新しいスタイル確立を目指す考えだ。

信金中金の柴田弘之理事長(左)と、NTT東日本の澁谷直樹社長