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従業員体験を向上させるプラットフォーム「Microsoft Viva」とは何か――、日本マイクロソフトが解説

 日本マイクロソフト株式会社は30日、2021年11月から提供を開始している従業員エクスペリエンスプラットフォーム(EXP)「Microsoft Viva」について説明した。

 Microsoft Vivaの全体像や狙いのほか、2022年8月から順次提供を開始しているMicrosoft Viva Goals、Microsoft Viva Engage、Microsoft Viva Salesについても触れている。

新たな時代の働き方を支援する“従業員エクスペリエンスプラットフォーム”

 Microsoft Vivaは、新たな時代の働き方を支援するEXPに位置づけられており、Microsoft 365や、Microsoft Teamsを通じた体験を提供。従来のWorkplace AnalyticsやMyAnalyticsなどの機能を活用するとともに、コミュニケーション、ナレッジ、学習、リソース、インサイトなどを、Microsoft 365にシームレスに統合する製品群である。「意欲のある従業員と優れたリーダーが活躍できる企業文化を醸成するデジタルプラットフォーム」とする。

 Vivaモジュールとして、EXPへのゲートウェイとなり、キュレーションとしての役割を果たす「Viva Connections」、データに基づき、個人的な分析情報などを活用して生産性向上とウェルビーイングの向上を実現する「Viva Insights」、AIにより組織内のトピックスを自動的に抽出するなど、利用者に知識を提供する「Viva Topics」、組織が提供する学習機会を簡単に見つけ、学習することができる「Viva Learning」の提供を行っており、8月1日からはViva Goalsの一般提供を開始した。

 また、8月24日からはViva Engageの一般提供を開始するとともに、Viva Engageの新機能となるStorylineを、9月からパブリックプレビュー版として提供する予定だ。さらにViva Salesは、8月1日からパブリックプレビュー版が提供され、10月から一般提供を開始する予定となっている。

Microsoft Vivaの各モジュール
Microsoft Vivaの新モジュールの提供スケジュール

 日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部長の山崎善寛氏は、「企業においては、従業員が、あらゆるビジネスの原動力になっている。従業員のエンゲージメントの高さが企業のパフォーマンスにダイレクトに影響したり、個人に対する継続的な投資が従業員の満足度に直結したり、といったことが明確になっている。最近の調査では、エンゲージメントの高い従業員はそうでない従業員に比べて定着率が12倍も高いことや、エンゲージメントの高い組織は収益性が21%高いという結果が出ている。優秀な従業員を獲得する場合や、長期間勤務してもらうためにも従業員エンゲージメントは極めて重要になっている」とする。

日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部長の山崎善寛氏

 その上で、「日本マイクロソフトは、ITを活用してさまざまな企業理の従業員を支援してきた」とし、「Microsoft Vivaでは、効果的な仕事習慣の支援、ビジネスパフォーマンスの向上、組織全体への知識提供とエンゲージメント、従業員全員の学習、成長、成功を支援できる。調査によると、Microsoft Vivaを導入した企業は、約8カ月で投資を回収できたという結果が出ている。それに加えて、Microsoft Vivaにより、高い従業員エンゲージメントが企業のパフォーマンスを向上させ、組織と従業員がいい関係を保ちながら、企業活動を行える点が大きなポイントになっている」と述べた。

 新たな働き方の広がりや、働き方や雇用形態の価値観の変化、日本における人的資本投資に対する変化などを背景に、日本においても、Microsoft Vivaに対する関心が高まっているという。

 例えば渋谷区では、Microsoft Viva Insightsの導入により、OutlookやMicrosoft Teamsから得られる組織内の行動データをもとに、より詳細に職員の働き方を可視化する「渋谷区オフィスダッシュボード」を構築。最適な打ち手につなげることで、行政組織のパフォーマンスを最大化しているとのこと。

 また横浜トヨペットでは、3社の経営統合により、さまざまなバックグラウンドを持つ社員の働き方を可視化。働きがいと社内外の関係性濃度に着目した仮説を立てて、社内外コラボレーションの活性化と、エンゲージメントの向上が持つ関係性を可視化し、人事施策やマネジメントに生かしているとした。Teams電話の導入によって得られたデータと、サードパーティの名刺管理システムや1on1ツールなどで得られるデータを組み合わせて、Microsoft Viva Insightsでさまざまな計測を行っているという。

Microsoft Vivaの活用事例

日常業務のなかに目標を組み込むViva Goals

 新たに提供を開始したMicrosoft Viva Goalsは、OKR(Objectives and Key Results)の考え方に基づくモジュールで、ビジネスパフォーマンスの向上を目的に、目標の明確化と全体の連携を支援。組織や個人の目標ページや、チャートビューを活用して、組織の全階層の活動に成果を生むことができると説明する。

 日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部プロダクトマーケティングマネージャーの加藤友哉氏は、「最近の調査では、従業員の77%は雇用主が仕事における目的意識と意義を提供することが重要または非常に重要だと回答している。また、従業員の69%が勤務時間ではなく、成果に対して報酬を与えられることが適切だと回答している。従業員は、企業の目標やミッションとの強いつながりを感じ、貢献していくことや、自らが成長して、それによって企業に変化をもたらしたいと考えている。OKRによって、組織と従業員がともに目標を明確に把握し、ビジネス成果の目標に向けて足並みをそろえることが大切である」と指摘。

 「Viva Goalsによって、組織の戦略的な優先課題に沿って業務を進めることができ、貢献度も把握できる。日常業務のなかに目標を組み込み、進捗状況を組織全体が共有できる」とした。

 なお、Viva Goalsの価格は1ユーザーあたり月額650円となっている。

OKRを活用し、チームで共通のビジネス目標と管理手法を設定する
Viva Goalsの目的とアライメント
目標の明確化と全体のアライメント
Viva Goalsの画面イメージ

組織全体への知識提供とエンゲージメント強化を実現するViva Engage

 Microsoft Viva Engageは、2022年7月に開催されたパートナー向けイベント「Microsoft Inspire」で初めて公開したものだ。Yammerを基盤として開発しており、デジタルコミュニティや会話、自己表現ツール用のソーシャルアプリケーションとして、組織全体への知識提供とエンゲージメント強化を実現できるという。

 日本マイクロソフトの加藤氏は、「職場での人間関係や連帯感の希薄化などが課題となっている。経営陣の43%は、ハイブリッドワークやリモートワークの最大の課題が人間関係の構築だと回答している」とし、「Viva Engageは、組織全体への知識の提供、エンゲージメント強化を目的に開発されてものである。従業員の積極的な発言を喚起したり、組織の一員であることを実感できたりすることを目的に設計している。SNS感覚で利用できるため、従業員間のコミュニケーションを広げることができ、社内の文化形成を容易にする支援も行える。さらに、従業員とマネジメント層のつながりも強化できる。社員のよりどころになるツールである」とした。

日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部プロダクトマーケティングマネージャーの加藤友哉氏

 新機能として提供されるストーリーラインとストーリーを利用することで、関心事項に対するアイデアやフィードバックを、SNSを利用するような形で得ることができ、従業員同士の関係性強化にもつなげることができるという。

 なおViva Engageは、Microsoft Teams用Yammerコミュニティアプリから名称を変更したものであり、利用するにはYammerライセンスを所有しているいる必要がある。ただしYammerのブランドとサービスは、今後も独立した形で継続的に提供される。

ストーリーラインとストーリーで組織全体に向けて個人的な表現を発信

営業担当に特化したロール別VivaアプリであるViva Sales

 一方のMicrosoft Viva Salesは、Microsoft 365上に構築され、営業担当に特化した初のロール別Vivaアプリケーションに位置づけられるものだ。

 日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション本部プロダクトマーケティングマネージャーのサンタガタ麻美子氏は、「コロナ禍において、営業部門はハイブリッドワークや、デジタルセリングへと大きくシフトした結果、デジタルツールが増加し、業務が煩雑になったり、CRMへのデータ入力作業の負荷が増大したりといった課題が生まれている。また、インテリジェントなツールは案件を受注するのに重要なツールであると考えている営業担当者は74%に達するが、販売を促進するAI機能などが不十分という課題がある。さらに、営業部門では、仕事の多くの時間をオフィスで過ごすようになり、Office 365などの生産性システムを利用しているが、これが記録システムと連動していないため、二重のデータ入力作業を行うなど課題が生まれている。34%の時間を事務作業に費やしており、顧客提案に使えているのは32%にとどまっているという課題がある」と指摘。

 「Viva Salesでは、データを自動でCRMに取り込め、AIが営業と顧客とのつながりを支援できる。Office 365とTeamsという使い慣れたツールからデータを自動的に取得し、Dynamics 365だけでなく、任意のCRMシステムにそのまま登録可能だ。さらにデータをもとにしたAI分析によって、顧客の状況を理解し、次になにをしたらいいのかを推奨し、提案することもできる」という。

Microsoft Viva Salesとは
日本マイクロソフト ビジネスアプリケーション本部プロダクトマーケティングマネージャーのサンタガタ麻美子氏

 Outlookから顧客データをCRMへ自動入力することで営業担当者の業務を削減。Microsoft TeamsとCRMデータの連携によって、顧客に関する情報に詳しい別の社員がいることがわかれば、チャットで情報交換を行うといったように、スムーズな社内コラボレーションを実現する。

 またMicrosoft Teamsでの商談中には、CRMの情報を自分の画面に表示したり、会議内容を自動で書き起こしたり、サマリーを自動的にまとめたりする機能も活用できる。AIによって、次のアクションの推奨や、顧客の音声からの感情分析、コールに関するKPIの表示なども可能になる。そのほか、データ連携により、顧客リストをExcelで編集、加工することも可能とした。

 マイクロソフトでは、「Viva Salesは、Microsoft Dynamics 365 Salesと競合するものでなく、CRMを強化するものになる」と位置づけている。

CRMを強化するもの、と位置づけている

 現在提供しているパブリックプレビュー版は英語版だけであり、OutlookおよびTeams接続の一部機能や、会話インテリジェンス機能が利用できる。接続できるCRMは、Dynamics 365およびSalesforce CRMとなっている。

 2020年10月に予定しているViva Salesの一般提供では、フル機能が利用できるようになり、Dynamics 365 SalesのEnterpriseおよびPremiumのユーザーには無償で提供。スタンドアロンライセンスの価格は現時点では未定となっている。

 Viva Salesの国内パートナーとして、日本ビジネスシステムズ、シーイーシー、SBテクノロジー、EYストラテジー・アンド・コンサルティングが展開することになる。