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ABBYYジャパン、ノーコードAI-OCR基盤「Vantage」を発表 文書処理の自動化を支援

 ABBYYジャパン株式会社は21日、ローコード/ノーコードのAI-OCRプラットフォーム「Vantage」を発表した。すでに5月より提供を開始しているという。

 Vantageは、AI-OCR技術によって帳票からデータを自動的にデジタル化するソリューション。今年4月に日本法人の代表取締役社長に就任した前田まりこ氏は、「現在、ビジネスプロセスの80%はドキュメントが主体だが、企業はその処理の自動化に苦戦している。システムが古く複雑であることや、ニッチな製品ではフォーカスや機能が限定されること、従来の自動化ソリューションでは拡張できないことなどがその理由だ」と、現状の課題を指摘。その上で、「インテリジェントな文書処理はデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の鍵となる」として、Vantageがその処理の自動化を支援すると述べた。

「Vantage」について
ABBYYジャパン 代表取締役社長 前田まりこ氏

 Vantageでは、手書きや複雑な画像を含むすべての文書を処理し、ドラッグ&ドロップですぐに利用可能。データを保存するデータウェアハウス(DWH)では、文書処理データとほかの主要システムを同社のプロセスマイニングツール「TimeLine」経由で結合し、エンドツーエンドのビューを取得し、プロセスの実行を分析し、監視する。

Vantageの画面

 Vantageによるインテリジェントな文書処理は、同社のAIおよびML技術に基づいて構築された事前トレーニング済みの「スキル」というOCR機能によって実現する。スキルはローコード/ノーコードのため専門知識は不要。今回同時に発表したオープンマーケットプレイス「ABBYY Marketplace」には、定型フォーマットとしてさまざまなスキルがすでに用意されており、「まず文書を用意してアップロードし、マーケットプレイスからスキルを選んでダウンロード、それを文書に当てはめるだけで文書処理の自動化が実現する」と前田氏は説明する。

 スキルについて前田氏は、「データの高速処理が可能で、手動による作業を最小限に抑えてビジネスユーザーを支援する。正確なデータがビジネスアプリに直接配信されるうえ、常に学習して精度を高めている」と話す。

「スキル」の強み

 ABBYYジャパン シニア・プリセールス・エンジニアの近井英樹氏によると、スキルは200言語以上に対応。マーケットプレイスでは、業界、業種、ユースケースなどでカテゴライズされた、有償版、無償版、試用版のスキルが用意されているという。「学習サービス作成ツールによって、スキルのカスタマイズや新規作成も可能で、作成したスキルはマーケットプレイスで公開することもできる」と近井氏は述べている。

ABBYYジャパン シニア・プリセールス・エンジニア 近井英樹氏
用意されたスキルの一部

 なおマーケットプレイスでは、スキルのほか、プロセスフローや構築済みのコネクタなど、再利用可能なテクノロジーを多数用意し、自動化プロジェクトを支援する。

ABBYY Marketplace

 前田氏は、既存のABBYY AI-OCR製品の事例も複数紹介した。例えば伊藤忠商事では、各カンパニーが異なる分野でビジネスを展開しているため紙帳票での取引が多く、RPA単体での活用は難しかったほか、機密性の高い帳票をクラウドに保存するリスクも懸念していた。そこでABBYYのAI-OCR製品をRPAと組み合わせて導入、年間4万9000時間の作業時間の削減に成功したという。

 また花王では、請求書業務の削減と基幹システムへの入力業務の効率化、そしてガバナンス強化などを目的にAI-OCRを導入。その結果、請求書関連業務が75%削減できただけでなく、転記ミスや記載ミスといった人的ミスも大幅に減少。さらには部署連携が強化されたことで、誤請求や支払い遅延トラブルの防止につながり、ガバナンスの強化も実現した。

 これまでの実績から前田氏は、今後国内でターゲットとする業種について、「ドキュメント処理に課題を抱えている業種」とし、具体的には銀行・金融サービス、保険、物流・運輸、商社などを挙げた。

同社のターゲット