ニュース

トーマツ、AIにより財務データから不正を検知するモデルを開発

 有限責任監査法人トーマツは7日、過去の不適切な財務データをAIに学習させることで、会社、勘定科目単位で不正を検知する不正検知モデルを開発し、2022年1月から本格導入を開始すると発表した。

 トーマツが開発した不正検知モデルは、予測性能に優れる勾配ブースティング技術を採用し、2005年以降に公表された有価証券報告書および訂正報告書に含まれる財務諸表と為替レート、物価指数などの市況データをAIに学習させて、複数の財務指標から不正企業と正常企業との相違性を見いだし、その結果を不正企業との近似度として0~1の間でスコアリングする。

 どの指標がスコアに影響しているのか、会社別の各指標の時系列推移や、指標値の算定に使用した勘定科目の実数値を詳細に確認できるため、AIが算出したスコアがなぜ高いのかを説明できる。また、不正リスクが高いと評価された企業と類似した不正シナリオを持つ、過去の不正企業を参照できる仕組みも構築している。

 さらに、従前から活用してきた仕訳分析モデルや、異常検知モデルと組み合わせて、より広範な観点から不正の兆候を把握するリスク評価から、不正リスクの高い仕訳や取引に対して個別・詳細に分析を行い、リスク対応手続きの立案まで網羅的にAI・アナリティクスを活用するアプローチを確立した。

 この仕組みを活用することで、監査人は監査人は不正リスクの分析を効率的に行うとともに、従来は識別しえなかった不正パターンの識別が可能となる。不正検知モデルで検知された不正の兆候に基づいて、監査人が監査先企業との議論をより深化させることで、企業のガバナンス向上に貢献するとしている。

 トーマツでは、不正検知モデルを一部活用した監査に着手しており、既に10社超の上場会社の監査において、主に子会社のリスク評価手続きに活用。さらに、今後2年間で100社以上の、監査先のリスク評価手続きに活用することを目指す。

 また、不正検知モデルのさらなる性能向上に向けて、監査先の同意を得た場合には、当該監査先の財務情報をモデルの学習に用いることで、モデルの精度をさらに向上させることや、市況データのバリエーションを増やすことで、特に海外子会社に対するリスク評価の精度向上を予定するとしている。

不正検知モデルのイメージ図