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キリンビール、AIを活用した仕込・酵母計画システムを9工場で試験運用開始

醸造計画業務全体へのAI導入を実現

 キリンビール株式会社は29日、株式会社NTTデータと共同で、ビール類を製造する「仕込」・「発酵」工程において、AIを活用し、最適な仕込・酵母計画を自動で立案するシステムを開発したと発表した。キリンビールでは約1億7000万円の投資を行っており、活用する全9工場合計で、年間1000時間以上の時間創出を見込んでいる。

 ビール類の原材料を仕込み、発酵する工程の「仕込・酵母計画業務」は、熟練者の知見に頼る複雑な作業であり、さまざまな条件を勘案しながらの立案が必要なため、作業に時間がかかり、技術伝承が難しい業務になっているという。

 一方でキリンビールでは、2019年から「濾過計画」の自動化に関する運用を段階的に始めており、2020年12月より全9工場で濾過計画システムを導入していた。今回はそのシステムをベースに、NTTデータと共同で、各工場の熟練者へヒアリングを行ってさまざまな制約を洗い出し、制約プログラミング技術を活用して熟練者の知見を顕在化させ、標準化することにより、仕込・酵母計画システムを開発。段階的な導入を経て、2021年10月時点では全9工場における試験運用が開始された。

 こうして、熟練技術者のノウハウが取り込まれたシステムの導入により、仕込・酵母計画業務の属人化を防ぎ、熟練技術の伝承を実現するとのこと。またシステムの本格運用は2022年1月の開始が予定されているが、業務の効率化により、システム導入前に比べて全9工場合計で年間1000時間以上の時間創出を見込んでいるとした。

 各工場では、創出された時間を生かして、さらなる品質向上に向けた取り組みや、若手の育成など、人にしかできない価値創造を行うことで、「働きがい改革」の推進と、より高い品質管理レベルでの製造体制の確立が期待されている。

 今回のシステム導入において、NTTデータでは、システムに関する業務・システム要件の整理や、制約プログラミングエンジンの開発・チューニングなどを実施している。

 なお、今回の仕込・酵母計画へのシステム導入によって、ビール類を醸造する計画業務すべてにおいてAI導入が実現され、濾過計画、仕込・酵母計画合計で4000時間以上の時間創出を見込んでいるとのことだ。