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NEC、物体検知処理の精度を維持したまま、効率的かつ高速に実行できる新技術を開発

 日本電気株式会社(NEC)は16日、映像分析において、検知精度を維持したままで、物体検知処理を効率的かつ高速に実行できる「漸進的物体検知技術」を開発したと発表した。これにより、処理能力に制約があるエッジ機器でも、大量の映像に対する物体検知が可能になり、精度を維持したままで最大約8倍の処理速度を実現するとしている。

 映像分析では、ディープラーニング(深層学習)を活用した物体検知ソフトウェア(以下、物体検知AIモデル)によって、カメラで撮影された映像から分析対象となる物体を探し出す物体検知処理を行っている。しかし、精度の高い物体検知AIモデルは演算量が多いため、高性能なGPUなどを搭載できず、処理能力に制約があるエッジ機器では、大量の映像の処理を行うことは難しかったという。

 一方、演算量を削減した高速な物体検知AIモデルを利用しようと思っても、一般的に演算量と精度はトレードオフの関係にあるため、演算量を削減すると精度が低下してしまい、映像分析に求められる認識精度要件を満たせない点が課題だったとのこと。

 これに対して、今回開発された「漸進的物体検知技術」を適用すると、処理能力に制約があるエッジ機器でも、大量の画像の中から分析対象を効率的かつ高速・高精度に検知し、リアルタイムでのカメラ映像の処理や複数台カメラの同時処理を行えるようになるとした。

 同技術では、高速だが精度が劣る物体検知AIモデルと、高精度だが演算量の多い物体検知AIモデルを組み合わせ、それぞれの利点を生かして、効率的に複数の画像を処理している。

 具体的には、まず高速な物体検知AIモデルによって粗い精度で複数検知し、その検知結果をまとめて、高精度な物体検知AIモデルで処理することにより、検知対象を徐々に(漸進的に)精緻化し、分析する仕組み。これにより、カメラ映像から車両のナンバープレートを検知する例では、精度の高い物体検知AIモデルを単独で使用する場合に対して、検知精度を維持しつつ、約8倍の処理速度を実現したとした。

 また同技術は、特定の検知対象や特定の処理方式に限ることなく、「人」や「人の関節点」、「車両」、「車両のナンバープレート」など、検知対象に応じた多様な物体検知処理に対応可能。さらに、適用できるAIチップに制限がないことから、AIチップが共通して持つ、多数の演算リソースを内部に持つという特長を活用し、AIチップ内部の演算能力を使い切れると説明している。