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NEC、OCC、住友電気工業の3社、海底ケーブルの伝送容量拡大に向け、マルチコアファイバーを収容したケーブルを開発

 日本電気株式会社(以下、NEC)、株式会社OCC、住友電気工業株式会社は4日、非結合型マルチコアファイバーを収容した海底ケーブルを世界で初めて開発したと発表した。

 光ファイバーケーブルは、光が伝搬する中心部のコアと、その周囲を覆うクラッドの二重構造になっている。従来のシングルコアファイバーケーブルは、クラッド内に単一のコアを有しているのに対し、マルチコアファイバーケーブルはクラッド内に複数のコアを有しており、それぞれ独立した伝送路を設けることができる。

 海底ケーブルの大容量化に向け、ケーブルの外径を変えずに伝送容量を拡大する空間分割多重(SDM)技術の開発がさまざまな形で進められており、その一つとして、1本のファイバーケーブルに複数の光伝送路を設けるマルチコアファイバーケーブルは、国際データ通信網の拡充に貢献することが期待されるとしている。

 今回開発したマルチコアファイバーケーブルには、従来のシングルコアファイバーケーブルと比較して4倍のコアを有する非結合型4コアファイバーを適用しており、ファイバーサイズを維持したまま、伝送容量を大幅に拡できる。また、海底ケーブルには非結合型4コアファイバーを32心収容でき、最大で128コアによる伝送が可能となる。

 ケーブルは、総務省の「ICT重点技術の研究開発プロジェクト」における研究開発課題「新たな社会インフラを担う革新的光ネットワーク技術の研究開発」の技術課題「マルチコア大容量光伝送システム技術」(JPMI00316)の取り組みの一部として開発した。

 NECは、海底ケーブルを用いた長距離伝送試験を実施。OCCは、マルチコアファイバーを収容した海底ケーブルを製造。住友電気工業は、海底ケーブルに収容される非結合型4コアのファイバーを製造した。

 今回の非結合型マルチコアファイバーを収容する海底ケーブルには、OCC-SC500シリーズのLW(Light Weight)ケーブルを使用し、17mmと細径でありながら、水深8000mの海底でも耐えうる強度を有している。これまで、伝送容量を大幅に拡大するためには、広径の海底ケーブルにより多くのファイバーを収容することが一般的だったが、マルチコアファイバーを適用することで、空間が小さい細径ケーブルを用いて伝送容量を拡大できる。

OCC SC500 LWケーブルイメージ

 外径が細く、荷重も小さいケーブルを適用することで、広径ケーブルを使用する場合と比較してケーブルに必要な材料費を安く抑えられ、敷設船へ効率的に積載可能であることから、コスト削減に貢献できるとしている。

 開発したマルチコアファイバーケーブルを用いて、実際の利用を想定して、水中・長距離の伝送試験を行ったところ、ファイバーそのものの試験結果と比較して、光信号パワーの減衰量、コア間クロストーク(隣接するコアからの光の漏れ込み量)などの光学特性に大きな変化はなく、良好な伝送性能が得られたという。

 3社は今後、マルチコアファイバー量産化技術の開発、長期利用における信頼性の検証、マルチコアファイバーに対応した海底光中継器の開発を進め、マルチコアファイバーケーブルを活用した国際データ通信網の拡充に貢献するとしている。