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ネットワン、サービス事業への転身を進める現状をアピール 中期経営計画の進捗説明も
2021年9月10日 06:10
ネットワンシステムズ株式会社は9日、2021年度に最終年度を迎えた中期経営計画の進捗状況と、今後目指すサービス型ビジネスへの転身に関する説明会を開催した。
会見の冒頭、代表取締役 社長執行役員の竹下隆史氏は2019年11月、2020年10月と不適切事案が発覚したことに触れ、「多大なご迷惑をおかけしたことを、あらためておわび申し上げる」と述べ、頭を下げた。
その上で、「本年4月から新経営体制が発足し、現在、再発防止策の履行を徹底しており、再びこのようなことが起きないよう、全社一丸となって事業を進めている。今回、3カ年目に入った中期経営計画の進捗状況と、当社が今後進むべき方向性をお伝えする機会を設けたいと、今回の説明会を開催することになった」と、会見開催の狙いを話した。
2019年から3カ年計画でスタートした中期経営計画は、今年度が最終年度となっている。今年度はデジタル化/Afterコロナ・セキュリティ強化を中心に、通信事業者・パートナー各社とのサービス共創も交え、民間企業・公共機関へのビジネスを加速していくという方針を立てている。
現在の事業成長要因となっているのが、事業をサービス化した統合サービス事業。物販からビジネスがスタートする従来型システムインテグレーターからの脱却を進め、サービス型事業者への転身をさらに進めていく方針だ。
竹下氏はネットワンシステムズの目指す方向性として、「当社のコーポレートマークは匠という文字を意匠化したもので、匠の技と心を持ってICTの販売・サービス・保守に関わるビジネスを展開していく自負を示した。ネットワークに熟知した匠集団となっていくことで、全社員が匠の技と利活用でビジネスを行っていくことを目指している」と説明した。
その上で2019年から3カ年計画で進めている中期事業計画について、社員の成長、お客さま・パートナーの成長・会社の成長という3つの成長を実現しながら、次の3点の基本戦略を進める。
1)注力市場であるヘルスケア・スクールシステム・スマートファクトリーと新モデルであるMSPの支援とリファービッシュメント(再生品)の展開を拡大
2)統合サービスモデルの加速
3)netone DXの加速とwithコロナの働き方改革を実現する、働き方改革2.0/DXの実践
基本戦略のひとつである統合サービス事業は、中期経営の中で成長戦略として位置づけたものだ。「システムインテグレータのビジネスモデルをよりサービス型に真剣にシフトするために、ネットワンの活動すべてを統合サービスとした。われわれの持っているユニークな知財を再認識すると同時に、どのように活用し、蓄積していくのかを考え、新製品を含めサービス化している。統合サービス事業が好業績の源泉となり、ネットワンを支える柱となった」(ネットワンシステムズ 取締役執行役員の篠浦文彦氏)。
これまでネットワンはネットワーク技術を武器にシステム構築を行ってきたが、「あくまでも案件単位で、モノが売れることを前提としたビジネスモデルとなっていた。これをお客さまと継続的に長くお付き合いができる、サービス提供モデルにシフトし、営業スタイル含めた転身を図ってきた」(篠浦氏)と、ビジネスモデル転換を進めた。
具体的な新しいビジネスモデルの構築例として、クラウドの利用とテレワークのシフトに伴ったセキュリティ機能の提供がひとつ。やはりコロナ禍で需要が増加したSaaSと、マネージドモデルAPI連携によって組み合わせたサービスモデルも需要が拡大した。顧客が必要な機能を供給するサービスポータルを提供し、SaaS、アプリ、APIとも連携できる機能の提供や、サービス提供ノウハウとインフラ提供ノウハウを組み合わせ、顧客がサービスを提供するためのシステムと仕組みを提供するモデルも用意している。
篠浦氏は、「統合サービス事業を進めることで、ネットワンがハブとなり、お客さま、パートナー、さらにベンダーまで含めた新たな価値創造ができるビジネスを進めることを目指す」と述べ、従来の製品販売を起点としたビジネスからの転換を加速していくと説明した。さらにサービスプラットフォームを進化し、人的リソースへの依存から脱却し、デジタル化による転身も続けていく。
具体的にはサービスプラットフォームの技術進化を進め、「netone Elasticインフラストラクチャー」として、柔軟で高信頼性ネットワークに支えられた、DX支援ITインフラ基盤として活用していく。
「自律化されたITインフラで、クラウド利活用に最適なアーキテクチャーとして、ライフサイクルサービスと連動したワンストップ型のクラウドサービスとすることを目指す。この実現により、ベンダーやクラウドにロックインされることを自然に排除されるアーキテクチャーとなる」(篠浦氏)と説明する。
2020年に発表したnetone Lab As A Service(LAAS)などを含め、「アフターコロナに必要となる、デジタルとリアルを掛け合わせた価値創出を提供できる体制作りを目指していきたいと考えている」(篠浦氏)と説明する。
このほか、2021年度のトピックとして、「通信事業者・パートナー企業とのサービス共創も交えて、民間企業・公共機関へのビジネスを加速」を掲げている。ターゲット市場としては、直販と協業でパブリック市場とスマートファクトリーを実践するエンタープライズ市場を、さらに通信事業者市場とパートナー事業についてサービスの共創を実現することを目指す。
自治体事例としては、次期自治体情報セキュリティクラウドを構築。従来のオンプレミスをクラウドに移行することでサービス型セキュリティとすることで、インフラコストの削減とセキュリティ向上を実現した。地域事業者の新規ビジネス創出と人材育成を支援し、複数の県が利用可能な共同利用プラットフォームの創出と地域のDX人材の育成実現につなげていく。
MSP事例としては、クラウドベースの次期セキュリティサービス基盤構築を支援した。これは新型コロナウイルスの影響で、テレワークが急増してリモートアクセス環境の導入が必要となったこと、リモートアクセスを行うデバイスに向けたサイバー攻撃が急増していることなどを受け、従来はグループ会社が個別に導入してきたセキュリティ基盤を共通化し、セキュリティ強化を行うことを目的としている。今後、事業拡大を行う際にも対応できる全社グループで統一したセキュリティ機能をクラウドで提供した。
スマートファクトリーの事例では、ローカル5Gとスマートグラスを活用した実証環境を構築した。顧客側はデジタル技術を活用した現場のDX実現を要望し、ネットワンシステムズに対してはローカル5G機能を体感できる、具体的なアプリケーション構築することが期待された。そこで高速大容量・低遅延通信の検証に適切なツール・アプリケーションとして映像や音声を用いたスマートグラスを使ったユースケースの提案が行われた。
来年度からスタートする新たな中期経営計画策定の準備も進め、「事業の特性をふまえた新しい価値創造実現につながるストーリーを描き、成長戦略、財務戦略、人材の育成を進めていくことで経営基盤強化を進める」(竹下氏)としている。