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ラクスル、ITデバイス&SaaSの統合管理クラウド「ジョーシス」 コーポレートITのアナログ業務を自動化し生産性向上を支援

 ラクスル株式会社は1日、印刷・集客支援のプラットフォーム「ラクスル」、物流のプラットフォーム「ハコベル」、広告のプラットフォーム「ノバセル」に続く新事業として、ITデバイス&SaaSの統合管理クラウド「ジョーシス」を正式リリースしたと発表した。

 同日には、新規事業に参入する背景や狙い、「ジョーシス」のサービス概要について説明会が行われた。

コーポレートITのアナログ業務を自動化

 「ジョーシス」は、従業員・ITデバイス台帳の管理・デバイス購入からキッティング・入退社にともなうSaaSアカウント管理・日々のヘルプデスク対応までを自動化する機能を提供し、企業のITインフラを管理する情報システム部門(以下、コーポレートIT)の業務負荷を軽減するサービス。コーポレートITのアナログな業務を自動化し、同部門が本来注力すべき「IT戦略の全体デザイン」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」に専念できる環境を実現する。

「ジョーシス」のサービス概要

 新規事業として「ジョーシス」を展開する経緯について、ラクスル 代表取締役社長CEOの松本恭攝氏は、「新型コロナウイルス感染症の影響で、昨年5月の当社の売上は大きく減少した。これを受けて、販促費と開発委託費のコスト削減に取り組んだが、その中でコーポレートIT業務委託のコストだけがほとんど下がらなかった。これは、全社のリモートワーク実現には、パソコンのセットアップや故障対応などコーポレートITのアナログな支援業務が必要であり、この部分の自動化が進んでいない実態が明らかになった。そこで、こうしたコーポレートIT領域が抱える『不』を解決するべく、新たに『ジョーシス』のビジネスを構想した」と説明した。

ラクスル 代表取締役社長CEOの松本恭攝氏

 また、同社がコーポレートIT担当者600人を対象に実施したオンラインサーベイの結果を踏まえて、「多くのコーポレートIT部門は、戦略的ITの構築に時間を割きたいが、業務に忙殺され時間を取れていないのが実情。ITデバイスの管理業務は、まだまだExcelが多く単純業務となっている。また、SaaSについては契約状況や支払いコストを管理しきれていないことがわかった。そして、忙殺の結果、退職率が高く、引き継ぎが大きなストレスになっている。結果的に単純業務を中心に外部委託が増加し、コーポレートITのコストが従業員の増加に比例し膨れ上がる構造にある」(松本氏)と、コーポレートITの課題を指摘した。

 これらの課題に対して、「ジョーシス」では、同社が強みとする調達・オペレーション力を活用し、コーポレートITのアナログな支援業務を自動化。SaaS/EC/BPOと複数のサービスを通じてそれらを提供し、業務コスト削減とセキュリティレベル向上を実現する。さらに、“職場を良くするために働く人”の可能性を解放するプラットフォームとなることを目指す。

「ジョーシス」のビジネスモデル

 「ジョーシス」の主な機能としては、台帳管理機能により、人事系SaaSと連携したクラウド従業員アカウントを管理することが可能。API未対応アプリやオンプレソフトウェアも一元管理でき、アカウント管理だけでなく、契約体系や料金も管理できる。

 企業内で利用するITデバイスを業界最安値クラスで購入できるオンラインストア機能を提供。オンラインストアで購入したデバイスについては、キッティング後の納品・ジョーシス倉庫での保管も可能となる。また、外部で購入したデバイスについても同社倉庫に送付することで、キッティングだけのアウトソーシングにも対応する。

 「ジョーシス」上で一元的にさまざまなSaaSのアカウント管理が可能。アカウント発行・権限/プラン設定からアカウント削除・停止までをワンクリックで対応できるほか、従業員台帳と連携してSaaSの利用状況を把握することができる。SaaSの利用状況を可視化することで、不要なコストの削減も図ることができる。

 また、「ジョーシス」でのデバイス販売やキッティングサービスなどの提供にあたっては、B2B市場におけるデバイス販売とアフターサービス提供で100年の歴史をもつ株式会社Tooと提携し、上質なサービスを提供する。

Tooとの協業体制

 Too 代表取締役社長の石井剛太氏は、「当社では、クリエイターの人々が本業に専念できる環境を創ることをミッションとして事業活動を行ってきた。特に、Macのソフトウェア・ハードウェアの購入からキッティング、保守サポートまでをワンストップで提供している。今回の『ジョーシス』においても、このノウハウを生かし、各種デバイスの購入・キッティング・保守サポートの部分を当社が担っていく。『ジョーシス』の提供を通じて、コーポレートITの担当者が、より生産性の高い仕事ができる環境を構築していく」と述べた。

Too 代表取締役社長の石井剛太氏

 なお、「ジョーシス」の開発については、昨年9月に設立したラクスルのインド拠点が主体となり、グローバルチーム体制で開発を進めているという。ラクスル インド拠点長のSanjay Rajasekhar氏は、「ラクスルでは、インド初の日本のテクノロジースタートアップとして昨年9月にソフトウェア技術開発拠点を設立した。インド拠点では、厳選した人材採用を行っており、多様なバックグラウンド、多様な言語、多様な文化でありながら、同じビジョンをもって開発に取り組んでいる。『ジョーシス』のスクラムチームも半年前に結成されたばかりだが、今回無事にサービスをローンチすることができた。これをスタート地点として、数年後には、より高いレベルでの価値を実現していけると確信している」と意欲を語った。

ラクスル インド拠点長のSanjay Rajasekhar氏