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コンピュータソフトウェア協会が名称変更、組織名から“コンピュータ”を取り「ソフトウェア協会」へ

 一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)は、7月1日から組織名を「一般社団法人ソフトウェア協会(略称:SAJ)」に変更する。

 協会のビジョンも、「ソフトウェア(国)の未来を創る」に変更し、ミッションとして「ソフトウェアに関わるすべての組織(チーム)・人をサポートする」とする。会員対象もユーザー企業、会社組織に参加せず、エンジニアとして働く個人も対象としていくとのこと。

CSAJからSAJへ名称を変更
新たなビジョンとミッション

 なおCSAJでは、6月9日に実施された定時総会で定款変更を行い、団体名変更と同時に新しいビジョンとミッションで活動を開始する。

 組織名の変更と新しいビジョンへの変更を行うことに対し、現在の会長である荻原紀男氏(豆蔵K2TOPホールディングス 代表取締役社長)は、「2021年、いよいよデジタル庁創設が実現する。遅い対応という声もあるものの、デジタル化の必要性が広く認知され、施策のスピードが速くなってきたところもあると感じている。今後は、すべての業界がソフトウェア業界となっていく可能性もある。逆にソフトウェア開発は、言語を学ぶことなく、ノーコードが主体となるといった主張もある。どんな変化が起ころうともソフトウェアに関連することは、われわれが中心となって動く。何か問題があったら、どんなことでも相談してほしい。そのための勉強を支援する団体として、活動していきたい」とアピールした。

CSAJ 会長の荻原紀男氏(豆蔵K2TOPホールディングス 代表取締役社長)

“すべてのソフトウェアを対象とし、デジタル社会を推進する役割となる”

 一般社団法人ソフトウェア協会への名称変更の背景となっているのは、“第四次産業革命”により、あらゆるものにソフトウェアが使われるようになった時代においても、「すべてのソフトウェアを対象とし、デジタル社会を推進する役割となる」ことをアピールする狙いがあるという。

名称変更に至った背景

 もともと同協会では、創立以来、時代の変化、置かれている環境の変化にあわせ、業界名を変化させてきた歴史もある。振り返ってみると、同協会は1986年、「日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会」として社団法人化した。その後、2006年にはクラウドやASPといった新しいソフトウェア活用が広がったことで、団体名を「社団法人コンピュータソフトウェア協会」に変更。基本理念に「オープン」、「フェア」、「グローバル」を加え、SaaS研究、OSSの普及推進、モバイル技術の活用、契約検討、Pマーク事業などを新たに取り組んでいる。

 2012年からは一般社団法人化し、活動方針に「シンクタンク化」、「グローバル化」、「ビジネスチャンス拡大」を掲げた。業界団体としての活動を重視し、ITだけでなくAIやIoTなどにつながる人材育成、プログラミング教育、ソフトウェア品質、データ適正消去証明、次世代経営者発掘、セキュリティ、地域IoT推進などを勧めていくという方針を掲げている。

CSAJの沿革

 さらに2014年から現在までは、「イノベーションをリードするソフトウェア集団:Innovation Create the Future」をビジョンとし、「自社で市場ニーズを分析し、企画、開発、商品化した既成ソフトウェア(企画開発型ソフトウェア)を販売、あるいはそれを利用したサービスを提供している企業を中心とした団体」と自らを位置づけた。

 活動方針としては「『シンクタンク化』、『グローバル化』、『ビジネスチャンス拡大』の3つの方針を掲げ、イノベーションとIT化の促進を通じてわが国経済の発展と国民生活の向上に寄与する」とする。2021年6月現在の会員数は637社で、荻原会長就任後、約200社増加している。

CSAJの現状

 その同協会では、2019年10月から団体内で将来の方向性検討を開始。その中で、ソフトウェアがあらゆる場面で利用され、重要性が増していることから、「コンピュータに限らずすべてのソフトウェアを対象とした協会とするべきではないか?」との意見があがったことから、議論を重ねた結果、団体名変更を実施することとなった。

 さらに、議論を進める中で、「現在の日本の最重要課題であるデジタル化は、ソフトがなければ進めることができない。われわれの活動がソフトウェアの未来を作り、日本の将来を作ることにつながるのではないか?そのためには圧倒的な影響力を持った団体となることを目指すべきではないかという意見があった」という。

 経済産業省が2018年9月に発行した「DXレポート」では、2025年の壁という問題が提起され、2020年12月に発行された「DXレポート2」ではレガシー企業文化からの脱却が言及されている。こうした課題解決にはソフトウェアの力が不可欠であると考え、協会として活動を進めていく。

新ビジョン・ミッションに込めた思い

 これを実現するために定款を変更し、ユーザー企業の団体への参加、フリーランスや兼業や副業でエンジニアを行っている人、スタートアップ企業などに対しても協会のメンバーとして活動してもらうことも進めていく方針だ。会員拡大によって、国内最大のソフトウェア関連団体となることを目指していく。

 個人の参加者向けには、7月にWebサイトから簡単に参加申し込みができる仕組みを作り、参加を呼びかけていく。荻原会長は、「ある団体の技術者向けアンケートでは、約9割の人が新しい技術を覚えたくないと答えていることに大きなショックを覚えた。多くの人が既存知識だけで今後もやっていけると思っているようだが、これは大きな誤り。個人の方にも情報提供、勉強会を実施することで、日本のエンジニアの底上げにつなげたい」と狙いを話す。

 また、協会が誕生してから時間を経過したことから、スタートアップ企業など若手への参加を増やすことも狙いの一つとなっている。

今後の計画

 自身も若手経営者でもある副会長の田中邦裕氏(さくらインターネット 代表取締役社長)は、「プロジェクトみらい(仮)というプロジェクトは、45歳未満の人が参加できるもので、60数名が参加している。中には霞ヶ関のメンバーもいて、ある自治体の副知事となったといった例もある。当協会も現在は歴史ある協会となったが、もともとは30代だったメンバー中心に立ち上がったと聞いている。今回、会社という組織にしばられずに参加できるようになったことで、若返りにつながることもあるだろうし、プライバシーマーク取得の際には、協会メンバーとなることで取得費用を少なくすることができる。そういったメリットを感じて参加してくれる人が増えれば」と、若い起業家やエンジニアへの参加を呼びかけた。

 なお、新しいビジョン策定にともなってロゴデザイン等の変更も行う予定で、公募を進めて10月11日の公開を目指していく。

CSAJ 副会長の田中邦裕氏(さくらインターネット 代表取締役社長)