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セールスフォース、中小企業のデジタル化を支援するパッケージを90日間無償提供
2020年9月11日 06:00
株式会社セールスフォース・ドットコム(セールスフォース)は10日、中小企業のデジタル化を支援する「中小企業デジタル変革支援パッケージ」を、90日間無償で提供することを発表した。また同日のオンライン説明会では、同社の中小企業向けの取り組みを報道関係者に紹介するとともに、中小企業がデジタル変革することの必要性をアピールした。
中小企業デジタル変革支援パッケージは、営業支援の「Salesforce Sales Cloud(Enterprise Edition)」と、リアルタイムコミュニケーションを実現する「Quip」をセットにしたもので、従業員数200人以下の企業や法人が利用できる。
デジタル化された営業活動と情報共有を進めることで、コロナ禍で厳しい環境に置かれている中小企業を支援する。提供期間は90日間で、従業員数200人未満の企業・法人が利用できる。最大で30ライセンスの提供を予定。申し込みは、同日から2020年10月30日12時まで受け付けている。
セールスフォース 専務執行役員 コマーシャル営業の千葉弘崇氏は、「日本の中小企業は、コロナ禍で売上減少、商談・出張の中止や延期、取引先の廃業などの危機に見舞われ、追加チャレンジを行うことが必要になっており、誰もがどこでも使えて、導入が容易なITシステムが求められている。そこで中小企業のこれからの歩みを支える支援パッケージを提供することにした。クラウドを介し従業員がコラボレーションしやすい環境を提供していく」とパッケージ提供の狙いを説明した。
Sales Cloudで営業活動を支援
中小企業デジタル変革支援パッケージに入っているSales Cloudは、企業活動に不可欠な営業活動を支援するものだ。「営業活動は企業活動のコア部分だと認識している。Sales Cloudを導入することで属人性をなくし、雑務を減らして価値を生む業務に集中し、パフォーマンスを向上させられる。人手不足をカバーするためのAI導入や、競合を超えるスピードを実現する」(セールスフォース マーケティング本部 プロダクトマーケティングマネージャーの秋津望歩氏)。
これを実現するのが、限られたリソースを最適に配分する、営業活動を可視化するSales Cloudだ。顧客に関する全情報を一カ所に集約。5W1Hが明らかになることで、成功パターンをシステムに組み込み、営業プロセスを最適化する。
また、人手不足をカバーするために、過去データをもとにした予測や気づきを営業担当者に提供するAI「Einstein予測ビルダー」により、商談の可能性、解約の可能性を予測してスコアリングする。
さらに「Einstein Next Best Action」では、次に案内すべき製品、情報などをビジネスルールに基づいてレコメンドする。
このほか、意思決定を行う際には、PDCAサイクルをもとにした成長を実現するためのサポートを提供。必要な情報を集めたダッシュボードを使ってビジネスを把握できるという。具体的には、現場の営業担当者、管理職などそれぞれが必要な情報を集約して表示し、意思決定に必要な情報を掲載することが可能だ。
チームでのコラボレーションを支援するQuip
一方のQuipは、「いわばWord、Excel、チャットなどが1つの画面で利用できるようなサービス。在宅勤務に必要なセキュリティも実現している。どこにいても業務を行うことを実現し、業務を止めないためにオンラインで作業し、社内共有していくソリューション」(秋津氏)。
商談記録、契約更新プラン、サポート・定着化計画、アカウントプランニング、メモ、価格提案などさまざまな情報を管理し、共有していく。また営業担当者の営業提案資料、カスタマーサービスの問い合わせ対応、マーケティングのセミナー企画運営など、社内の情報を集約して効率的な業務作業を実現するとした。
企業の状況に合わせた導入を支援するパートナーの存在が不可欠
中小企業が、より利便性高く、セールスフォース製品をはじめとするさまざまなツールを活用するためのパートナー支援策については、セールスフォースの執行役員 アライアンス事業 AppExchangeアライアンス部 部長の御代茂樹氏が説明を行った。
「セールスフォース製品については、導入しやすく、自社だけで導入することもできる。しかし、最近ではさまざまなサービスが登場し、セールスフォース製品だけでなくさまざまなツールと組み合わせて利用することで、より業務効率が向上することになる。セールスフォース以外の製品に関する知識を持ち、企業の状況に合わせた導入を支援するパートナーの存在が不可欠になる」(御代氏)。
御代氏は複数のSaaSアプリケーションを組み合わせて利用する「SaaSMIX」が今後のIT基盤として必須のものとなると指摘。「セールスフォースと他社のアプリを連携して利用したことで、セキュリティの脆弱性が起こるといった事態になっては大きな問題」(御代氏)とパートナーがセキュリティにも配慮し、複数のSaaSアプリケーション導入を支援するパートナーが必要だと強調した。
こうした状況の変化を受けて、セールスフォース製品のスキルとノウハウに加え、連携する外部アプリの知識や中小企業の実態を熟知したパートナー育成を進め、数千人規模の技術者をスキルアップするセミナーなどを実施している。
実際に北海道にある斉藤砂利工業は、砂利採取と販売をメイン事業としているが、長年、セールスフォースのユーザーだったことから、そこで得た中小企業へのクラウド導入ノウハウをビジネスとするようになった。こうした新しいノウハウを持ったパートナー企業の存在が、中小企業のクラウド導入を支援する力となるという。
オンライン会見には、木材卸業の株式会社東集 代表取締役社長である望田竜太氏が登壇。平均年齢40歳代後半、紙、はんこ、電話を使って業務を行ってきた同社のデジタル変革を紹介した。
東集はクレストホールディングスが買収し、企業再建を行うために望田氏が社長として経営を進めている。望田氏は、「レガシーで先がないと言われている業種をDXにより再生し、生産性を上げ、花形産業へと変えることを目指している」と、買収と企業再建を進めている理由を説明する。
そこで新生・東集のスタート1日目に、ISDNだった社内ネットワークを光回線+Wi-Fiに変更し、さらにその後の4カ月で紙の台帳からセールスフォースを基盤としたデジタル活用による業務へと切り替えていった。
「当然、社内から抵抗もあったものの、熱意を込めてトップから説得を行った。自分たちで変わっていかなければ先がないことを社内に訴え、変革の必要性を訴えていった」(望田氏)。
デジタルへの切り替えを進めていったことがコロナ禍には幸いし、スムーズにオンライン業務へと移行することができたという。オンライン業務においてもコミュニケーションをはかるためにオンライン飲み会を含め、コミュニケーションや協業ができる体制を整えた。コミュニケーションがあることで、情報共有だけでなく、新しいビジネスの種発見といったプラス効果があり、「これは紙文化のままであれば、実現できなかったこと」と、望田氏は振り返る。
デジタル化していることがアピールポイントとなって、若手人材の採用にもつながっているという。「今後はEinsteinの活用やレポートダッシュボードの活用なども進め、グループ企業内でのシナジー効果が出る協業なども実現したい。中小企業のDXは、システムを使い切れば投資回収できると考える」(望田氏)とデジタル変革実現は十分に費用対効果があったと強調した。