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ジュニパー、AIを活用したネットワーク運用支援機能の適用範囲をWANにも拡張

新型コロナウイルス感染症対策ソリューションも紹介

 ジュニパーネットワークス株式会社(以下、ジュニパー)は4日、同社が推進する、AIを活用したネットワークビジョン「AIドリブンエンタープライズ」のアップデートを発表し、同日オンラインの記者説明会を開催した。

 AIドリブンエンタープライズは、米Mist Systems(以下、Mist)が2016年に発表した無線LAN運用を支援する技術が基になっており、2019年にMist社が米Juniper Networksに買収された後も、AIドリブンエンタープライズのビジョンは継承されてきた。

 2019年に有線LANに対応した「2.0」が、2020年上半期にはセキュリティインテリジェンスを拡張した「3.0」が発表されている。そして今回発表された4.0では、「Juniper Mist WAN Assurance」によって、適用範囲をWANにまで拡張している。

 このアップデートについて、Juniper エンタープライズ担当上級副社長のスジャイ・ハジェラ氏は、「WANが適用範囲に加わったことで、全体像は完全なものとなった」とアピールする。なおハジェラ氏は、Mistの共同創設者 社長 兼 CEOを務めていた人物だ。

Juniper エンタープライズ担当上級副社長 スジャイ・ハジェラ氏

 さらに同氏は、「AIドリブンエンタープライズがフォーカスしているのは、エンドユーザーのエクスペリエンス。アクセスポイント、スイッチ、ルータなどの機器が稼働しているかが重要なのではなく、ユーザーがきちんとネットワークにつながって、アプリケーションを利用できているかということを重視する。今後10年先のネットワークを見据え、AIのテクノロジーがネットワークを変革していく」と説明した。

AIドリブンエンタープライズ
ユーザーエクスペリエンスにインサイトを活用

 新しいWAN Assuranceでは、ジュニパーの「SRX」からクラウド内のMist AIエンジンにストリーム配信される主要なテレメトリデータを通じて、カスタマイズ可能なWANサービスレベル期待値を実現。さらに、AIエンジンである「Marvis」と連動することで、クライアントからクラウドに至るイベントの相関分析から、障害を迅速に解決するほか、自動化されたワークフローが異常を検知して、自律的に事前予防のアクションを実施するという。

Juniper Mist WAN Assurance サービスレベル期待値(SLE)

 Marvisの対話型インターフェイスである「Marvis VNA(仮想ネットワークアシスタント)」について、ハジェラ氏は、「単なるチャットボットではない。例えば『加藤さんのZoomセッションでは何が起きているか?』など、人に質問するように自然言語で質問すれば、Marvisが回答してくれる」と説明。スキルの高いネットワーク管理者でなくても、異常を検知して障害原因を特定することができるようになるという。

 Marvisで質問をすると、Marvisは質問の裏にあるインテントを推測し、大規模なナレッジベースのアクセスに基づいてインテントを提供する。また、推奨される次のステップに基づいて、問題をさらに深掘りできるようインタラクティブなクエリを用いる。

 ユーザーは「Marvisが正しく質問に回答できているか」「正しく根本原因にたどり着いているか」をフィードバックできるため、継続的に学習させることも可能だ。なお、Marvis VNAは直接使用するだけではなく、オープンAPIによってほかのアプリケーションに組み込んで利用することも可能となっている。

Marvisの対話型インターフェイス

 さらにAIドリブンエンタープライズ 4.0に向け、ジュニパーはWi-Fi 6のポートフォリオも拡充し、新たに屋外向け「AP63」、屋内向け「AP33」、屋内および屋外向け「AP32」、屋内ウォールプレート型「AP12」の4機種が発表されている。

 これにより、アクセスポイントのラインアップは、Wi-Fi 6製品5機種、Wi-Fi 5製品3機種、BLE(Bluetooth Low Energy)のみの製品1機種の、計9機種がそろったことになる。特にWi-Fi 6製品については、教育機関、小売業、物流業、医療機関、公共機関など、多様な用途でメリットを提供できるという。

新たにWi-Fiアクセスポイントの4機種が発表

 2020年上半期におけるJuniperのエンタープライズビジネスは、産業全体がマイナス成長となっている中でも好調で、エンタープライズ向けスイッチの収益が前年比7%増、キャンパスおよび支店スイッチの収益は前年比10%増であったという。とりわけMist事業においては、2020年第2四半期に前年比172%を記録した。

好調のMist事業は、2020年第2四半期に前年比172%を記録した

新型コロナウイルス感染症ソリューションを紹介

 今回の記者説明会においては、無線LANのアクセスポイントの新機種発表に関連し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のソリューションについても言及している。

 1つ目は2020年4月30日にリリースした「Premium Analytics」が、職場感染対策として接触履歴追跡(Contact Tracing)にも応用できると紹介した。無線LAN、Bluetooth、ビーコンで把握したユーザーの位置情報から行動を分析するという。

Premium Analyticsは、接触履歴追跡にも応用可能
Contact Tracing
オフィスにおける密集状態の回避
従業員から陽性反応が確認された場合、感染者の行動履歴をさかのぼって追跡
感染者が滞在していたエリアを確認し、同じ時間帯に一緒にいた濃厚接触者を特定する

 2つ目は「Enterprise @Home」で、在宅勤務者の自宅に無線LANのアクセスポイントを設置し、自動的にVPN接続(IPsec/L2TP L2トンネル)を確立するソリューションだ。IP電話を有線で接続することで、在宅勤務でコールセンター業務に従事するといったユースケースにも対応できるという。

Enterprise @Home では、自宅に無線LANのアクセスポイントを設置するだけで、安全なVPN接続を確立する