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AWS、2020年4~7月の主要なサービスアップデートを紹介 ノンプログラミングで表形式データのアプリを作れる「Honeycode」など

最小のエッジデバイス「Snow Family」、ARM64の新CPU「Graviton2」も

 Amazon Web Services(AWS)の日本法人であるアマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社は20日、AWSの2020年4~7月の主要なサービスアップデートを紹介する記者説明会を開催した。

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社の瀧澤与一氏(技術統括本部 レディネス&テックソリューション本部 本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト)によると、この期間のアップデートは「What's Newを数えても614ある」という。その中から、氏がピックアップしたものが解説された。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社の瀧澤与一氏(技術統括本部 レディネス&テックソリューション本部 本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト)

プログラミングなしで表形式データのアプリを作れる「Amazon Honeycode」

 まず、Amazon Honeycodeが解説された。6月に発表されたサービスで、現在はベータ版である。

 Amazon Honeycodeは、プログラミングなしでPCおよびモバイル向けのWebアプリを作れるフルマネージドサービスだ。スプレッドシート形式でデータを定義し、画面を設計することで、データを入出力するアプリができる。方向性としては、サイボウズのkintoneなどに近い。

 瀧澤氏はAmazon Honeycodeのターゲットとして「自分でコードを書けないがスプレッドシートのデータをよく扱っている人」と説明した。特徴としては、ワークブック(テーブルの集合)やアプリケーションをチームで共有可能なことや、Honeycode APIを利用してアプリを操作できることが挙げられた。

Amazon Honeycodeの特徴
作成開始。Create Workbookから「Simple Survey」などのテンプレートを選択できる
表形式で列項目を設定
入り口画面を作成
入力画面を作成
PCとモバイル用のWebアプリが完成

メッセンジャーバッグで運べるエッジデバイス「AWS Snow Family」

 続いて、AWS Snowconeが解説された。

 AWS Snowconeは、エッジコンピューティングデバイスのAWS Snow Familyの最小のデバイスだ。過酷な環境と、ネットワーク接続が切れるような環境で、エッジコンピューティングやエッジストレージ、データ転送のデバイスとして使われる。6月に一般提供開始(GA)されたもので、東京リージョンはまだ対応していない。

 重量約2kgで、長さ約2.5cm、高さ約7.5cm。8TBのストレージと、2CPU、4GBのメモリを備える。自動車やメッセンジャーバッグで運ぶことを想定しているという。ユースケースとては、ネットワークが分離された場所での手術や映像配信などを瀧澤氏は挙げた。

 「AWS Snowconeは、単なるデータ転送デバイスでなく、エッジの課題を解決しようというものだ。AWS Wavelength(5G)などを含む一連のエッジ環境のソリューションの中で、エッジ環境を補完する」と瀧澤氏は説明した。

AWS Snowconeの概要
AWS Snowconeのユースケース
AWSのエッジコンピューティングのイメージ

ARM64の新CPU「AWS Graviton2」

 次はAWS Graviton2プロセッサだ。Graviton2はAWSが独自開発したARM64アーキテクチャのCPUで、5月に発表。Amazon EC2のM6g・C6g・R6gインスタンスで利用できる。東京リージョンでも対応している。

 Graviton2は瀧澤氏によると、従来のGraviton(Graviton1)に対してパフォーマンスが大幅に改善され、Intel x86に対してコストパフォーマンスが最大で40%高いという。

 数値的にはGraviton1に比べ、パフォーマンスが7倍、コンピューティングコアが4倍、メモリの速度が5倍、キャッシュが2倍となっている。

 瀧澤氏はAmazon EC2について、IntelやGravitonのほか、用途やケーパビリティでインスタンスを選べ、275種類以上のインスタンスがあるとして、選択肢の広さを強調した。

AWS Graviton2の概要
Amazon EC2の選択肢の広さ

動画配信の「Amazon IVS」と「AWS Elemental Link」

 動画配信ソリューションも2つ解説された。

 7月に発表されたAmazon Interactive Video Service(Amazon IVS)は、瀧澤氏いわく「使いやすいライブビデオストリーミング」のサービスだという。

 特徴は、迅速かつ簡単なセットアップと、低レイテンシ(低遅延)だ。多数の人が視聴しても低レイテンシを保ち、おおむね3秒未満になっているため、例えばその場でアンケートをとるといった場合の混乱も避けられるという。

 また、SDKが用意されているため、いろいろなアプリに組み込むこともできる。Amazon IVS発表時にはDeNAのPocochaのエンドースもあり、「Amazon IVSに任せることでライブビデオ配信の運用を削減できる」と語られている。

Amazon Interactive Video Service(Amazon IVS)の概要

 5月に発表されたAWS Elemental Linkは、AWS Elemental MediaLiveでライブ配信するためのハードウェア。3G-SDIまたはHDMIで動画映像を入れると、自動チューニングして配信してくれる。

 デバイスはAWSマネジメントコンソールから注文でき、事前に設定された状態で届く。

AWS Elemental Linkの概要

 両者をふまえて瀧澤氏は、Amazon IVSと、AWS Elemental MediaLiveを含むAWS Elemental Media Servicesの違いについても説明した。Amazon IVSは低遅延と簡単さが特徴で、一方のElemental Media Servicesはより詳細なビデオ要件を持つ顧客向けのものだという。

Amazon IVSとAWS Elemental Media Servicesの違い

AWSとSlackの戦略的提携

 6月にはAWSとSlackが、企業向け統合ツールの提供について複数年契約を発表した。

 具体的な項目は4つ。「Amazon Chime + Slack Calls」として、Slackからビデオ通話を呼び出すSlack Callの中にAmazon Chimeが入る。

 「AWS Key Management Service + Slack Enterprise Key Management」では、暗号鍵の配布と管理のAWS Key Management Serviceを、Slack Enterprise Key Managementで活用する。

 「AWS Chatbot + Slack」では、AWS ChatbotによりAWSサービスを利用したSlackのチャットボットを作れる。

 また「Amazon AppFlow + Slack」では、AWSサービスとSlackの間で安全にデータを転送できるようになる。

AWSとSlackによる企業向け統合ツールの提供

AWSへのマイグレーション分野のアップデート

 続いて、カテゴリーごとのアップデートが紹介された。

 まずは、AWSへのマイグレーション関連のアップデートでは、AWS Migration Hub が東京リージョンとバージニア北部リージョンで利用可能になったこと(5月発表)と、AWS CloudEndure Migration Factoryソリューション(6月発表)の2つを瀧澤氏はピックアップした。

 Migration Hubとは、オンプレミスのシステムを、期間をかけてAWSに移行するときに、検出、評価、移行の進捗状況を追跡できるものだ。

 また、AWS CloudEndure Migration Factoryソリューションは、移行のために情報を採集し、セットアップするツールだ。

AWSへのマイグレーション関連からピックアップ2点
Migration Hub概要
AWS CloudEndure Migration Factoryソリューション概要

サーバーレスとアプリケーション開発分野のアップデート

 サーバーレスとアプリケーション開発のアップデートでは、瀧澤氏は4点をピックアップした。

 1つめは、Elastic File System(EFS)のAWS Lambdaサポートが一般利用可能に(6月発表)。LambdaからEFSにアクセスできるようになった。

 2つめはAWS App2Container(7月発表)。アプリケーションをコンテナ化してAWSクラウドに移行するコマンドラインツールだ。

 3つめは、iOS・Android向けのAmplifyが一般提供開始(GA)となった(5月発表)。AWSのサービスを利用したモバイルバックエンドの自動設定と、そのモバイルフロントエンドの作成ができるフレームワークで、オープンソースソフトウェアとして配布される。

 4つめとしては、Amazon Simple Email Serviceが、オハイオ、シンガポール、東京、ソウルのリージョンで利用可能になった(7月発表)。

サーバーレスとアプリケーション開発からピックアップ4点
LambdaからEFSにアクセスできるように
アプリケーションをコンテナ化するAWS App2Container
Amplifyが一般提供開始(GA)に

アナリティクス、データベース、セキュリティなどのアップデート

 アナリティクス分野では、Redshiftのアップデート(4月発表)がピックアップされた。マネージドストレージ付きのRA3.4xlargeノード、ノード数やタイプの変更を数分で実行するElastic Resizeへの対応、ピーク時に追加クラスターに処理をふりわけるConcurrency Scaling、Redshiftを介してRDSやAurora PotgreSQLなどにクエリするフェデレーテッドクエリなどが紹介された。

マネージドストレージ付きのRA3.4xlargeノード
ノード数やタイプの変更を数分で実行するElastic Resizeへの対応
ピーク時に追加クラスターに処理をふりわけるConcurrency Scaling
Redshiftを介してRDSやAurora PotgreSQLなどにクエリするフェデレーテッドクエリ

 データベースの分野では、Apache Cassandra互換のマネージドデータベースAmazon Keyspaces (for Apache Cassandra)の一般提供開始(GA)(4月発表)と、Amazon Auroraのマルチマスターが東京リージョンを含む8のリージョンで利用になったことが紹介された。

Amazon Keyspaces (for Apache Cassandra)の一般提供開始(GA)
Amazon Auroraのマルチマスター

 セキュリティの分野では、Amazon Macieがまったく新しいサービスとしてリニューアルしたことが紹介された。従来のMacieは、Macie Classicの名前で、既存顧客にのみ提供される。新しいMacieでは、可視化や集中管理、自動化に対応し、そのために新しく作りなおされたという。

 また、潜在的なセキュリティ問題や不審なアクティビティ分析するAmazon Detectiveの一般提供開始(GA)も紹介された。

Amazon Macieがまったく新しいサービスとしてリニューアル
Macieの可視化の機能
Macieの集中管理の機能
Macieの自動化の機能
Amazon Detectiveの概要

 そのほか、AWSソリューションも紹介された。数多くあるサービスの組み合わせ方について、デプロイガイドやテンプレートを提供するものだ。

 そのアップデートとして瀧澤氏は、製造業のプロセス最適化や予測メンテナンスのためのAmazon Virtual Andon 2.0(7月発表)を紹介した。

AWSソリューションの概要
Amazon Virtual Andon 2.0