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AWSがAI/機械学習関連サービスを紹介、時系列データから将来を予測する「Amazon Forecast」など

Amazonのお勧め商品のようなレコメンデーションを実現するサービスも

 アマゾンウェブサービスジャパン株式会社(AWSジャパン)は、AI/機械学習関連サービスであるAmazon Personalize(2019年6月正式リリース)とAmazon Forecast(2019年8月正式リリース)についての記者説明会を、10月29日に開催した。

 Amazon Forecastの利用企業として、オンラインプログラミング学習サービスのAidemyの事例も紹介されている。

データを用意するだけでレコメンデーションができるAmazon Personalize

 「Amazonは機械学習を実ビジネスに適用しており、そのために投資している。その中から出てきた技術を一般向けにAWSで提供している」と、AWSジャパンの瀧澤与一氏(技術統括本部 レディネス&テックソリューション本部 本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト)が解説した。

 AWSのAI/機械学習関連サービスを、瀧澤氏は、既存の機械学習機能によってデータがあれば利用できる「AIサービス」、ユーザーがモデルを作る「MLサービス」、GPUや機械学習フレームワークなどを使って自分でプログラミングする「MLフレームワーク&インフラストラクチャ」の3つに分類した。

 今回説明されたAmazon PersonalizeとAmazon ForecastもAIサービスに入る。AIサービスにはそのほか、静止画・動画認識や音声処理、テキスト処理などがある。

AWSジャパンの瀧澤与一氏(技術統括本部 レディネス&テックソリューション本部 本部長/プリンシパルソリューションアーキテクト)
AWSのAI/機械学習関連サービスを3つに分類

 Amazon Personalizeは、Amazonのお勧め商品のようなレコメンデーションを実現できるサービスだ。機械学習の経験がなくとも数日で導入できるという。

 利用するには最低限、行動履歴とユーザー属性、アイテム属性のデータを、CSVなどの形式でAmazon S3に置く。これをAmazon Personalizeにかけることで、カスタマイズされたレコメンデーションAPIができる。

 また、機械学習のアルゴリズムもいくつか用意されている。「あるユーザーにおすすめのアイテムを推薦」「渡したアイテムリストをユーザーごとに並び替え」「あるアイテムに類似したアイテムを推定」といったユースケース(とその中のシチュエーション)ごとに適したアルゴリズムが選べる。

 こうしたアルゴリズムはAutoMLで自動選択でき、ハイパーパラメーターの調整も不要だと瀧澤氏は説明した。

Amazon Personalizeの概要
利用の流れ
機械学習のアルゴリズムもいくつか用意
Amazon Personalizeを利用する例

データを用意するだけで将来予測ができるAmazon Forecast

 続いて解説されたAmazon Forecastは、時系列データから将来を予測するサービスだ。例えば在庫管理や人員配置、財務予測、キャパシティ管理などで利用できるという。

 瀧澤氏によると、もともとAmazon自身が予測に取り組んでおり、2007年に機械学習を導入、さらに2015年に深層学習を導入して正確度を15倍向上したという。その技術を一般に提供するのがAmazon Forecastだ。

 ユーザーは履歴データを用意するだけで、機械学習モデルをトレーニングし、予測APIができる。

 予測値は、中心地となるP50(50%)のほか、ベストケースとワーストケースのP90(90%)とP10(10%)の計3種類が得られる。これについて瀧澤氏は「例えば自動発注のためであれば中央値でいいと思うが、通常は実ビジネスをしている人の判断によってリスクの取りかたが変わってくる。そのため、幅をもって提案している」と説明した。

 Amazon Forecastのグローバルでの採用企業として、韓国の運送業のCJ Logisticsや、米国のエネルギー会社のPSE(Puget Sound Energy)、米国の家具レンタルCasaOneの事例を瀧澤氏は紹介した。

Amazon自体の予測への取り組み
Amazon Forecastの概要
利用の流れ
グローバルでの採用事例

Amazon Forecastで演習回数を予測してサーバーリソースを最適化

 Amazon Forecastの国内での事例として、株式会社アイデミーの事例を、同社の竹原大智氏(執行役員 AI統括)が紹介した。

 アイデミーは、データサイエンスなどに特化したオンラインプログラミング学習サービス「Aidemy」を運営している。そのための学習支援や教材の開発のほか、企業の機械学習モデルの運用を支援するMLOps事業も行っている。

 AidemyではWebの演習画面で機械学習のコードを提出すると、サーバー(RUNサーバー)で実行されて、結果が返されるようになっている。そのため、演習回数に応じてRUNサーバーのリソースが必要となる。通常は大きめのリソースを用意しているが、需要に応じて動的に変更できればコストを最適化できると考えたという。

株式会社アイデミーの竹原大智氏(執行役員 AI統括)
予測回数をもとにリソースを動的に変更して最適化したい

 こうして演習回数を予測するために、Amazon Forecastを導入した。竹原氏によると、もともと自分たちでAmazon SageMaker(ユーザーが機械学習モデルを作るMLサービス)を使って開発しようと考えていたところ、ちょうどAmazon Forecastがリリースされたので採用したという。

 アイデミーで用意するのは、演習回数の履歴データ(CSVファイル)のみ。GUIコンソールでデータを投入したり、データサイエンティストが前処理したデータをPythonでAPIに流し込んだりする。結果も、GUIコンソールで確認したり、API経由で取得したりする。

 予測結果は前述のとおり、P10、P50、P90の3種類得られる。そのうちアイデミーでは、演習回数が予測を上回ると困るため、P90を採用した。

 Amazon Forecastのメリットとして竹原氏は、CSVファイルを用意するだけでよく、エンジニアやデータサイエンティストでなくても使えることを挙げた。また、AWSのその他サービスとの連携がしやすいこともメリットだという。費用については、自動でいろいろやってくれることから、高くつくことを想定していたが、実際には当初想定していた10分の1程度に抑えられたという。

 竹原氏は、今後やりたいこととして、演習回数以外の売上などの予測にも活用したいことを挙げた。また、演習回数の予測においても、精度を上げられるのであれば、その他の関連データを活用したいと語った。

Amazon Forecastで演習回数を予測
予測結果のうちP90を採用