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シスコ、共創拠点「Cisco Innovation Hub」を開設 衛星・宇宙関連のビジネス拡大狙う

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は18日、オープンイノベーションを目指す新たな共創拠点として、「Cisco Innovation Hub」を東京・日本橋室町に開設したと発表した。2020年12月末まで活動するという。

東京・日本橋室町に開設された「Cisco Innovation Hub」

 同社は、全世界12カ国14カ所のイノベーションセンターを展開しているが、今回の新拠点は主に、衛星・宇宙関連の事業機会の共創を目的としている。そのため、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)や、Space BDなどの宇宙ベンチャー企業のオフィスが入居する宇宙ビジネス拠点「X-NIHONBASHI」内に開設した。

宇宙ビジネス拠点「X-NIHONBASHI」
Cisco Innovation Hubが入居するビル

 異業種企業との協業を積極化し、新たな発想、知識、技術とのコラボレーションの可能性を探るとともに、衛星を利用して宇宙から届くデータを使って、地上の社会課題を解決するビジネスを創出するという。また、シスコがこれまで取り組んできた地上の人、モノ、コトをつなぐ活動を宇宙へと広げることで、さらなるイノベーションを模索するとした。

 シスコの鈴木和洋会長は、「シスコは、いまと、新たな未来をつなぐ架け橋になりたいと考えている。振り返ると1995年ごろは、インターネットを基幹ビジネスで利用することは不可能だと言われていたが、いまは企業の最重要システムで、当たり前のようにインターネットが使われている」と指摘。

 「20年以上前と同じように、今日現在は小さな可能性しかないようなものを、大きなビジネスにしていきたい。宇宙ビジネスは、政府の宇宙産業ビジョン2030で示されるように、将来の向けた日本の成長戦略のひとつに位置づけられている。業種を超えた共創によって、新たなマーケットを、新たなテクノロジーで、新たな人材を育成しながら、新たなビジネスとして創出したい」などと述べた。

シスコの鈴木和洋会長

 シスコでは、2003年に宇宙におけるインターネット通信を支援するなど、宇宙ビジネスにもかかわりを持っているという。さらに同社は、オープンな衛星プラットフォームであるTellusの開発と利用促進を行う25社の異業種アライアンス「xData Alliance」に、2019年2月から参加している。

 今回のCisco Innovation Hubでは、Tellusのデータや地上で収集したIoTのデータ、ソーシャルネットワークのデータを組み合わせることで、スマートシティや防災都市計画、環境問題対策などに生かすことを狙いたいとする。

シスコと宇宙ビジネス

 また、衛星データを活用した新規事業コンテスト「Innovation Challenge」を、2019年夏に開催。スタートアップ企業や大学、研究団体、大手企業、個人などの参加を募り、新たな事業創出につながるプロジェクトを発掘する。Innovation Challengeでは、アイデアハッカソン、プロジェクト化、サービス化およびショーケース化という3段階で事業創出につなげる考えだ。

 さらに、X-NIHONBASHIのインフラを活用して、スタートアップ企業などとのパートナーシップを拡大。共創による成功事例はイノベーションハブに展示するという。

 また、シスコのデジタルラーニングネットワークやデジタルスクールネットワーク、ネットワーキングアカデミーなどを活用することで、パートナー企業とともに、次世代人材育成も実施する。あわせて、宇宙飛行士訓練技術を活用したローバーミッション演習で実績を持つVAIOの「ミライ塾」とコラボレーションし、宇宙関連ビジネスを身近に感じられるプログラムの開発にも取り組み、制約のない学びとつながりの場を実現するとした。

 これら以外にも、イノベーションプログラムを随時実行し、パートナーとの協業促進や、ビジネス化に取り組むという。

Innovation Challengeでは3つのステップで事業創出につなげる考え

 シスコ イノベーションセンターの今井俊宏センター長は、「新たなパートナーと出会える機会を持ち、イノベーション活動のさらなる活性化とともに、新たな市場と新たな技術との接点を持つのが、イノベーションハブの役割となる。当面は、実験的な取り組みが中心となるが、イノベーションハブの成果を、イノベーションセンターを通じてビジネスにしくことも考えたい。イノベーション、ダイバーシティ、アイデアの具現化、未来への継承という4つのコンセプトで展開する」と述べた。

 あわせて、「これまでにも、オープンなイノベーションコンペティションの開催や、イノベーティブなスタートアップやアカデミアの誘致、イノベーションエコシステムの構築などを行ってきた。こうした経験を生かしたい。また、Innovation Challengeでは、さまざまなアイデアを期待している。例えば、衛星データを活用してイベントを発見し、熱中症予防のための情報をスマートウォッチに提供するなど、新たなアイデアとサービスの創出などを見込んでいる」とも話している。

シスコ イノベーションセンターの今井俊宏センター長

 一方、JAXA 新事業促進部長の岩本裕之氏は、「民間の宇宙ビジネスがさまざまな分野で急拡大しており、すでに数千個の衛星が民間企業によってビジネスに活用されている。JAXAでは、宇宙イノベーションパートナーシップであるJ-SPARCを展開。この1年間で150件の問い合わせがあり、19件のパートナーシップを締結している。X-NIHONBASHIを通じて、民間のパートナーとともに宇宙ビジネスのイノベーションを起こしたい」と語った。

 また、Space BD 衛星打ち上げ事業部長の桃尾一馬氏は、「宇宙商社をコンセプトに、さまざまな側面から事業開発を行ってきた。第1号の民間移転事業として、国際宇宙ステーションから衛星放出による打ち上げサービスを行っている」と同社の実績を説明。

JAXA 新事業促進部長の岩本裕之氏
Space BD 衛星打ち上げ事業部長 桃尾一馬氏

 さくらインターネット 執行役員の上田晋司氏は、「Tellusのプラットフォームは、さくらインターネットのデータセンターで運用されており、多くの人が、当社が提供するコンピューティング、ストレージ、ネットワークを活用して、Tellusのデータが利用できるようになっている。Tellusは、すでに8000人が利用しており、無料で、手軽に宇宙に関するデータを利用でき、さまざまな形でトライアル活用ができるようになっている。イノベーションハブは、データを活用し形にできる場にしてほしい」と紹介した。

 また、VAIO 執行役員の花里隆志氏は、「VAIOは、PCを開発、製造、量産する技術を活用して、アイデアはあるが製品化ができないといった企業を支援している。ミライ塾は、新たなビジネスのひとつであり、次世代のテクノロジーを活用する人材を育てることになる。このカリキュラムを活用して、イノベーションハブでの人材育成を進めたい。各社のテクノロジーとノウハウを活用することで、宇宙ビジネスに対するハードルを下げることができるだろう」などと語った。

さくらインターネット 執行役員の上田晋司氏
VAIO 執行役員 花里隆志氏
パートナーとの記念撮影も行われた