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富士通、ポスト「京」の製造を開始、商用機も2019年下期に販売開始

 富士通株式会社は15日、理化学研究所(以下、理研)と共同で、文部科学省が2021年から2022年ごろの共用開始を目指して進めている、スーパーコンピュータ「京」(以下、「京」)の後継機となるポスト「京」の設計を完了し、ポスト「京」のハードウェアを製造・出荷し、設置を進めることについて理研と正式契約を締結したと発表した。

 「京」は、2006年から富士通と理研が共同で開発し、2012年に完成、共用が開始された。スーパーコンピュータの実用面を示す主要な性能指標で現在でも世界トップクラスの性能を有し、先端的研究において不可欠な研究開発基盤として運用されている。

 ポスト「京」は、「京」の後継機として、さまざまな社会的・科学的課題を解決する先端研究開発基盤として、また、今後我が国が目指すべき未来社会の姿“Society 5.0”の実現を支える重要な基盤としても期待されていると説明。富士通では、2014年10月から理研とともにポスト「京」の基本設計を開始し、さまざまな分野のアプリケーション開発者と協調設計(コデザイン)を実施しつつ、システムの詳細設計・試作を進めてきた。

 2018年11月に開催された総合科学技術・イノベーション会議では、ポスト「京」の開発についての中間評価において、開発目標について達成の見通しが得られており、システムの設計結果に基づき製造・設置を着実に推進することが適当であると評価された。これを受け、富士通と理研では、ポスト「京」のハードウェアの製造を開始し、順次、出荷と設置を進めていくための正式契約を締結した。

 ポスト「京」のハードウェアの製造は、富士通のコンピュータシステムの基幹工場である株式会社富士通ITプロダクツで行い、現在「京」が設置されている理化学研究所計算科学研究センター(所在地:兵庫県神戸市)へ設置する。

 ポスト「京」は、富士通が開発したCPU「A64FX」を搭載し、Arm命令セットアーキテクチャーにより幅広いソフトウェアに対応する汎用性を持つほか、超並列、超低消費電力、メインフレームクラスの高い信頼性などを実現。また、富士通はハードウェアの開発・製造とソフトウェアの開発において、オープンソースコミュニティと連携して、Armエコシステムの推進、ポスト「京」でのオープンソースソフトウェアの活用、ポスト「京」で創出された成果の展開などを進めていくとしている。

 A64FXの命令セットアーキテクチャーはArmv8.2-A SVE、コア数は計算ノードが48コア+2アシスタントコア、IO兼計算ノードが48コア+4アシスタントコア、理論演算性能は2.7TFLOPS以上(倍精度)。ノードのアーキテクチャーは1CPU/ノード、メモリ容量が32GB(HBM2、4スタック)、メモリバンド幅が1024GB/s、インターコネクトがTofuインターコネクトD。ラックの最大ノード数は384ノード/ラック。ソフトウェアはOSがLinux、HPCミドルウェアがFUJITSU Software Technical Computing Suite後継。

 富士通では、ポスト「京」共用開始に向けて、システム開発と導入を推進していくとともに、ポスト「京」の開発を通じて培った技術を生かして、商用スーパーコンピュータの製品化を行い、「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX100」の後継機として、2019年度下期にグローバルに販売を開始する予定。さらに、より幅広く技術を展開するために、導入しやすいエントリーモデルの開発や他ベンダーへの供給なども検討するとしている。

 また、ポスト「京」開発への取り組みについては、5月17日に東京国際フォーラムで開催する「富士通フォーラム2019」で紹介する。