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ヴイエムウェア、クラウド管理製品をアップデート ハイブリッドクラウドもアプリケーションセントリックな時代へ――
2019年4月4日 06:00
ヴイエムウェア株式会社は3日、同社が提供するインストールベースのハイブリッドクラウド管理製品群「VMware vRealize」の機能強化を発表した。
今回のアップデートにおける最大のポイントは、vRealizeのコア製品である運用最適化ツール「VMware vRealize Operations」の自動化機能強化で、オンプレミスや複数のクラウドをまたいだ、ヘテロジニアスな環境下での継続的かつ計画的なリソース管理を実現している。
VMware vRealize製品群では現在、以下の製品が提供されている。
これらはいずれも個別で導入できるが、vRealize Operationsを中心に相互連携させることももちろん可能だ。
VMware vRealize Operations
クラウド管理プラットフォームのコア製品で、複数の環境にわたってインフラからアプリケーションまでをカバーし、自動運用管理とパフォーマンス最適化を行う
VMware vRealize Log Insight
物理サーバーやデータベースサーバなどあらゆるサーバーをカバーし、見やすく可視化されたログ監視/分析を提供
VMware vRealize Network Insight
マイクロセグメンテーションのプランニングやネットワークパフォーマンスの最適化など、ネットワークに特化した運用監視ツール
VMware vRealize Automation
サービスカタログからのサーバー/アプリケーション払い出しや、ファイアウォール/ロードバランサーのプループリントによる埋め込みなど、セルフサービスとデプロイ自動化を提供
VMware vRealize Business
クラウドのコストや使用量などを管理/分析し、プランニングの自動化を提供する課金管理ツール
VMware vRealize Suite Lifecycle Manager
vRealize製品群に含まれるツールのライフサイクルとコンテンツを継続的に管理し、効率的なアップグレードやDevOps対応を実現
VMware vRealize Code Stream
クラウドネイティブな次世代アプリ開発を意識した、ソフトウェアのリリース自動化と継続的デリバリを実現するツール
VMware Integreated OpenStack
OpenStack環境でvSphereの利用を可能にするツール
このうち、今回アップデートが発表されたのはvRealize Operations、vRealize Network Insight、vRealize Automation、vRealize Suite Lifecycle Managerの4つで、その中でもコア製品であるvRealize Operationsの自動化機能強化がメインとなっている。
vRealize Operationsの機能強化
今回、vRealize Operationsで新たに強化された部分は以下の通り。
What-If分析を用いたクラウド移行計画のシナリオ作成
What-If分析によるマルチクラウドのコスト比較をベースにしたクラウド移行のシナリオ作成/分析を実現。かなり細かい条件でもパラメータで設定が可能。対象となるクラウドはVMware Cloud on AWS、AWS、Azure、GCP、IBM Cloudだが、それ外のクラウドサービス(国産クラウド含む)でもExcelテンプレートによるカスタムシナリオを作成/解析することで実装できる
アプリケーション単位の監視
エンタープライズにおける次世代アプリケーション利用が急速に拡大したことを受け、個別のアプリごとにTelegrafエージェント(オープンソースのメトリクスコレクタ)を使った監視システムを実装。アプリケーションやインフラの問題の予測、防止、迅速なトラブルシューティングなどを可能にするほか、アプリケーションとインフラの関係をマッピングし、問題の特定にかかる時間を大幅に短縮する
ユーザー定義のカスタムコンプライアンス
HIPAAなど業界標準のコンプライアンスに加え、ユーザーが自身で定義したコンプライアンスが設定可能に
このほかのエンハンスメントとしては、vRealize Network InsightのKubernetesサポートおよびServiceNowとの連携による個別アプリケーション情報の取得、vRealize AutomationとVMware NSX Data Centerとの統合強化、vRealize Suite Lifecycle Managementのコンテンツ管理機能強化などが挙げられる。
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VMwareは現在、ハイブリッドクラウド管理プラットフォーム(CMP)のポートフォリオとして、大きく2つの製品群を展開している。ひとつは今回、機能強化を行ったvRealize製品群で、ユーザーが自分自身でソフトウェアをインストールし、オンプレミスを含む複数のクラウドを運用/管理する。
もうひとつはVMwareがSaaSとして提供するマネージドなクラウド管理サービスで、こちらは「VMware Cloud Services」として展開されている。
そしてこの2つとも、同じチームが製品開発にあたっている。つまり、ソフトウェアベースのCMPであるVMware vRealizeも、SaaSとしてのVMware Cloud Servicesも、機能拡張やそのリリース時期については大きな差が出ないように調整されている。
例えば、今回のアップデートの対象となったvRealize Network Insightは、SaaS提供のNetwork Insightとまったく同じコードを使用しており、機能的な差はない。
だがひとつだけ決定的な違いは、今回のアップデートの中心となったvRealize Operationsの存在だ。この製品はマネージドサービス提供であるVMware Cloud Servicesには当然だが存在しない。
こうしたハイブリッドクラウド管理プラットフォームに対するVMwareの方針について、ヴイエムウェア チーフストラテジスト(SDDC/Cloud) 高橋洋介氏は「将来的には両者(vRealizeとCloud Services)がひとつに統合されることも十分に考えられるが、現時点ではハイブリッドクラウドの管理/運用を自社で行いたいという顧客の要望が非常に強い」として、当面は2つのCMPラインを並行して展開する方針を示している。
その一方で、今回のvRealizeにおける機能強化は、全体的にアプリケーションセントリックなエンハンスを意識している印象が強い。インフラに適したアプリケーションを選ぶ時代から、アプリケーションに適したインフラをユーザー自身が選び、さらに標準機能の拡充だけではなくビジネスニーズに応じたカスタマイズのしやすさを重視する時代へと確実に推移ししているトレンドをVMwareが意識し、新たな機能として実装したことをうかがわせる。
モダンなアプリケーション環境を、パブリッククラウドに限らず、オンプレミスを含むあらゆる環境で実現する――。地味ではあるが、VMwareが提唱する「Any Cloud, Any Application, Any Device」をそのまま投影したアップデートといえるだろう。