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富士通がシンガポール海事港湾庁と船舶の衝突リスク予測技術の効果を検証、AIを用いて管制官を支援

 富士通株式会社は2日、シンガポール海事港湾庁(以下、MPA)の協力のもと、2018年4月より行ってきたシンガポール海峡の海上交通リスクを分析する実証実験において、船舶同士のニアミスを予測するAIを活用し、船舶の衝突リスク予測技術の有効性を検証したと発表した。

 世界的に交通量の多い航路では、海上交通を管理するセンターが、VTSシステムから出される船舶同士の異常接近を警告するアラートをもとに船舶への情報提供を行い、航行を支援している。しかし、船舶業務や、船舶とセンター間の意思疎通が複雑になるにつれ、特にシンガポールのような交通量の多い海域では、より高度に交通状況を分析し、船舶の動向を事前に検知・予測することが、衝突リスクを軽減する上で重要になってきているとのこと。

 こうした状況を受けて富士通と富士通研究所は、AI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を用いて、船舶衝突リスク検知および動的リスクホットスポット予測の技術を研究開発しており、MPAの海上交通管制部門と港湾システム部門の約10名の職員の協力のもと、2018年4月より実証実験を行ってきた。

 この実験では、富士通の衝突リスク予測技術を活用して、MPAから提供された過去のシンガポール海峡の交通データから、複数船舶の衝突やニアミスの事例と、動的リスクホットスポットの発生事例などの抽出を実施。それらが、MPAの管制官による危険の判断基準と照らし合わせ、一致しているかどうか確認することで、予測技術の精度を評価した。

 その結果、衝突リスク検知技術により、管制官がリスクを認知するより前に、そのリスクをより高精度に定量化できることが確認できたという。

 これにより、ニアミスの起こる10分前に、潜在的なリスクを検知し注意を促すことで、管制官が船舶への注意喚起などを実施するための5分ほどのリードタイムの確保が可能になったほか、人間が見落としがちな衝突リスクも正確に検知して警告できたとのこと。

衝突リスク検知の画面イメージ

 さらに、動的リスクホットスポット予測技術により、事象発生のおよそ15分前までにリスクを検知し、リスク回避に向けた具体的なアクションが可能なことも確認できたとした。

動的リスクホットスポット予測の画面イメージ

 富士通では今回の検証結果に基づき、さらなる技術の高度化をMPAと図る考え。そのうえで、2020年までに海上交通管制や運航船舶向けの安全航行支援ソリューションの提供を目指すとしている。