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セールスフォース、「Salesforce B2C Commerce」を強化 AIを駆使した機能を拡充

 株式会社セールスフォース・ドットコム(セールスフォース)は5日、Eコマースプラットフォーム「Salesforce Commerce Cloud」のコンシューマ向けソリューション「Salesforce B2C Commerce」に関して、機能強化に関する説明会を開催した。

 Commerce Cloudは、米Salesforce.comが2016年に買収したDemandwareの製品をベースとしたもの。今回の機能強化は米国にて1月に発表されており、AIを駆使した機能を拡充したほか、在庫管理機能や開発者向けの機能などが強化されている。

 変化する消費者ニーズに対応すべく、Salesforce Commerce Cloudは年間8~10回のバージョンアップによって継続的に機能を強化している。セールスフォース セールスエンジニアリング統括本部 デジタルマーケティング・ビジネスユニット シニアマネージャーの増田拓也氏は、「消費者の期待値に応えるため、Commerce Cloudも進化する必要がある。スピードを意識して機能を追加し、消費者体験を向上させている」と語る。

セールスフォース セールスエンジニアリング統括本部 デジタルマーケティング・ビジネスユニット シニアマネージャー 増田拓也氏
スピードを意識し、年間8~10回のバージョンアップを行うCommerce Cloud

 中でもセールスフォースが注力しているのは、EコマースにAIの技術を組み入れることだ。同社では2016年に、AIプラットフォーム「Salesforce Einstein」を発表しており、さまざまなサービスと同プラットフォームの統合を進めている。すでに、AIを駆使してパーソナライズされた商品を提案する機能や、消費者の購買動向を分析するダッシュボードなどにより、「購買体験のパーソナライズ化や業務の自動化を実現している」と増田氏は説明する。

今回の新機能について

 今回新たに加わった機能の中にもAIを駆使したものがある。そのひとつが「Einstein Visual Search」だ。増田氏によると、ミレニアル世代の62%が他の検索技術よりもビジュアル検索機能を求めているというが、同機能を利用すれば、テキストではなく画像をベースにした検索が可能となる。自分で撮影した写真はもちろん、InstagramなどSNS上の画像を使って商品を検索することも可能だ。同機能は現在パイロット版として提供されており、一般提供は2019年後半に開始する予定。

ビジュアル検索のデモ画面。左上の写真と似たジャケットが検索結果に並んでいる

 AIを活用したもうひとつの新機能が「Einstein Recommendations API」だ。オンラインでの売上の26%は商品レコメンデーションによるものとされており、いまやレコメンデーションはEコマースに欠かせない機能。Einstein Recommendations APIは、Einsteinによる商品のレコメンデーションを、Eコマースサイトのみならず、店舗の接客用デバイスなどにも実装できるようにするものだ。コールセンターでも商品レコメンデーションを活用してクロスセルやアップセルの機会が創出できるなど、サービスエンゲージメントの強化にもつながるという。Einstein Recommendations APIは現在ベータ版として提供されている。

 さまざまなチャネルの在庫をリアルタイムに管理できる「High-scale Inventory Availability Service」も、新たに加わった機能となる。数百万におよぶ品目数の在庫管理が可能で、「例えばフラッシュセールやホリデーシーズンといった繁忙期で、1分間に100万トランザクションが発生しても柔軟に対応可能」(増田氏)だという。また、ECサイトの在庫のみならず、店舗の在庫もスピーディーに確認できる仕組みを提供するとのこと。High-Scale Inventory Availability Serviceは、2019年前半にパイロット版の提供を予定しており、国内では2019年度中の提供予定となっている。

 開発者向けの機能も拡充した。「On-demand Developer Sandboxes」は、サンドボックスを数分で構築できる機能だ。これにより、ビルド、テスト、デプロイ、インテグレーションの時間が短縮できるという。同機能は現在ベータ版で提供されており、2019年後半に一般提供を開始する予定だ。

 さらに、「Commerce API Explorer」は、すべてのコマースAPIに直接アクセスできるUIを提供するほか、サンドボックス環境と統合された形でAPIコードの検証が可能になるという。この機能はすでに提供を開始している。

 セールスフォース 執行役員 Commerce Cloud担当の竹内賢佑氏は、「商取引は消費者が商品をショッピングカートに入れた段階で始まるわけではない。企業は消費者に対し、正しいタイミングで適切な購買体験を提供する必要がある」と主張。ただし、変化する消費者ニーズに遅れることなく対応することは困難なため、「Salesforce B2C Commerceを活用してより良い顧客体験を迅速に提供してもらいたい」とした。

セールスフォース・ドットコム 執行役員 Commerce Cloud 竹内賢佑氏