ニュース

AWSがデータベースのクラウド移行支援策を説明、住信SBIネット銀行の事例紹介も

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社(AWS)は5日、企業システムで使われるデータベースをAWS環境へ移行する支援策について、記者説明会を開催した。

 その中で、住信SBIネット銀行株式会社が、AWSのマネージドベースであるAmazon Auroraに移行している事例が紹介された。

「書き換えコストは大きいが、3年でコストメリットが上回る」

 住信SBIネット銀行では、2017年から2020年にかけて全面的なクラウド移行を進めていると、同社の相川真一氏(システム開発第2部 部長)は説明した。

 現在AWSに移行作業中のシステムとしては3つ。インターネットバンキングシステムが2020年3月に、事務処理システムが2019年10月に、外貨システムが2019年12月に、それぞれ稼働開始する予定だ。

 このうち、インターネットバンキングと事務処理システムでは、オンプレミスのOracle Database Enterprise Editionから、AWSのAmazon Aurora PostgreSQLへと移行する。

住信SBIネット銀行株式会社の相川真一氏(システム開発第2部 部長)
2017年から2020年にかけて全面的にクラウド移行

 中でも、規模の大きいインターネットバンキングシステムにおいてAmazon Aurora PostgreSQLを採用した理由を、Oracle Databaseと比較して性能、可用性、拡張性、コストの4点から相川氏は説明した。

 性能においては、ピーク時のスループットが50%向上可能ということを検証した。これは実際に環境を作り、ログインして振り込みを実行してログアウトする、といったシナリオで比較したという。

 可用性においては、障害時に30秒程度でレプリカノードに切り替え完了する点を評価した。拡張性では、64TBまで自動拡張するうえ、処理力が必要なときにはスケールアップが可能となる。

 コストについては、83%程度のランニングコスト低減が可能という。「ただし、書き換えコストは結構かかる。それでも3年程度でコストメリットが上回ると試算した」と相川氏。

インターネットバンキングシステムでAmazon Aurora PostgreSQLをOracle Databaseと比較

 より細かい評価・検討ポイントとしては、まずOracle代替機能について充足を確認。SQLの互換性については、AWS Schema Conversion Tool(SCT)で62%を自動変換可能だが、ストアドプロシージャなどは難しく、自動変換した部分にも修正が必要だったという。

 可用性については、前述のとおり30秒程度でレプリカノードに切り替え完了することを検証。運用性については、AWSの機能を組み合わせて対応するほか、エンタープライズサポートを契約した。性能検証では、既存システムの1.5倍の性能を検証した。

 また、移行にはAWS Database Migration Service(DMS)を利用する。ただし、移行中は移行元のシステムの性能劣化が発生するために、移行元を災害対策用レプリカノードにすることで解決するという。

予備評価での評価・検証ポイント

 インターネットバンキングシステムのデータベースの移行スケジュールとしては、2017年第4四半期から2018年第1四半期に予備検討。2018年第3~4四半期に要件定義し、2018年第4四半期から基盤構築に入っているという。

インターネットバンキングシステムの移行スケジュール

「クラウドへの移行コストよりオンプレミスの維持運用コストが大きくなってきた」

 AWSの安田俊彦氏(事業開発本部 本部長)は、こうしたデータベース移行で使われるサービスについて解説した。

 安田氏は「これまで既存システムで使っている商用データベースについては、維持コストより移行コストが大きいと考えられてきた」と説明したうえで、「数年前まではそうだったが、その判断が逆転しはじめた」と語った。

 その理由として安田氏は、データ量の増大にともない、オンプレミス上でのライセンス料、保守サポート費用、ハードウェアの追加購入費用、延長保守費用などの維持コストが増大することを挙げた。

 さらに分析や機械学習など、他システムとの連携やデータ再利用などのニーズもある。

AWSの安田俊彦氏(事業開発本部 本部長)
クラウドへの移行コストよりオンプレミスの維持運用コストが大きくなってきた

 こうしたニーズに対して、AWSではいくつかのマネージドデータベースサービスを提供している。その中でも、住信SBIネット銀行で採用されたAmazon Aurora PostgreSQL(Amazon Aurora with PostgreSQL Compatibility)は、商用データベースを利用していたユーザーになじみのある機能を搭載しているという。

Amazon Aurora PostgreSQL(Amazon Aurora with PostgreSQL Compatibility)

 データベースの移行支援サービスもある。住信SBIネット銀行で採用された「AWS Database Migration Service(DMS)」と「AWS Schema Conversion Tool(SCT)」も、そうしたサービスだ。

 DMSは、マネージド型のデータベース移行サービス。オンラインでの継続的レプリケーションに対応し、最小限のダウンタイムで移行を実現する。移行元としては、各種RDBMSのほか、NoSQLやAmazon S3などにも対応する。安田氏は、DMSを使って11万インスタンス以上のデータベースが移行を完了したと語った。

データベース移行サービスのDatabase Migration Service(DMS)

 SCTは、データベースのスキーマやビュー、ストアドプロシージャ、関数を調べ、何割が自動変換できるか、問題になる点はどこかなどを診断し、自動変換も実行する。同時に、移行で問題になる一般的なポイントをガイダンスする文書「Database Migration Workbook」も用意している。

AWS Schema Conversion Tool(SCT)
Database Migration Workbook

 そのほか、エンジニアが企業におもむいてシステムを棚卸しする「Database Freedom Workshop」や、各種パートナープログラムについても安田氏は紹介した。

Database Freedom Workshop
パートナープログラム:AWS MSP(マネージドサービスプログラム)パートナー
パートナープログラム:移行コンピテンシー
パートナープログラム:Oracleコンピテンシー