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キヤノンMJグループ、「西東京データセンター」2880ラック規模の新棟を2020年に稼働

データセンターを中核としたITインフラサービス事業を強化

「西東京データセンター」新棟完成イメージ

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)とキヤノンITソリューションズ株式会社(以下、キヤノンITS)は19日、「西東京データセンター」新棟の建設を3月1日より開始し、2020年夏のサービス稼働開始を目指すと発表した。

 キヤノンMJグループではこれにより、データセンターを中核としたITインフラサービス事業をさらに強化し、データセンターサービスやクラウドサービス、システム運用サービスなどのストック型ITサービス事業を拡大していくとしている。

 西東京データセンターの新棟は、階数が地下2階~地上3階、延べ床面積が1万7107平方メートル、ラック数が2880ラック、受電能力が25MVA、CPU室床耐荷重が1.5t/㎡、電力・通信回線引き込みが2系統。

 2012年10月に開業した既存棟と比較して、建物の規模や延べ床面積などはほぼ同等となるが、効率を追求したレイアウト設計と最新設備の採用により面積あたりの能力を向上。ラック数は既存棟の1.25倍、受電能力は1.7倍を実現する。また、BCP用途の需要に対応するため、BCPオフィスフロアも既存棟の666㎡から1500㎡と2.3倍に拡大する。

 西東京データセンターは、日本データセンター協会が定めた建物の堅牢性やセキュリティレベルを示す基準の中で、最高ランクのティア4に準拠。災害・障害発生を想定したさまざまなシナリオに沿った訓練を毎週実施しており、米国の民間団体「Uptime Institute」が定めているデータセンターの運営品質に関するグローバル基準である「M&O認証」も、国内データセンターとして2社目に取得するなど、第三者機関が証明するグローバル基準の運営品質を新棟においても提供するとしている。

新棟の概要
既存棟から面積あたりの能力を向上
「M&O認証」などの運用品質を新棟でも提供

データセンター、クラウド、システム運用サービスなどストック型ITサービス事業を拡大

キヤノンMJ取締役常務執行役員兼キヤノンITS代表取締役社長の足立正親氏(右)と、キヤノンITS取締役常務執行役員の笹部幸博氏(左)

 キヤノンMJ取締役常務執行役員エンタープライズビジネスユニット長でキヤノンITS代表取締役社長の足立正親氏は、2018年~2021年の国内IT市場の見通しについて、国内ITソリューション市場は年平均2%増、データセンターは年平均8.5%増を見込んでいると説明。企業が他社に先んじるための「攻めのIT」は伸びるとして、その核となるのがAIなどの需要に支えられるデータセンターになるとした。

 さまざまな顧客企業の経営課題としては、大手企業から中堅・中小企業まで、業務におけるあらゆる領域でのデジタル対応が急務になっているとして、大手企業に対しては、顧客と共創するサービス提供型モデルの強化、受託開発モデルからSIコア・パッケージSIの増加による生産性向上など、顧客と創るデジタルビジネス領域を強化していくとした。

 一方、中堅・中小企業に対しては、IT専任者の不在をカバーする課題解決型提案や、オフサイト・オンサイトを組み合わせた保守・運用サービスなど、顧客のIT活用のパートナーとなる「ITコンシェルジュ」を目指していくと説明。大手企業、中堅・中小企業の双方に対して、SIサービス、ITインフラサービス、業務パッケージソリューション、IT保守サービス、セキュリティ、BPOなど、幅広いITソリューション領域で、顧客の課題解決へ全方位で対応していくとした。

 キヤノンMJグループではITソリューション事業全体の売上高を、2018年実績の1977億円から2025年までに3000億円まで引き上げる計画で、このうちこのうちデータセンターサービスやクラウドサービス、システム運用サービスなどのストック型ITサービス事業を、2018年実績で30%の売上比率から、2025年までに40%の売上高1200億円への拡大を目指すと語った。

国内IT市場の見通し
データセンター、クラウドなどストック型ITサービス事業の比率を高めていく

 キヤノンITS取締役常務執行役員の笹部幸博氏は、国内データセンターサービスの需要について、メガクラウド事業者を中心とするクラウド系サービスの需要が急速に伸びる一方、従来からの非クラウド系サービスも重要データの処理・保管ニーズなどにより堅調に推移するという予測を紹介。キヤノンITSでもデータセンターを確認、クラウドビジネスの拡大と、メガクラウドへの対応を図っていくとした。

 西東京データセンターについては、金融・製造・流通などの顧客からは、ハウジング・クラウドなど充実したインフラの選択肢や、システム開発・運用・保守までワンストップでの提供、沖縄データセンターと組み合わせたDRサイトの構築が容易である点などが評価されているという。

 一方、クラウド事業者からは、高負荷・高密度の機器に対応する設備能力・耐荷重、電力・通信回線の2系統引き込みなどが評価されているという。また、高いセキュリティ、ティア4準拠、M&O認証、都心から約20kmの立地で通信回線の遅延が少ないといった点が、共通して評価されていると説明。こうしたことから、開設から約6年を経てほぼ満床のめどが立ってきたことから、新棟の建設に至ったとした。

キヤノンITSが提供するデータセンターサービス
顧客企業の選定理由

 キヤノンITSおよびグループ企業が提供するクラウドサービスとしては、IaaSサービスの「SOLTAGE」はインフラだけの提供でなく、システム開発・構築や運用サービスなど、アウトソーシングと合わせて提供していくことでビジネスを拡大していくと説明。SaaSサービスについては、働き方改革・業務効率化、イメージング、金融、医療など、キヤノンMJグループの強みを生かした新規サービスの拡充を図っていくとしている。

 実際の案件としては、大手商社のリスク管理システムのクラウド移行について、属人的システム運用からの脱却や、セキュリティガイドラインの順守といった課題に対して、アプリケーションの再開発やオンサイト監査への対応など、顧客ニーズにアジャスト可能なクラウドであるSOLTAGEと100システム以上のクラウド移行実績により、顧客業務への影響を最小限に抑えたアウトソーシングを実現したと説明。今後はこうしたITアウトソーシングを、セミオーダー型にしていくなどして、提供範囲を中堅企業へと拡大していくとした。

 また、顔認証技術や画像認識技術、手書き文字認識技術、言語処理技術、数理技術といった、キヤノンITSの技術とAIから生み出される各種サービスを、西東京データセンターを中核として提供していくと説明。こうした各種の技術と、業界・業種に特化したソリューション、インフラ基盤となる西東京データセンターの組み合わせにより、顧客のデジタルビジネスの実現を強力にサポートしていくとした。

キヤノンITSとグループ企業が提供するクラウドサービス
大手商社リスク管理システムのアウトソーシングの事例
ITアウトソーシングの提供範囲を中堅企業にも拡大
ITインフラビジネスの今後の展望