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早急にWindows 10移行計画を立案し着実に執行するべき――、IDC Japan

Windows 7延長サポート終了に向けた取り組み推進を訴える

 IDC Japan株式会社は8日、国内法人市場におけるWindows 10への以降状況に関する調査結果を発表。2020年上期におけるWindows 10の稼働PCの比率は51.5%にとどまると予測した。Windows 7の延長サポートは2020年1月に終了することになるが、約半分のPCが古いOSを搭載したままになる。

 IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの浅野浩寿氏は、「Windows 7の延長サポート終了に対する認識はあるが、Windows 10への移行が遅れているのが実態である。Windows 10への移行率が低いのは、現時点で移行計画がない、もしくは移行計画の詳細を決めていない企業が多いため。早急にWindows 10への移行計画を立案し、それを着実に執行することが重要になる」と指摘する。

IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの浅野浩寿氏

 また、「Windows XPの延長サポート終了時のように、極端なピークが生まれることはないだろうが、2019年までに需要が集中すれば、2020年には品薄があると考えている。Windows 10への移行が着実に進むかどうかは、2018年次第である」と警笛を鳴らした。

 また、2019年10月に予定されている消費税の増税については、「中堅・中小企業の買い換え促進に影響があるだろう。例えば15万円のノートPCでは、1台あたり3000円ほど消費税があがることになる。企業側で、これが100台単位になったときの影響をどう考えるかに影響されることになる」などと述べた。

861社の法人を対象にOSの切り替え計画などを調査

 今回の調査は、2017年9月に、Windows 7の延長サポート終了に向けた認識度や、企業のPCをどのようにWindows 10に切り替えを行うかを、861社の法人を対象に調査。それをもとに分析を行っている。

 これによると、Windows 7の延長サポート終了について認識している企業は76.7%となり、特に従業員500人以上の大企業では、83.2%の企業が認識していることがわかった。

 だが一方で、中堅・中小企業での認識率は69.8%にとどまっており、「利用されているPC全体の約45%を中堅・中小企業が占めている。業種別では建築・土木など、中堅・中小企業の比率が高い業種で認識が遅れている。中堅・中小企業のIT予算は、業績に左右され変動幅が大きいことから、認識を早めに高める必要がある」とした。

 Windows XPの延長サポート終了時に課題となった自治体や学校などの公共分野では、認識率は79.7%となり、約8割が認識している結果になっている。

Windows 7サポート終了の認知度

 また、Windows 10への移行計画がある企業は40.6%で、Windows 10に移行済みと回答した企業とあわせると55.2%になった。

 同社では、2016年秋にも同様の調査を実施しており、その時点では38.2%であったことに比べると、大きく上昇している。しかし中堅・中小企業では49.1%と半数に達しておらず、移行計画がないと回答した企業が17.6%に達していることを課題として指摘した。

 ただし49.1%のうち、Windows 10への移行済みとしている企業が19.6%ともっとも多く、「中堅・中小企業ではOSに依存することなく、最新のPCを導入する傾向が高い」と分析した。

 公共分野においては、「移行計画があるが詳細は不明」とした回答が34.2%となり、約3分の1を占めていることを問題視した。

Windows 10への移行計画の有無

 補足情報として同社では、「国内のPCメーカーに聞くと、法人向けPCの出荷台数のうち、2017年春では約55%がWindows 10であったが、夏以降は急激に比率が高まっており、2017年10~12月期では、75~78%にまで上がっている」と語った。

 Windows XPの延長サポート終了時には、終了3年前にWindows XP搭載モデルの販売が終了しており、Windows 7の出荷比率は90%以上になっていたという。

Windows 10への移行時期は?

 また、Windows 10への移行時期については、大企業では、2018年上期および2019年上期に移行を予定している企業が多く、「これらが計画通りに進むことが想定されている」とコメント。

 公共では2018年に移行を予定しているとの回答が多かったが、延長サポート終了後の2020年下期に約2割が移行を予定していることを指摘。「これはWindows XPの延長サポート終了時と同じ状況にある。延長サポート終了後もそのまま使えるという認識があり、移行は後でもいいと考えているところがある。これは一部の大手企業でも見られている状況だ。公共においては、国の指導により前倒しになる可能性が高い」とした。なお、中堅中小企業では大きな山は見られないという。

Windows 10への移行計画の実施時期

 一方、Windows 10への切り替え予定がある企業に限定した場合、2019年時点(Windows 7の延長サポート終了1年前)におけるWindows 10搭載PCの稼働比率は、82.3%に達すると予測した。

 2016年秋の調査では65.4%であったことに比べると約17ポイント上昇しており、「プロモーションの成果もあり、順調に進んでいる。企業におけるWindows 7の延長サポート終了に対する認知度が高まり、具体的な切り替え計画を策定する企業が増加したことが要因」と分析した。特に大企業では、前回調査と比較して22.5ポイント増加して、85.2%になっている。

前回の調査と比べ、Windows 10への切り替えを計画している企業は着実に増えている

 だが、Windows 10への切り替え予定がある企業におけるWindows 10搭載PCの構成比は2017年上期に20.1%であり、延長サポート終了直前の2019年下期では49.3%、2020年上期でも51.5%と半数を超えたレベルにとどまると予測した。

 「移行計画があるが詳細が不明」と回答した企業が、720万台にあたる20.9%、「移行計画がない」とした回答が350万台にあたる10.2%、「わからない」とした企業が310万台にあたる9.0%に達していることがその背景にあるという。

Windows 10搭載PCの構成比は2010年上半期でも51.5%にとどまるという

 浅野氏は、「国内法人市場全体では、3400万台のPCが稼働していると見られるが、これだけWindows 10の稼働比率が低いのは、非常にまずい状況である」と指摘。

 「『移行計画の詳細が不明』とした企業の計画をもっと具体化させ、2020年上期までに完了させる必要がある。新たなOSの環境における動作検証も必要だが、まずはカスタマイズしたソフトウェアから検証していくことを勧める」と述べた。

 また、「延長サポート終了後は、セキュリティの面でも課題が生まれることになり、その点をもっと訴求する必要がある。また、日本の企業はOS依存としているケースが多く、Windows 10が自動的にアップデートされてしまうという点に対してちゅうちょする企業もある。日本の企業は、それに対する意識を変える時期に入ってきたともいえる」と、意識改革を訴えた。

 さらに要望として、「Windows XPの延長サポート終了時に、総務省から新たな環境への移行を促す発言が行われたのがサポート終了の半年前。これでは間に合わない。今年から、総務省側から何かしらの発言をしてもらう必要がある」と述べた。

 「日本マイクロソフトやPCベンダーが移行プロモーションを2年前から開始しており、この先に効果が出てくることを期待している」。