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大塚商会の2018年度中間決算、過去最高の売上高3898億円 市場変化に合わせ変化の必要性も明言
2018年8月2日 00:00
株式会社大塚商会は1日、平成30年度(2018年12月期) 単独・連結の中間決算を発表した。売上高は前年同期比9.0%増の3898億6300万円、営業利益は同1.3%増の271億7800万円、経常利益は同1.8%増の278億6800万円、親会社株主に帰属する純利益(以下、純利益)は同1.3%増の187億9100万円となった。
代表取締役社長の大塚裕司氏は、「売上、利益ともに過去最高を実現したものの、利益については計画未達となった。未達に心苦しく感じるところはあるが、過去最高の業績を実現できた点は前向きに考えたい」と、成果に手応えを感じていることを明らかにした。
その一方で、長年重点商材となってきた複写機販売が前年割れとなるなど、市場の変化が如実になっていることから、「今までのマネジメントが通用しなくなってきている。市場とともにマネジメントも変わっていかなければならない」と、変化が必要であるとも明言した。
なお、今年度の通期見通しは前回発表の通り、売上高は前年比4.2%増の7200億円、営業利益は同6.6%増の473億円、経常利益は同5.6%増の480億円、当期純利益は同1.0%増の318億8000万円のまま。変更は行わない。
大塚社長は、「まず9期連続の増収増益実現達成を目指したい」と話した。
複写機の販売台数不足により経常利益は伸び悩む
単体業績は、売上高は前年同期比8.7%増の3531億7200万円、営業利益は同1.4%減の240億5400万円、経常利益は同0.1%増の253億8600万円、四半期純利益は同0.4%増の175億4300万円。
連結セグメント別売上高は、システムインテグレーション事業が、前年同期比11.7%増の2419億8100万円、サービス&サポート事業は同5.0%増の1478億8100万円。
単体の詳細セグメント別売上高は、SI関連商品が1833億3000万円、受託ソフト等が233億3400万円、サプライが751億9600万円、保守等が713億1100万円。
売上高の四半期推移、経常利益の四半期推移に対し大塚社長は、「売上高はともかく、経常利益を棒グラフ化すると第一四半期がほぼ前年から横ばいとなっていることが一目瞭然(りょうぜん)。要因は複写機の販売台数不足により、報奨金が減少した影響が大きい」と複写機の販売不振が大きな影響を与えていると言及した。
詳細セグメント別売上高増減率の四半期推移で見ると、SI関連製品はハードウェアが2けた伸長となるなど高い伸びとなっている。複写機は販売不振であるものの、「複写機保守は伸びている。販売ダウンを保守ビジネスでカバーしている」と保守ビジネスは好調だと説明した。
重点戦略事業の状況
重点戦略事業の状況としては、たのめーるが前年同期比3.6%増の802億9800万円、SMILEが同8.5%増の64億5800万円、ODS(大塚ドキュメントソリューション)は同1.9%減の314億7900万円、OSM(大塚セキュリティマネジメント)が同6.0%増の368億4200万円。
ODSのみがマイナスとなっているが、「複写機とのセット提案となる商材であり、ハードウェア不振の影響で売上が伸び悩んでいる」という。
ハードウェア販売については、複写機が前年同期比8.5%減の2万3274台で、うちカラー複写機が同7.1%減の2万2553台。サーバーは同2.5%増の1万6428台、パソコンが同29.0%増の56万1599台、パソコン含むクライアント合計では同29%増の58万4637台。
パソコンの販売台数が大きく伸長しているが、「大企業需要が拡大していることが影響している。JEITAのデータに比較してもかなり高い水準。Windows XPの二巡目の需要、Windows 10商談の本格化などが影響している。Windows 7のサポート終了まではまだ時間があるので、XPの時のような本体販売だけに追われるのではなく、きちんとソリューションを追加提案できるようなビジネスを進めていく体制を作っていく」と好調さ維持とともに、ほかの商材とセットでの提案を強化する意向をアピールした。
一方、前年割れとなっている複写機については、市場全体が落ち込みムードにあることに影響されているものの、「やはりソリューション提案が不十分だと感じている」と提案内容をソリューション型に転換していくことの必要性を強調した。
また複写機市場の今後の見通しについて、「オフィスの中から複写機がなくなってしまうことはあり得ない。現在はどのメーカーの製品も厳しい市場にあるが、3年おきの買い換えサイクルで需要が出てくる時期は再びある」との見方を示した。
たのめーるについては、「伸長率が改善している。Webに掲載している商材は57万件で、オフィス向け商材だけでなく、介護用商品、工具など多様な商材をそろえて幅広いニーズに対応していることが強みとなっている。今年10月に、たのめーる誕生20年となることから、キャンペーン開催も予定している」という。
主なWebサービスの利用人数推移としては、2018年6月時点で224万人。大塚商会では他社のようにクラウドサービスではなく、Webサービスとしてサービスを提供しているが、「半年で利用者は13万人増加し、前年比では21万人増加している。利用人数からすれば、そこそこのWeb企業といえるのではないか」とWebサービス提供会社としても順調にビジネスが拡大していると強調した。
Microsoft Azureなどクラウドの提供も行っているものの、「独自サービスを提供することが重要だと考えている。クラウドのライセンス販売数を大きく増やしていくことは本流ではない」と独自サービス中心にビジネスを行っていく。
ビジネスの中で重視しているストックビジネスについては、今年度上半期のストックビジネス売上は1390億円。2005年当時の年間売上に匹敵する規模で、収益に大きく貢献している。
下半期の見通し
下半期市場の見通しは、「下半期も生産性向上、コスト削減、人手不足への対応などは続いていく。また、1年前は現実感がなかったAI、IoTも実現性あるものとしてとらえられるようになってきている」と変化していると指摘する。
その中で下半期も、「オールフロントでソリューションを生かし、信頼に応える」という方針のもと、「地域営業部主体の運営で現場力・お客さま接点の強化」、「お客さまとの取引品目を拡大、クロスセル」「働き方改革を推進、支援」「AI、IoTなどを取り組み強化」「ソリューション提案のさらなる強化」「物流体制の強化」を、取り組む施策として挙げている。
物流体制については、リコーと共同出資で新会社を設立。たのめーる事業の拡大など、さらに物流の重要性が増す中で体制を整えている。
複写機、パソコンの販売台数推移については、「複写機は第2四半期を底として上昇に転じることを狙う。好調なパソコンはさらに販売を強化すると共に、幅広い商材を持っていることを強みとして複合提案を進める」と説明した。
大塚商会自身もRPA、チャットボットを社内に導入し活用を進めてきたが、「自社事例を活用して、お客さまに働き方改革提案を行う。省人化につながるチャットボットサービスは、月額15万円からでIBM Watsonを利用することができる。自動化のRPAサービスは導入支援が必須となるが、月額10万円程度から利用していただくことができる」とユーザー向け販売を本格スタートする。
こうした新しい施策を行うものの、売上高、利益計画は期初通り変更しない。これは「9期連続で増収増益を実現させることを最優先する」とともに、複数のAIの活用、新しいユーザー管理など大塚商会内部での新しい取り組みを進めていることも要因となっている。
7月に複合提案を行うことを推進する部署として、「複合ソリューション推進室」を新設。顧客への提案が単品提案から複合提案とすることを定着させるなどビジネスを変えていくことを進めていく。