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ヴイエムウェアが2017年度の戦略を発表、国内市場の“クロスクラウド”推進を本格化
2017年2月27日 06:00
米VMwareの日本法人であるヴイエムウェア株式会社は24日、報道関係者向けに2017年度のビジネス戦略説明会を開催。日本市場における2017年度の注力分野について、同社代表取締役社長 ジョン・ロバートソン氏が発表を行った。
NSXとvCANが国内で好調
ロバートソン社長は、日本市場における2016年度の振り返りとして「米国に次ぐ世界第2位の売上を記録する市場に成長。成長率だけなら米国の2倍以上」と語り、日本がグローバルのなかでもとりわけ高い成長を遂げている点を強調する。
日本市場で好調なソリューションとしては、NSX(ネットワーク仮想化)、vCAN(パートナー提供のパブリッククラウド)、EUC(エンドユーザコンピューティング)、vSAN(ストレージ仮想化)などが挙げられるが、ロバートソン社長はその中でも「NSX、そしてvCANが非常に伸びている。これは日本ならではの特徴」と指摘する。
NSXは比較的新しいソリューションにもかかわらず、国内でもすでに200社以上が導入しているが、特筆すべきは「リピーターが多い」という点だ。最初の導入でネットワーク仮想化がもたらすメリットの大きさを知り、二度目三度目のエンハンスを希望する顧客が多いという。
また日本ではパートナー経由での提供のみとなるパブリッククラウドのvCAN(旧称:vClaud Air)が好調な理由については、「SIerビジネスが強いという他国にはない日本市場の独自性が反映されている」(ロバートソン社長)と説明する。これらのコメントにあらわれているように、「日本固有のクラウドニーズへの対応」に注力したことで高い成長を実現したといえる。
VMwareは2016年8月、米国ラスベガスで開催された年次カンファレンス「VMworld 2016」において、複数のパブリッククラウドからプライベートクラウドまで、あらゆるクラウド環境を横串で連携させる「VMware Cross-Cloud Architechture」構想を発表した。
これに伴い、同社のパブリッククラウドとして提供してきたvCloud Airについては北米市場を除き、パートナー企業から提供するvCloud Air Network(vCAN)に全世界で切り替えていく戦略を取っている。
また10月には、パブリッククラウド最大手のAWS(Amazon Web Services)との提携を発表、vSphereベースの仮想環境をAWSクラウド経由でネイティブに利用できる「VMware Cloud on AWS」を提供することを明らかにし、世界中のクラウド関係者を驚かせた。
こうしたグローバルの動きと日本市場ローカルの事情を受け、ヴイエムウェアはどんな方針でもって2017年度に臨むのか。ロバートソン社長は「(日本の顧客から)求められているビジネス成果」を3点挙げており、それにひもづく「戦略的なITの優先事項」を提供していくとしている。
・すぐれたモバイルの使用感 … セキュリティの高いデジタルワークスペースの実現
・ビジネス俊敏性と革新性 … データセンターの刷新
・ブランドと顧客からの信頼の維持 … パブリッククラウドとの統合
ここで鍵となるのは、やはり同社の“クロスクラウド”戦略だ。ロバートソン社長は「数年前までは“パブリッククラウドvsプライベートクラウド”といった対立構造で語られがちだったが、現在はそういう状況ではない。VMwareにとってパブリッククラウドはいまや重要なチャネル。日本市場においてもそれは同様で、AWSやAzure、IBMといったメガクラウドだけではく、IIJやニフティ、NTTコム、富士通といったクラウドベンダとの提携を強化していきたい」としている。
前述の通り、日本市場ではネットワーク仮想化のNSXやストレージ仮想化のvSANが好調だが、プライベートクラウド向けのソリューションとしてだけではなく、「パブリッククラウドベンダがNSXやvSANを“自社の顧客に提供したいサービス”として位置づけられるようにしたい」(ロバートソン社長)と、パブリッククラウドベンダーとのパートナーシップを強めていく意向を明らかにしている。むしろパブリッククラウドベンダーは単なるパートナーというよりも、同社にとって最も重要な顧客となる可能性が高いといえる。
「日本の顧客にとって“運用で何かあったときに迅速に対応してくれる”というのは非常に重要な要件。クラウドにおいてもそれは同様で、単に導入コストが安いというだけでは使い続けてもらえない。私見だが、そういうレベルのサポート、とくにミッションクリティカルな部分に関しては、外資系のメガクラウドより国内のパブリッククラウドベンダーのほうがきめ細やかなのではないか。VMwareのメガクラウド戦略を国内で推進していくためにも、こうしたパブリッククラウドベンダーとの提携強化は欠かせない」(ロバートソン社長)。
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周知のとおり、VMwareの親会社だった旧EMCは2016年にDellと統合し、VMwareはDellグループの傘下となっている。だが、こうしたグループ編成に変化があっても「VMwareのインデペンデンス(独立性)はそのまま保たれている」とロバートソン社長は強調する。
Dellグループの総帥であるマイケル・デル氏と年に1、2回、面談するというロバートソン社長は「マイケルから“日本のVMwareの顧客を支援するために、Dellができることはあるか”と聞かれるが、いつも“何もしてもらわなくても大丈夫”と答えている」という。
日本法人のヴイエムウェアとして、すでに多くのパートナーと揺るぎないエコシステムを構築してきた自信と実績に裏打ちされた発言であり、たとえDellのグループ企業であっても「(Dellという)パートナー企業がより強いパートナーになったというだけ」(ロバートソン社長)」というのが現場の正直な感覚なのだろう。
今後もグループ内での独立性を維持し続けていくためにも、国内パートナー企業、わけてもパブリッククラウドベンダーとのパートナーシップ強化は、2017年度の同社にとって重要なテーマであることは間違いなさそうだ。