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初心に帰って日本のイノベーションに貢献する――、SASの堀田社長が2018年度の経営戦略を発表 SAS Viyaのアップデートも

 SAS Institute Japan(以下、SASジャパン)は1月25日、2018年度のビジネス戦略についてSASジャパン 代表取締役社長 堀田徹哉氏が報道陣向けに説明を行った。

 2015年10月に日本法人社長に就任して以来、3回目となる年初の戦略説明会となった堀田社長は、「社長となってから2年4カ月が過ぎたが、ここで初心に帰って、あらためて4つのテーマ――、AI/IoT、SASエコシステム、人材育成、働きがいにフォーカスし、日本全体のイノベーションに貢献していきたい」と2018年の抱負を表明している。

 また、会見では「SAS 9.4」と並ぶ主力製品「SAS Viya 3.3」の新機能についてのデモも行われ、アナリティクスおよびAI/IoT分野におけるリーディング企業としての存在感を、Viyaを通じて強めていく姿勢を見せている。

SASジャパン 代表取締役社長 堀田徹哉氏

日本法人はすべての指標において2ケタ成長を達成

 堀田社長はまず2017年度の総括として、日本法人はすべての指標において2ケタ成長を達成したことを報告。「日本法人の成長がアジアおよびグローバルの成長をけん引した。特に保険や証券といったメガバンク以外の金融業、デジタルトランスフォーメーションが進む製造業やリテール業の成長が大きかった。製造業に限れば、グローバルでは日本が米国に次いで世界第2位のビジネス規模」と、好調だった1年を振り返っている。

 堀田社長はさらに、2015年10月の社長就任時に掲げた4つの経営戦略を再掲し、2017年においてそれぞれの項目でどう成長したかについても触れている。

堀田社長が2015年10月の就任時に掲げた4つの経営戦略。2018年も「初心に帰って」この戦略に沿ってビジネスを展開する
AI/IoTの実装

構想/実験段階から実装/効果創出段階に入り、意思決定のフェーズでリアルタイムなアナリティクスへのニーズが拡大した

SASエコシステムの強化

顧客同士がつながるコミュニティの活性化により、SASユーザーであることの価値を提供、SASパートナーの連携強化

アカデミー連携、人材育成

大学における教育支援や画像認識/音声データを用いた、医療現場への踏み込んだ支援、大学やユーザー企業と連携したデータサイエンティスト育成プログラムの強化

働きがい、GPTW(Good Place to Work)推進

SASジャパンのポテンシャルを最大化するためのさらなるGPTW改革

初心に帰り4つのテーマを深く掘り下げる

 こうした前年度の成果を踏まえ、SASジャパンの2018年注力分野について堀田社長は「社長就任時の初心に帰り、この4つのテーマを深く掘り下げていきたい。その上で2018年度は3つの注力分野を設けるが、これまでの戦略と大きく異なることはない」とし、以下の3つのテーマを挙げている。

Growth(SASジャパンの成長)

インダストリに特化したプリセールスを設けるなどインダストリ×4コアソリューション(リスクマネジメント、不正検知、カスタマインテリジェンス、データマネジメント)の強化、新たな領域(AI/IoT、SAS Viya、中堅企業向けビジネスなど)への投資

Relationship(顧客/パートナーとのエコシステム)

顧客満足度のさらなる追求、パートナーとの連携強化およびリレーション深化

Secure The Future(社会を良くするための活動)

SAS Viyaによるイノベーションの促進、AIブランディングの強化、アナリティクスによる社会貢献やデータサイエンス人材育成、GPTWの推進

 これらの注力分野はSASがグローバルで展開する柱でもあり、日本市場においても同じ戦略をローカライズしたかたちで実践していくことになる。

2018年のSASジャパンの注力分野。基本的にはグローバルと同じ戦略にのっとっている

SAS Viyaでホワイトスペースを開拓

 中でも特に注目したいのは、AIエンジンであるSAS Viyaによる「ホワイトスペースの開拓」(堀田社長)だといえる。

 SASは現在、AIにおけるブランディングを強化しており、「SASがAI業界におけるど真ん中のプレイヤーであるという認識を自他ともに広げていく必要がある」と、堀田社長はあらためて強調している。そのためにはこれまでSASジャパンが攻めきれていなかった分野、例えば中堅企業や西日本などへの“ホワイトスペース”を開拓することが求められており、こうした新たな投資を勢いづける存在がSAS Viyaとなる。

 「SAS Viyaによって日本に多くのイノベーションを起こしたい。ここ1、2年のAIの普及で、AIやIoTは大企業だけのソリューションではなく、中堅企業にとってもビジネスを大きく成長させるエンジンだということがわかってきた。今後、アナリティクスは中堅企業が大きな市場になるのは間違いない。SASにとってのホワイトスペースだったこうした領域にもSAS Viyaでもって積極的に攻め込んでいきたい。また中堅企業や地方との関係性を強めるにはパートナーの力が欠かせない。パートナー重視のエコシステム拡大により値kらを入れていく」(堀田社長)。

 会見では2017年12月にリリースされた「SAS Viya 3.3」の概要について、SASジャパン ソリューション統括本部ビジネス開発グループ 小林泉氏が説明、主なアップデートとして以下の3つを挙げている。

・ディープラーニング機能の追加、学習済みモデルのリアルタイムエンジンへのデプロイなど、アナリティクスライフサイクルにおけるAIケイパビリティの拡張
・3クリックで高精度な予測モデリングを可能にするGUIの拡張
・オープンソースライブラリ(D3.js、C3、Google Chart Toolsなど)との連携によるビジュアライゼーションの拡張

 ここで注目されるのは、簡単でビジュアライズされた操作でありながら、深層学習(ディープラーニング)を含む高精度なアルゴリズムを用いたモデリングが可能である点だ。

 データサイエンス人材の不足は業界のあらゆるところで指摘されているが、SAS Viyaはビジネスユーザーでも予測モデルを構築し、プログラミングすることなくデプロイすることを実現する。例えばクレジットカードの審査モデルなどを、過去のローン返済状況などと相関させ、簡単かつ高い精度でプロダクションレベルのモデルを構築/デプロイすることが可能となる。

 「一連のアナリティクスライフサイクルをシングルインターフェイスで実現できるのがSAS Viyaの最大の強み」と小林氏は強調するが、ワンタッチで作成したモデルをリアルタイムエンジンを含むどこにでもデプロイできることは、大企業はもちろんのこと、IT人材が常に不足する中堅企業などにも大きなメリットに映るはずだ。

 「SASにとってのオープンとは“誰でも使える”ということ。そしてSAS Viyaは開発者はもちろんのこと、ビジネスユーザーでも使える環境であり、どのインターフェイス(ビジュアル/プログラミング)を用いても誰もが同じ結果を得られるオープンなAIエンジン」(小林氏)。

「SAS Visual Analytics」に組み込まれたSAS Viya 3.3によるモデリングのデモ。ビジュアライズされたインターフェイスにより、ビジネスユーザーでもモデリングが可能に。なおViyaは単体の製品ではないため、SASの各ソフトウェアと連携して利用する

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 「マーケットの成長よりも(SASジャパンが)大きな成長を遂げるのは基本だと思っている。2ケタ成長をクリアするのは義務」――。

 堀田社長は会見の最後、自分自身のミッションをこう締めくくっている。拡張を続けるアナリティクス市場において"ど真ん中のプレイヤー"としてSASの存在感を示すためには、SAS Viyaを中心としたビジネスをどれだけ国内で広げられるかがカギになりそうだ。