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富士通、組み立てラインにおける部品のピッキング作業を効率化するソフト「ストアピッキング」を販売開始

 富士通株式会社は29日、ノートパソコンやタブレットを製造している株式会社島根富士通で培った、工場の組み立てラインにおける部品のピッキング作業の改善ノウハウを実装したソフトウェア「FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA Service ストアピッキング(以下、ストアピッキング)」の販売を開始した。

 ストアピッキングは、倉庫の部品棚(ストア)から運び出した部品を製品の組み立てラインへ供給するピッキング作業において作業指示をデジタル化することで、部品のピッキング・供給ミスを大幅に削減し、ものづくり全体の生産性向上とコスト削減を実現するソフトウェア。

 島根富士通では、1製品ごとに仕様が異なる多品種少量生産へ対応するために、複数の製品の組み立てを1つのラインで行う混流生産を行っている。倉庫の部品棚から製品に必要となる部品をカートで運び出して組み立てラインへ供給するピッキング作業において、従来、作業者は紙に印刷した作業指示書を基に、目視で対象部品を確認しながら各部品棚から部品を回収していた。

 そのため、対象部品を探し出す時間がかかっていたほか、部品の取り間違えや指示書の読み間違いなどにより適切なピッキングが行われず、その後の組み立て工程で製品が正しく組み上がらずにラインが停止するなど、生産性の改善が求められていた。

 そこで、島根富士通では組み立てラインへの適切な部品供給を実現するために、独自の技術でピッキング作業をデジタル化する仕組みを開発。その仕組みを生かして約2年間の社内実践を行ったところ、ピッキング作業や組み立てラインへの部品供給におけるミスの約70%、部品棚との往復時間などのピッキング作業工数の約15%を削減したほか、デジタル化したことで紙のピッキング指示書が不要となったという。

 ストアピッキングは、これらの島根富士通での実践で培われたノウハウや、ピッキング作業の中核機能であるアプリケーション群をパッケージ化したもの。

 ストアピッキングでは、部品をピッキングするための作業指示を事前にCSVファイル形式で作成して業務システム内に保持し、ソフトウェアをインストールしたタブレットをピッキング部品を載せるカートに装着する。作業者は、無線LAN経由でタブレットの画面に表示されたピッキング指示データを見て、どの部品棚にどの部品を取りに行けばよいかをすぐに把握できる。

 ピッキング指示は製品の組み立ての順番に応じて任意に設定できるため、作業者は画面に表示される順番に部品をピッキングし、そのまま製品の組み立てラインへ流すだけで、適切な部品供給が行える。これにより、部品供給のミスや組み立て工程におけるミスを軽減できる。また、島根富士通で実践している混流生産にも、複数製品のピッキング指示を組み立て工程ごとに作成することで対応できる。

 ソフトウェアはRFIDリーダーによるピッキングに対応しており、部品棚に番地や部品番号を示す棚札としてRFIDタグを搭載したカードを設置することで、一般的なデジタル表示器のように電源や配線を必要とせずに、各部品の所在を示すことができる。作業者は、腕に装着するウェアラブル端末で部品棚のカードを読み取ることで、両手を使ったスムーズな部品のピッキングを行える。

 また、誤った部品をピッキングした場合は、ウェアラブル端末のバイブレーションや警告音、カートに装着したタブレットの画面点滅などで直感的にエラーを作業者に通知することで、作業者の判断に依存しない、ミスの少ないピッキング作業を実現する。

 タブレットのピッキング指示画面に表示する項目名称やメッセージは、テキストファイル形式で外部辞書として登録できる。これにより、画面の改修をすることなく、標準の画面項目名称を実際に業務で使用している用語に簡単に置き換えられる。外部辞書はタブレットごとに保持するため、タブレットを使用する作業者ごとに画面項目名称を変更できる。

 富士通では、ストアピッキングに加えて、ものづくり統合支援サービス「ものづくりエキスパートサービス」を合わせて利用することで、顧客の工場内における物の流れを考慮した部品棚のレイアウトや、作業者の動線を分析し、改善を提案することで、顧客のものづくり革新の実現を支援していくと説明。

 今後は、2次元バーコードへの対応および工程管理システムや倉庫管理システムとの連携インターフェイスの実装など、さらなる機能の充実を図るとともに、ソフトウェアの汎用性を高めることで、製造業だけでなく集荷・配膳業務におけるフロントエンド製品として、さまざまな現場でのピッキング作業効率化を支援するとしている。

 ストアピッキングの価格は47万円(税別)。富士通では2019年度末までに60社への販売を目標とする。