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デジタルトランスフォーメーションに本腰――、NECが関連ソリューションや体制を強化

 日本電気株式会社(以下、NEC)は8日、AIやIoTなどのICTを用いて、企業・産業の事業活動や都市運営などを変革する「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation:DX)」を加速させるため、製品開発および提供体制を強化すると発表した。

 NECの執行役員兼CMO 榎本亮氏は、NECが考えるDXについて、「何らかの価値を実世界に返すこと。企業・産業、都市、人に活力を生み出すのがDXの本質ではないか」と説明。「社会の変革を実践するためには、まずはNEC自らがやってみて、実証されたものをお客さまへ提供することが重要」とも述べ、社内での活用事例に触れた。

NECの執行役員兼CMO 榎本亮氏

 例えば営業・マーケティング業務では、担当者が保有する顧客リストをAIによって絞り込んだところ、抽出精度がこれまでの4倍になったとのことで、「お客さま自身ですら気が付いていないかもしれない、潜在的なニーズをとらえることが可能になっている」とする。

 また設計・開発業務では、プロジェクトの進ちょくが25%の時点において、80%の精度で品質予測が可能になった。「一般には、プロジェクトが50%の段階になれば(品質が)わかるというが、当社では25%の時点で察知して、早めに手が打てるようになった。これによって、お客さまの満足度を高められる」という。

営業・マーケティング変革の事例
設計・開発の変革事例

DXを実現する4つの新ソリューション

 同社は、こうした経験を生かして、先進的なAI技術を「NEC the WISE」というブランドで体系化。顧客にさまざまな価値を提供してきた。同社では、このNEC the WISEを活用するDXソリューションを、「業種アプリケーション」「共通アプリケーション」と、それらを支えるプラットフォーム「NEC the WISE IoT Platform」として体系化した。また、こうしたプラットフォームをパートナー向けに展開するほか、人材育成も本格的に取り組む。

NECのDXソリューション

 今回より提供開始するサービス・ソリューションは全部で4つ。そのうち2つは業種アプリケーション領域で、1つ目は、集客施設(商業・娯楽施設)向けの価値向上ソリューション。店舗/商業施設やホテル、スタジアム、テーマパークなどの集客施設において、施設・イベントの運者向けに適切な施策立案を支援する。具体的には、顧客の属性データや購買情報、施設内の画像情報、天候情報などを収集・一元化し、NECのAI「異種混合学習技術」により、来場者や売上、需要などの予測を高精度に実現するという。

 2つ目の「鉄道オペレーション&メンテナンスソリューション」では、AI「テキスト含意認識」により鉄道オペレーションを機械学習し、最適な作業順序と復旧までの時間を提示するなどして、短時間で正確な判断を求められる作業を支援するとした。さらに、鉄道設備データを異種混合学習や「インバリアント分析」といったAIで解析し、将来状態の予測や設備劣化に至る要因を提示する。

集客施設の価値向上を支援
鉄道オペレーション&メンテナンスソリューション

 またプラットフォーム領域では、AI学習プラットフォーム「NEC Advanced Analytics Cloud with 異種混合学習」を提供する。これは、AI活用において、スキルの異なるプロフェッショナルが協働できるクラウドサービス。榎本氏は、「AIに対しては期待感はあるが、どの業務やプロセスに適用すればいいのかがわかりにくい。であるから、まずはクラウドで小さく利用開始できるよう支援するのがこのサービス」と説明する。

 「どういうデータをお持ちか、これからはどういうデータを集めるか、外部のどんなデータと組み合わせると効果が高いか、といったことを議論して、データサイエンティストがお客さまと一緒に議論して適用領域を考え、モデル化して検証する。また、検証済みのものを本番環境へ移行、効果が出れば全社へ展開する、といった支援が可能だ」とした。

 最後の「NEC 映像分析基盤」もプラットフォーム領域のソリューション。複合的な映像分析のソリューション提供を迅速に行うで、まずはオンプレミスで提供し、2018年度中にクラウドサービスも提供するとのこと。

 榎本氏は、「映像分析は、最適な映像認識エンジンを選択し、それに基づいた分析をして、始めて価値が生まれる。このソリューションでは、目的に合わせ、当社の実績を生かしたテンプレートを用意しており、それに基づいた分析を可能にしている」と述べた。

NEC Advanced Analytics Cloud with 異種混合学習
NEC 映像分析基盤

DXを実現する体制の強化

 パートナー向けには、「AI・IoTビジネス共創コミュニティ」を準備し、共同で顧客のDXを支援していく考え。現在、210社との共創をスタートしているという。

 また、DXの実現に向けたビジネスモデルの仮説立案、先進技術の活用検証、高度なデータ分析などを行う専門要員を、2018年度中にグループ全体で1000人まで拡充する。

 さらには、アーキテクト・SE・ソフトウェア開発者・営業・運用/保守担当者など、顧客のDXにかかわるNEC内のさまざまな人材、約1万7000人を対象として今年度中に教育プログラムを実施。順次、NECグループ内に展開するとした。

人材の強化