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ソフトバンク、RPAを利用した業務改革ソリューション「SyncRoid」
自社活用で月間9000時間分の業務効率改善を実現
2017年10月20日 12:19
ソフトバンク株式会社は19日、RPAホールディングス株式会社と協業し、RPA(Robotic Process Automation:ソフトウェアロボットによる業務自動化)ソリューション「SyncRoid(シンクロイド)」を11月より提供すると発表した。
SyncRoidは、RPAホールディングスの子会社であるRPAテクノロジーズとソフトバンクが共同開発したRPAソリューション。これまでロボットを使った業務改革は、工場など、ブルーカラーの生産性向上のために活用されてきたが、RPAは事務作業を担当するホワイトカラーの業務改善を目指している。
RPAホールディングスはRPAが一般化する前、2008年からこの分野のソリューションの提供を開始しており、「ガートナーの『Cool Vendors in Business&IT Services,2017』にも選出され、国内でNo.1のRPAカンパニーと自負している」(RPAテクノロジーズ 代表取締役社長 大角暢之氏)とこの分野でのビジネスを展開してきた。
ソフトバンクは社内でSyncRoidを導入し、業務効率向上のための実践を行った結果、9000時間の作業時間効率化を実現した。事業スタート後はこうしたノウハウ込みでユーザーに提供していく。
ソフトバンクの代表取締役副社長兼COO、今井康之氏は、「社内で働き方改革をどう進めていくのかと検討する中、現場メンバーから『ここは作業が大変』といった声が上がっていた部分からRPA導入を図り、効率化を実現している。この実践を踏まえて他社に紹介すると、皆さんの反応がとても良い。これは、当社同様に困っていた部分があるからこその反応ではないか。10月13日付けでRPAホールディングスに資本出資も行っており、一緒になって日本でのRPA普及を進めていきたい」と話した。
SyncRoidは、RPAテクノロジーズのRPAソリューション「BizRobo!」をベースに、ソフトバンクがRPAを導入して獲得したノウハウなどを入れ込み開発された。スモールスタートしたいというユーザー向けには、1ユーザーからの利用可能で、開発者を1人ずつ養成する「ライトパック」を、1ライセンスあたり年間90万円で提供する。
一方、当初から本格導入を目指すユーザー向けに、複数ユーザーが同時利用可能で、開発者を複数人同時養成することが可能な「ベーシックパック」を、10ライセンス月額60万円で提供する。
またソフトバンクでは、RPAのツールだけでなく、社内に定着させるための人材育成も含めた支援サービスを用意しており、Eラーニング形式で、汎用的なスキル学習や、ユーザー社内でのロボット開発者育成などを支援する「導入トレーニング」、RPAの特徴・特性を理解し、自動化すべき業務のアイデア出しについて、その方法を把握した上で、開発手順書作成方法の習得などを目指す「導入支援ワークショップ」、オンサイトによる集合型のロボット開発者向け研修およびワークショップを提供する「開発スキルトレーニング」などをラインアップした。
ソフトバンク社内で先行して業務改善にRPAを利用
なおソフトバンクでは、前述したように、RPA製品を提供する前に自社へRPAテクノロジーズのBizRobo!など複数製品を導入し、実際に社内の業務改善を行った。
ソフトバンク 法人事業統括 プロセスマネジメント本部 副本部長兼RPA推進室 室長の上永吉聡志氏は、「BizRobo!だけでなく、3~4製品を試しているが、実際に利用してみて、直感的に使えることと、バックオフィスアプリケーションに対応した作りとなっている点をBizRobo!の良さだと感じた」と説明する。
RPAを導入する場合には、業務改善を推進するキーマンとなる、自社向けの開発担当スタッフが必要となるが、ソフトバンクは26部門で導入し、152人の開発者を育成したという。が開発できる人材となっている。
「当初は2~3部門からスタートし、まずは業務改善プロジェクトのリーダーとなる変革請負人を育てた。こうしてリーダーがRPAを習得すると、そこから各部門に横展開できる。3~4カ月かけて、3回から4回、一連の作業を経験すると人材が育つ。実際に社内に導入して体感することが重要で、当社でも利用しながら152人の開発者を育成した」(上永吉氏)。
ソフトバンクでは、IBM Watsonを導入してAIを使った業務改善を行っているが、今回はWatsonとRPAを組み合わせ、型番指定の簡易的な見積書作成に利用した実例を紹介した。Watsonが見積もり依頼メールを読み取り、RPAで見積書を自動作成する仕組み。RPA導入の結果、これまでは15分かかっていた見積書作成までの時間が3秒に短縮され、顧客に見積書メールが届くスピードが大幅に短縮されたことで、高い評価を得た。
また、この仕組みをPepperに組み込むことにより、店頭で商品を購入する来店客が、自分が欲しい商品のバーコードをPepperから読み込み、店頭およびECの中から、欲しい色やサイズの商品があるのかをデータベースから検索できるようになった。さらに、検索した商品の関連商品、例えばアパレルショップであれば商品に適したコーディネートを紹介し、ほかの商品購入をうながす、といったアピールも行えるという。
「検索抽出、集計、登録といった単純作業はロボットが代行することで、人間はより付加価値の高い労働に注力することができるようになる。当社の場合、60人のスタッフが単純作業から開放された。月間で9000時間分の業務効率改善が実現している。現在は定型業務の改善だが、将来的には非定型業務の改善、その先にはビッグデータベースの高度な自律化を目指していく」(上永吉氏)。
なお、RPAとAIの違いとしては、「AIは人間でいう脳であり耳の役割。脳や耳が感じ取ったものを、これまで手作業でバックオフィス業務改善してきたが、この手作業を代行するのがRPA」だと説明する。AIで分析した結果をもとに、改善のための実践を行っていくのがRPAの役割となる。
RPAホールディングスは2000年に創業し、当初は大企業向けコンサルティング業務を社業としていた。「10年前、当時はロボットといえば工場のFAという時代に、ホワイトカラーの業務を代行するためのロボットを目指し、BizRobo!の名称でサービスを開始した。30年前にPC、20年前にインターネット、10年前にスマートフォンが登場し、世の中のビジョンを大きく変えた。これからの10年はRPAが広く普及し、使われるツールになると考えている」(RPAホールディングス 代表取締役の高橋知道氏)。
またRPAテクノロジーズの大角氏は、「ホワイトカラーの仕事の47%がRPAに置き換わり、全世界で700兆円、日本で70兆円の市場規模があるが、人口が減少する中で生産性を維持するためには必須となる技術」だと、RPAをアピールしていた。