カスペルスキー氏「IntelによるMcAfee買収はハッピーだ」


Eugene Kaspersky氏

 露Kaspersky Labは9月23日、ドイツのミュンヘンで報道関係者向けイベント「Kaspersky Lab Oktoberfest Press Tour 2010」を開催。CEOを務めるEugene Kaspersky(ユージン・カスペルスキー)氏にサイバー犯罪の最新の傾向やIntelによるMcAfee買収による影響などについて聞いた。

――金銭目的のサイバー犯罪が増えていると言われて久しいが、最近のサイバー犯罪の傾向に変化があるのか。

カスペルスキー氏:大きな変化はないが、年々「組織化」「分業化」が進んでいる状況だ。アイデアを考案する集団を頂点として、ウイルスの開発、ボットネットの構築、個人情報の収集などを行う集団があり、それぞれがプロフェッショナル化している。

――サイバー犯罪によって詐取された個人情報が売買されるアンダーグラウンド市場の規模はどれくらいなのか。一部では違法ドラッグ市場を上回ると指摘されているが。

カスペルスキー氏:サイバー犯罪者集団は、一般の企業のように決算レポートを提出しないので正確な市場規模はわからない。ただし、最近では金融機関を標的としたサイバー攻撃も多く、サイバー犯罪で盗んだ個人情報を使ってATMから預金を不正に引き出すなど、ネット上だけで犯罪が完結しないケースもある。こうしたことから、サイバー犯罪が違法ドラッグよりも市場規模が大きいとしても不思議ではないだろう。

――スマートフォンやタブレットPCが普及しているが、これらのデバイスがサイバー犯罪の標的になっていくのか。

カスペルスキー氏:PCは、オンラインバンキングやオンライントレード、オンラインゲームなど、サイバー犯罪者の標的となるサービスが豊富だ。今後、スマートフォンやタブレットPCなどでもこれらのサービスが頻繁に使われるようになれば、当然サイバー犯罪者も狙ってくるだろう。利用者の多いWindows OSが狙われる傾向があるのと同じで、利用者が多ければ標的になるということだ。

――IntelによるMcAfee買収が、Kasperskyもしくはセキュリティ業界に与える影響は?

カスペルスキー氏:今回の買収には2つの側面がある。まず良い点としては、チップメーカーのIntelによる買収により、今後はハードウェアを考慮した新世代のセキュリティが出てくる可能性があるということ。これはセキュリティ業界にとって喜ばしいことだ。

 一方、悪い点としては、McAfeeが今後ハードウェアセキュリティに力を入れるようになることで、McAfeeはエンドポイント側のセキュリティ製品のシェアが落ちるだろうということだ。そのシェアを我々が獲得できれば“ハッピー”だが(笑)。

――ハードウェアを考慮したセキュリティとは具体的にどのようなものか。Kasperskyもそのような製品を提供する考えはあるのか。

カスペルスキー氏:当事者ではないので、ハードウェアを考慮したセキュリティについては言及できない。また、我々はソフトウェアの専門家であり、今後もソフトウェアに焦点を当てていくことになるだろう。

――サイバー犯罪に対抗するために、セキュリティソフトはどのように進化すると考えているか。

カスペルスキー氏:我々の最新製品「Kaspersky Internet Security 2011」(KIS 2011)でも実現しているが、新たな脅威に対しては既存の技術の組み合わせで対抗していくことになるだろう。

 KIS 2011にはウイルス定義ファイルもあれば、ヒューリスティック検知やサンドボックス技術、バーチャルキーボードなどを提供している。クルマに例えるとわかりやすいが、ABSなどの最新技術が出てきても、ブレーキやシートベルトのような既存の技術がなくならないのと同じだ。

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