【Citrix iForum 2012】マーク・テンプルトンCEOが6年ぶりの来日基調講演、自社製品を一気に紹介


 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(以下、シトリックス)は、7月17日・18日の2日間、東京・芝公園のザ・プリンスパークタワー東京で、Citrix iForum 2012 Japanを開催している。

 「ビジネスに機動力を-拡がるクラウドサービス、加速するモバイルワークスタイル-」をテーマに、モバイルワークスタイルやクラウドサービスに関する98のブレイクアウトセッションのほか、最新技術、最新製品を一堂に展示。ユーザー企業のCIO、IT部門責任者、経営層、システムインテグレータやオンラインサービス事業者など、約4000人が事前登録しているという。

 初日の午前10時から行われた基調講演では、米Citrixのマーク・テンプルトン プレジデント兼CEOが講演。日本での講演は実に6年ぶりとなった。


米Citrix システムズ プレジデント兼CEOのマーク・テンプルトン氏

 

講演は“ジョブズスタイル”で

荷物が届かずジョブズスタイルのブルージーンズで講演したテンプルトン氏

 テンプルトン氏は、冒頭、「当初予定していた飛行機がキャンセルになり、昨日ようやく成田に着いたが、荷物が届かない。そのため、今日は、ブルージーンズとシャツで講演する。スティーブ・ジョブズスタイルになる」と切り出し、会場を沸かせた。

 テンプルトン氏は、今回の講演において、どこでも仕事ができる「モバイルワークスタイル」、どこでもサービスができる「クラウドサービス」に関して触れるとし、「いまは、VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)の時代であり、さらに、VUUCAの時代ともいえる。VUUCAの間の2つのUUはUnusually Uncertainを意味する。不確実な時代において、われわれはそれに反応していかなくてはならない。そのためには刷新が必要である」と切り出した。

 Citrixでは、仕事の変化として、Life-Slicingという動きがあるという。モバイルデバイスやクラウドなどを活用することで、仕事と生活の時間が細分化されて相互に訪れ、生活と仕事がシームレスになるという。そして、仕事と生活の時間的および物理的な距離が最短距離になることで生産性があがるとし、「Citrixでは、Life-Slicingにおいて、仕事と生活をつなぐ部分に焦点を当ていいくことになる」と、テンプルトン氏は語った。


VUCA(Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguity)とVUUCA。2つのUははUnusually Uncertainだという左が従来のワークスタイル、右がLife-Slicing

 また、「これからのクラウド時代は、かつてのPCの時代には常識ではなかったモビリティの利用や私物デバイスの利用、Appサービスやクラウドサービスの活用、ワイヤレス環境を前提としなくてはならない」と語り、「かつてはWindowsだけにフォーカスしていればよかったが、HTML5、iOS、Androidにもネイティブに対応できなくてはならない。こうしたワークの刷新、技術環境の刷新は、ビジネスの刷新へとつながる」と語った。

 そして、モバイルワークスタイルにおいては、人とデータ、アプリケーションを結びつけることが重要な要素になると語り、それらを実現するCitrixの製品群として、世界ナンバー2のオンラインコラボレーションサービスとする「GoToMeeting」や、複数のデバイスを超えてデータの同期を図ることができる「ShareFile」のほか、「Citrix Receiver」、「CloudGateway2」などに関して、ビデオやデモンストレーションを交えてその機能を紹介した。


iPadを利用してCitrix Receiver、CloudGateway2などのデモストレーションを行う

 

“世界ナンバーワン”の仮想デスクトップ

 続けてXenDesktopについて紹介。「XenDesktopは、世界ナンバーワンの仮想デスクトップであり、フォーチュン100社のほとんどが採用し、これらの企業でのライセンス数は1万以上に達する。また、エコシステムが拡大していることも大きな要素である」としながら、XenDesktopにおいて最も重要な機能と位置づける「FlexCast」や、新たに提供した「XenDesktop with Remote PC technology」を紹介。「RemotePCによって、XenDesktopが大きく進化することになる」などと語った。

 また、HDXについては、Citrix Synergy 2012で発表した内容を踏襲。HDX 3D Proによる特徴や、HDXとCitrix Receiverを結びつけることによってRemotePCとして活用できる様子などを、デモンストレーションを通じて紹介。ここでは、HDX ReadyシンクライアントであるN Computingのクライアントなどを活用した。


XenDesktopが世界ナンバーワンの仮想デスクトップと強調Citrix Receiverの特徴

 

Amazonスタイルのクラウドを体験できるクラウド製品を

 講演から1時間を経過したところで、テンプルトン氏は、クラウドサービスについて言及した。

 「クラウドのオーケストレーションが求められており、ハイパフォーマンスで、セキュアな接続を実現しながらに、プライベートクラウドとパブリッククラウドがシームレスになり、すべてのクラウドがプライベートクラウドの延長線上に置かれることになる」などと語り、Citrix CloudBridge2について、さらにはCloudStackに関して触れた。

 テンプルトン氏は、これらの製品をAmazon.comが利用し、10億ドル以上の売り上げをあげていることや、CloudStackをApache Software Foundationに寄贈したことなどを紹介。「Apache Software Foundationには、60以上のベンダー、3万人のコミュニティベンダー、毎月100以上のクラウドサービスが増加している。Citrixは、Apache Software Foundationのナンバーワンのコントリビュータとしての活動を続ける一方、コマーシャルインプリメンテーションとして、Citrix CloudPlatformを投入する。これを今日から提供し、多くの方々にAmazonスタイルのクラウドを体験してもらうことができるようになる」とした。


Citrix CloudBridge2の特徴CloudStackはApache Software Foundationに寄贈され、Apache CloudStackへその商用版がCitrix CloudPlatformだ

 さらに、Citrix Synergy 2012で発表したProject Avalonについても触れた。

 テンプルトン氏は、「Project Avalonは、新たなXenDesktopとXenAppが利用でき、より簡単に管理、セットアップが可能になること、そして最大のポイントはCloudStackを提供するである。さらにCloud-Style service Orchestrationを提供することで、既存のXenDesktopの資産などをそのまま維持しながら、Cloud-Style service Orchestrationを通じて新たなクラウド環境へと進化させることができる。また、マルチデバイス、マルチテナントに対応し、自動的にプロビジョニングすることもできる。あらゆるプライベートクラウド、パブリッククラウドに対してマイグレーションが可能であり、オープンなクラウドスタイルのAPIがある。2012年秋にベータ版を提供する」などと語った。

 続けてテンプルトン氏は、Citrix NetScalerの最新版であるCitrix NetScaler10について紹介。「世界最大のWeb検索サイトやeコマースサイト、入札サイト、エンターテイメントサイトなどで利用されている世界ナンバーワンのインターネットデリバリーシステムがCitrix NetScaler。最新版では、TriScaleテクノロジーを採用しており、スケールアップではソフトウェアによってキャパシティを最大5倍に、スケールインでは40:1のインスタンス環境を実現、スケールアウトではAdd&Goの技術によって、32台のデバイスをクラスタに集約できる」などとした。


Project Avalonの開発も進められているProject Avalonの構成イメージ

 

アメージング・エクスペリエンスを提供するのがCitrix

 最後にテンプルトン氏は、跳躍器具の上でジャンプしている男性の写真をスクリーンに映し出しながら、「Appleは100%デザインに集中した会社であり、そのデバイスを活用するために、どこでも、どんな形でも利用できるクラウドが必要になる。Citrixは、そこにおいて、アメージング・エクスペリエンスを提供する。跳躍器具の上で飛んでいる男性は、重力が発生するなかで浮いているようにみえる。こうした環境がモバイルワークスタイルの状況ではないだろうか」などとした。

 一方、シトリックス 代表取締役社長のマイケル・キング氏は、「2011年~2012年にかけて、日本においてデスクトップの仮想化の動きが進展している」と語り、XenDesktopで業務効率化を実現した資生堂の例をビデオで紹介。

 さらに、「日本では360社のパートナーがシトリックスの製品、サービスを提案している」とし、「このほど、日本市場において、モバイルアプリケーション開発コンテストを行い、グランプリにiNet、ベストアイデアにフリースタイルが入賞した。会場でぜひこのソリューションをみてほしい」と語った。また、日本において、社員が年間1日はボランティアを行っていることも紹介。「被災地を訪れ、社会に貢献する活動を行っている」などとした。

 最後に、Citrix iForum 2012 Japanの概要について触れ、「今回は参加者が倍増、セッション数が倍増している」などと語った。


トランポリンの上でジャンプする写真を映し出すテンプルトン氏シトリックス 代表取締役社長のマイケル・キング氏さまざまなプラットフォーム環境をまとめるとこうしたロゴが完成する、とテンプルトン氏は会場を笑いの渦とした

 

OpenStackコミュニティから離脱した理由は?

ラウンドテーブルに出席した、米Citrix システムズ プレジデント兼CEOのマーク・テンプルトン氏

 基調講演のあとに行われた報道関係者向けのラウンドテーブルで、テンプルトン氏はProject Avalonについて、「技術的に、すべてを統合することにより、新たな価値を提供できる。ここでは、既存の資産も統合することができる。垂直統合ではなく、水平統合である」などと語ったほか、「日本のユーザーが新たなテクノロジーに対して、必ずしも歩み遅いとはいえない。ただ、日本においては、複雑な要求が多い点が特徴だと考えている。レガシー環境を持つ日本の顧客は、Project Avalonを活用することで、レガシーアプリケーションやインフラを、モバイル対応、クラウドサービス対応といった新たな形の環境へと、柔軟に移行することができる」などとした。

 また、Cloud.comを買収以降、OpenStackから離脱し、CloudStackへとリソースを集中したことに触れ、「開発を2つに分けていては、効率が悪いという点と、OpenStackのコミュニティでは必要と思っている進ちょくが実現できない、プロダクトをデリバリーする上でできるだけ速く進める必要があると考え、厳しい判断であったが、エンジニアリングをCloudSatckに集中した。サービスプロバイダに対する責任を果たすこと、Amazonスタイルのクラウドデザインはいま起こっていることであり、それをいち早く市場に投入する必要があると判断した。CloudSatckにより、オープン化と顧客への提案を加速できる」と語った。

 さらにCitrix Receiverでは、対応するリモートアクセス元の環境がWindowsだけでいいのか、という問いに対し「Receiverは特定のデバイスに依存しないものへとさらに進化しており、いま再定義をしているところにある。Androidなど他のプラットフォームにも対応していくことを検討しているところだ」などとした。

パートナーセッションも多数開催

 この日はパートナーのセッションもさまざま行われたが、このイベントのダイヤモンドスポンサーである日商エレクトロニクスでは、マーケティング本部 第二プロダクトマーケティング部 部長の榎本瑞樹氏が、セッション「2012年の 新潮流!モバイル、クラウド、ビックデータを斬る」で、日本でも今後、徐々にBYOD(Bring Your Own Device)が広がっていくと語った。

 BYODは企業だけでなく、従業員にも多くのメリットがあるものの、セキュリティやネットワークの課題があるため導入が進んでいないという。これらの課題については、早期にポリシーを策定することで、なし崩し的なBYODを防ぐ事ができるとのことだ。さらに今のライフスタイルに合わせた使い方をすることで、ワークライフ・シナジーによる経営改革や企業競争力の向上につながると榎本は強調する。

 加えて、「OpenFlowを利用したSDN(Software Defined Network)環境によるネットワークのクラウド化によって、柔軟なサーバー環境が構築でき、ニーズに合わせたクラウド環境の構築ができるようになる」と、現在のトレンドを説明。さらに、こうした複雑なクラウド環境をコントロールするために、CloudStack(Citrix CloudPlatform)のような、クラウド管理ソフトウェアの重要性が高まると述べた。

 榎本氏によれば、「日商エレクトロニクスは、2012年の1~6月期において、Citrixの全製品取り扱えるトップディストリビューターとして、ナンバーワンになっており、さまざまなクラウド環境、仮想化環境に柔軟に対応できる」という。具体的には、Citrix製品を含めてさまざまなコンポーネントを組み合わせ、特定ベンダーの製品に捉われないクラウドソリューション「Nissho-Blocks」の提供を開始しており、その企業環境に合わせたクラウド環境を提供できるとのことだ。

 なお、このセッションは18日も開催される。


日商エレクトロニクス マーケティング本部 第二プロダクトマーケティング部 部長 榎本瑞樹氏特定のソフトウェアに捉われないクラウドソリューション「Nissho-Blocks」
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