セールスフォース・ドットコム、Cloudforce 2011 JAPANを開催

~ベニオフCEOが基調講演で「ソーシャルエンタープライズ」を強く打ち出す


ザ・プリンス パークタワー東京で開催された同社のプライベートイベント「Cloudforce 2011 JAPAN」

 セールスフォース・ドットコム株式会社(以下、セールスフォース)は、12月14・15日の2日間、東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京で、同社のプライベートイベント「Cloudforce 2011 JAPAN」を開催している。

 テーマは、「WELCOM TO THE SOCIAL ENTERPRISE」。クラウド・コンピューティングに向けた大きな潮流が勢いを増すとともに、FacebookやTwitterに代表されるソーシャルメディアを、企業で活用するという動きが活発化。今回のイベントでは、「クラウド」と「ソーシャル」を有機的に結びつける「Social Enterprise」を強く打ち出す内容となり、1万人以上が事前登録するという大規模なものとなった。


基調講演にはベニオフCEOが登場

米salesforce.comのマーク・ベニオフCEO

 Cloudforce 2011 JAPANの初日の午前10時30分から始まった基調講演には、米salesforce.comのマーク・ベニオフCEOが登場。ソーシャルエンタープライズについて熱く語った。

 ベニオフCEOは、基調講演の冒頭、「当社は、クラウドによってスタートした会社だが、これからソーシャルの世界に入っていく。ソーシャル革命が訪れており、この変革にみなさんが参画することを呼びかけたい」と切り出した。

 ベニオフCEOは、Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグ氏が、ソーシャル革命をリードしているとする一方、今年発生したエジプトやチュニジアの政権崩壊などにおいては、Facebookが利用され、一人がリーダーとなって革命を起こしたものではないと説明。また、日本でも反原発運動が新聞などでは報道されなかったものの、ソーシャルメディアで取り上げられている事実などを紹介した。


現在はソーシャル革命が訪れている反原発運動の盛り上がりなどはその例だという
ニール・ヤング氏

 ベニオフ氏はゲストして登壇したミュージシャンのニール・ヤング氏に意見を求め、同氏は、「新たなテクノロジーを使って、大きな間違いを正すことができ、進歩に大きく貢献することになる」などとコメントした。

 また、ヤング氏は、「日本人やお互いのことを助けるというやさしさがあり、輪がある。世界はそれを学ばなくてはならない。震災後、大きな痛みを経験しているが、多くを語らず対処している。これこそが日本の文化であり、新たなテクノロジーを通じて、日本のことを学びたい」とも語った。

 一方、日本に対して強いコミットとして、企業への出資を行っているほか、復興支援として100万ドルを寄付。さらに、復興支援に取り組んでいる組織などに対してデータセンターを無償で提供していることなどについても説明。また、「これからも日本の復興に積極的に取り組んできたい」とした。

 出席した元総務大臣で衆議院総務委員会委員長の原口一博氏は、「震災後に、ベニオフ氏がオバマ大統領と会食するということだったので、日本への支援についても伝えてもらった。その点に感謝している」と、ベニオフCEOに感謝の意を述べた。

 また、ベニオフCEOは、現在17億人がソーシャルメディアを利用しており、メールの利用数を超えていること、月あたり4時間もFacebookを利用しており、Webの利用から移行していること、さらにPCからのアクセスではなく、モバイル端末を利用している人が増えていること、Facebookのアプリケーションが50万4000に達していることなどを示しながら、「ソーシャル革命は、結果としてソーシャルデバイドを生み出している。個人はすでにソーシャル化しているのに、企業や製品はソーシャル化していないからだ。つまり、企業は、そのギャップを埋めなくてはならない」と説明。

 さらにその方法として「そのためには、3つのステップがある。1つめは、データベースの進化が必要であり、ここで顧客のソーシャルプロファイルを構築すること、2つめのステップでは、社員のソーシャルネットワークを作ること、そして、最後に顧客のソーシャルネットワーク化、製品のソーシャルネットワーク化が必要である」とし、「これまでは最新の技術は、大手企業しか導入できなかったが、クラウドではすべての企業が民主的に、スピーディーに導入できるようになる点が異なる」と述べた。


FacebookがWeb利用の主流にモバイルアプリケーションの利用がWebブラウザを上回った

 

クラウドへの期待感を日本郵政や神奈川県知事などが表明

 一方、ベニオフCEOは、NTTコミュニケーションズとの協業によって、開設した東京データセンターが稼働したことを示しながら、これがもっともクリーンなデータセンターであることなどに言及した。

 ここでゲストとして登壇した、日本郵政の坂篤郎取締役兼代表執行役副社長は、「日本にデータセンターがあることは運用の面でも安心がある。セールスフォースに対する信頼を増したといえる。2万4000の郵便局を有機的に結び、効率をあげ、顧客サービスを高めるという点でもクラウド・コンピューティングは武器になる」とコメント。


日本郵政での事例日本郵政の坂篤郎取締役兼代表執行役副社長

 神奈川県の黒岩祐治知事は、「セールスフォースの東京データセンターは、東京といいながらも、東京都ではなく、神奈川県にある。そして、神奈川県自らもセールスフォースを利用している。私は医療情報への取り組みを強化したいと考えている。神奈川県では、電子カルテは20%ぐらいしか導入されていないが、今後は、世界中どこの病院にいっても利用できるマイカルテといったものを実現したいと考えており、これを神奈川から始めたい。そのためには、クラウドによるシステムに期待したい」などと述べた。

 また、トヨタ自動車(以下、トヨタ)との協業によって取り組んでいるトヨタフレンドについても説明。ビデオを通じて、トヨタの豊田章男社長がメッセージを寄せ、「ソーシャルネットワークに出会ったのは、ベニオフ氏の自宅に訪れた時。こういう世界があるということを知り、私の人生が大きく変化している。社員がChatterでどんな話をしているのかがわかり、さらに、人と人がコミュニケーションしている世界のなかに、トヨタフレンドを通じてクルマが入ってくる。ここでは、人格ではなく、車格というものが出てくるだろう。友達ネットワークが、人と人、クルマと人、クルマとクルマによって、結びつく世界がやってくる」などと語った。

 ベニオフCEOは、「トヨタ自動車ではマネージャーズ・ミーティングでChatterを利用。部門の壁を越えたコラボレーションを行っている。いま、トヨタはディーラーとの関係を再構築している。ここでソーシャルネットワークが活用され、より簡単にコミュニケーションできるようになる」とした。

 また、事例のひとつとして、キヤノンマーケティングジャパンの取り組みも紹介。同社では、営業活動などにSales Cloudを利用し、モバイルデバイスの活用による生産性向上を図っていることを示した。


トヨタでのソーシャルエンタープライズトップがChatterでコラボレーションを行っているというキヤノンマーケティングジャパンでの事例

 

ソーシャルエンタープライズによって“顧客を知る”ことが可能に

 ここで、セールスフォース・ドットコム プロダクトマーケティングの田崎純一郎氏が、Chatterなどの同社プロダクトを活用したデモンストレーションを行い、企業において、ソーシャルメディアを利用したチームコラボレーションによる営業活動の実例などを紹介した。

 ベニオフCEOは、「顧客を満足させるには、顧客を知り、好みを把握することが必要。ソーシャルエンタープライズによってこれが実現できる」と語り、KLM航空が18万人にのぼるTwitterフォロワーを持ち、年中無休のユーザーサポートを実現していること、京都の老舗旅館である陣屋においては、Service Cloudを活用し、FacebookとSalesforceを連携させることで、利用者の本音を共有したり、嗜好(しこう)にあわせたサービスを提供したりしている例などに触れた。

 さらに、ビデオを通じて、バーバリーがソーシャルメディアを利用して、全世界の社員や店舗、顧客とのコミュニケーションを強化している例を紹介した。また、日本における日本郵政やファーストリテイリングの利用事例のほか、米国でのディズニーによるFacebookを利用したサービス、アシックスがニューヨークシティマラソンにおいて声援メッセージを集めた事例、パナソニックが豪州においてTwitterなどの顧客の声を収集しているほか、キャンペーンの効果測定、競合他社のモニタリングなどを行っていることについても言及した。

 また、3つめのステップである顧客や製品のソーシャルネットワーク化においては、Herokuが有効であること、Radian6に活用できることなどを示した。

 ベニオフCEOは、「今回の講演を通じて、新たなビジネスの仕方があるということを示したかった。われわれは、ソーシャルエンタープライズへの扉を開いている。そのためにソーシャルエンタープライズのライセンス契約を見直し、全社員に全製品に展開できるようにした」などと語った。


KLM航空の事例ファーストリテイリングの事例
ニューヨークシティマラソンでのHerokuの活用事例ソーシャルネットワーク化ではHerokuが活用できるという
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