【BUILDレポート】ついに姿を現した次期Windows「Windows 8」
9月13日から4日間、米国アナハイムで開催されているMicrosoftの開発者向けカンファレンス「BUILD」で、ベールに包まれていたWindows 8(開発コード名)が参加者の目の前に姿を現した。
数ヶ月前から、いくつかのプレスイベントで少しだけデモをしたり、数週間前からはWindows 8に関する情報を開発者から発信するブログ「Building Windows 8」を開始したりしていた。しかし、多くの聴衆の前で、Windows 8のデモを行ったり、詳細な技術情報を提供したりしたのは、今回のカンファレンスが初めてだ。
Windows 8は、新しいユーザーインターフェイス「Metro(メトロ)」の採用、x86/x64といったインテルアーキテクチャ以外にARM CPUへの対応など、さまざまな部分で大幅な改良が行われている。こうした変化などからMicrosoftでは、再構築したWindows(reimagines Windows)とWindows 8を呼んでいる。
カンファレンスでは、Windows 8に関するさまざまなテクニカル・セッションが行われており、もちろん、Windows 8とほぼ同時期にリリースが予定されているWindows 8 Serverに関しても、詳細な情報が提供される。
今後カンファレンスで解説された技術情報をレポートしていくが、まずはWindows 8で大きく変わったユーザーインターフェイスについて説明していく。
■Windows Phone 7で採用されたMetroをベースUIに
Windows 8では、ベースのユーザーインターフェイスとして、Windows Phone 7で採用されたMetro UIが採用された。このこと自体は、台湾で行われたComputexや同時期に米国で開催されたD Conferenceなどでも発表されている。
しかし実際に、既存のWindows Desktop UIとMetro UIを融合させるのか、2つのUIが別々のモードとして動作するのか、といった点は謎だった。Buildカンファレンスで明らかにされたのは、Metro UIベースのMteroスタイルが、Windows 8の基本UIとなることだった。
Windows 8で採用されたMetroスタイル。OSを起動すると、この画面が一番初めに表示される。アプリケーションは、グループ化することもできるし、Windows Phone7のようにタイルの配置を換えることも可能だ |
Windows 8では、左側のサイドをタッチして、スライドさせれば、起動しているアプリケーションを切り替えることができる。また、位置をあわせれば、画面を分割して、複数のアプリケーションを表示することも可能 |
今までのWindowsでは、OSが起動するとWindowsデスクトップが表示された。しかし、Windows 8は、OSが起動するとMetroスタイルが起動し、そのタイルの1つとしてWindowsデスクトップが存在している。Windowsデスクトップにスイッチすれば、今までのWindowsとほとんど変わりはない。ただ、Windows 8のWindowsデスクトップの左隅に表示されているスタートボタンをクリックすれば(キーボードのWindowsキーでもOK)、Metroスタイルに戻るようになっている。
このように、Metroスタイルをベースにして、既存のWindowsデスクトップが動作するようになっている。企業ユーザーにとっては、ベースとなるUIがWindowsデスクトップから大きく変化するため、トレーニングなどに時間がかかるかもしれない。ただ、Metroスタイルは、直感的で分かりやすくなっている。個人的には、それほど長時間のトレーニングが必要には思えない。
さらにMetroスタイルは、カスタマイズが簡単にできるため、企業で利用する場合は、必要となるアプリケーションをMetroスタイル上に登録しておけば、ランチャーの代わりにすることもできるだろう。
また、Windowsデスクトップで動作するアプリケーションを、Metroスタイル上のタイルとして登録することもできる。Windows 7で動作しているアプリケーションなら、新たな開発をしなくてもWindows 8上のデスクトップで問題なく動作する。
■異なるアーキテクチャをサポートできるMetro Style Platform
新しい開発ツールのVisual Studio 11(仮称)では、Metroスタイルでのアプリケーション開発が可能になっている |
Metroスタイル上で動作するアプリケーション(Windowsデスクトップではなく)は、新たに開発する必要がある。Microsoftは、Windows 8でMetro Style Platformを新たに採用している。これには、Windowsカーネル上に新たにWin RunTime API群というものを開発して、その上にXAMLとC/C++または、C#、VBでMetroスタイルのアプリケーションをプログラミングしていくか、JavaScriptとHTML 5/CSSを使ってプログラミングするのかの2種類の方法が用意されている。
プログラミングとしては、HTML 5を使ったほうが開発はしやすいが、C#やVBなどを使ったプログラミングに比べると、いくつか制限があったり、プログラムの中身が簡単に参照されたり、といったデメリットもある。
しかしMetroスタイルのアプリケーションは、x86/x64アーキテクチャのCPUだけでなく、ARMアーキテクチャのCPU上で動作する、というメリットがある。CPUアーキテクチャが異なっても、Metroスタイルのアプリケーションなら1つで両方のアーキテクチャをサポートするのだ。
Metroスタイルのアプリケーションは、既存のウインドウベースのアプリケーションとは異なり、シンプルで使いやすいインターフェイスとなっている。このため、今後アプリケーションはMetroスタイルへとシフトしていくMicrosoftでは考えているようだ。ただ、このあたりは、実際にWindows 8を発表してみないと、多くのユーザーに受け入れられるかは未知数ではある。
もう1つ、Metroスタイルのメリットとしては、マルチタッチ機能を持ったタブレット端末を意識しているため、タブレット端末においてはMetroスタイルのアプリケーションが主流となる可能が高いことがある。
もちろん、Metroスタイルのアプリケーションでも、マウスやキーボードといったPCのデバイスをサポートしているため、タブレット端末でなければ、Windows 8が使えないというわけではない。既存のデスクトップPCやノートPCでも十分にWindows 8のメリットが享受できる。
タブレットなどのキーボードがないデバイスでは、Windows Phone7のようにキーボードが表示される | 左右に分離した配置のキーボードも用意されている |
Windows 8に標準搭載されるIE10は、既存のWindowsデスクトップとMetroスタイルの両方に対応している。画面は、MetroスタイルのIE10。画面上部にアクセスしているWebサイトが縮小表示されている |
Windows 8は、Metoro以外にも、Internet Explorer(IE) 10の標準搭載、アプリケーションのオンライン販売を行うWindows Storeのサポート、ファイルエクスプローラのUIをリボンUIに変更、新しいタスクマネージャの開発、ファイルのコピーや移動などのパフォーマンス向上、USB 3.0などの新しいデバイスのサポート、クライアントOSにおいて仮想化のHyper-Vをサポート、OSのブートスピードのアップ(3秒で起動)など、さまざまな部分にわたっている。
Windows 8では、マルチモニタが使いやすくなっている。ツールバーがセカンドモニタでもサポートされている。また、デスクトップのバックグラウンド写真もパノラマ写真のようにつなげて表示される |
■Windows 8の動作環境はWindows 7を踏襲
ユーザーにとって気になるのは、Windows 8の動作環境だろう。x86/x64アーキテクチャCPUに関しては、Windows VistaやWindows 7とまったく同じだ。1GHz以上のCPU、1GB以上のメモリ(64ビット環境は2GB以上)、16GB以上のディスクスペース(64ビット環境は20GB以上)、DirectX9に対応したグラフィックドライバ(WDDM 1.0以上)、となっている。
開発中のため、Windows 8リリース時には動作環境が変化する可能性もあるが、Microsoftでは、Windows Vista時代のPCでもWindows 8が動作するように、開発を続けている。
なお、今回紹介したMetroスタイル以外に機能に関しては、今後徐々に紹介していく予定だ。