Windows 8時代も日本の開発者を重視する姿勢は変わらない

~米Microsoft ソマセガーシニアバイスプレジデントに聞く


 「次世代Windowsは大変すばらしいOSである。私自身も登場を楽しみに待っている新たなプラットフォーム」――。

 開発者向け支援を担当するディベロッパーディビジョンを担当するS・ソマセガー シニアバイスプレジデントは、Windows 8についてこう切り出した。米国時間の9月12日から米アナハイムで開催される予定の開発者向け会議のBuildでは、その詳細についても明らかにされる予定であり、今後、開発者に対する情報提供となども加速することになるだろう。

 ディベロッパーディビジョンにおけるWindows 7や次世代Windowsへの取り組み、そして日本の開発者に対するメッセージなどを、ソマセガー シニアバイスプレジデントに聞いた。

 

Windows 7ではVistaでの反省を教訓に

――先ごろ、Microsoftでは、Windows 7の累計出荷が4億ライセンスに達したと発表しました。この実績に対して、ディベロッパーディビジョンとしてはどんな貢献を果たしてきたととらえていますか。

ディベロッパーディビジョン担当シニアバイスプレジデントのS・ソマセガー氏

ソマセガー氏:ディベロッパーディビジョンでは、Windows 7のためのアプリケーション開発ツールとして、Visual StudioやExpression Studio、.NETフレームワーク、Silverlightのほか、C#やC++、Visual BASICなどを提供しています。こうしたツールは、開発者にとっては大変魅力的なものであり、Windows 7対応のアプリケーションを開発するためのドライバーとして重要な役割を果たしています。

 また、ディベロッパーディビジョンは、Windowsの製品チームと緊密な関係を持ちながら、Windows 7のエコシステムを活用することで、これらのツールを広く浸透させることに成功した。こうしたエコシステムの存在が、Windows 7というすばらしいプラットフォームをより魅力的なものにしています。

 振り返ってみますと、Windows Vistaでは、開発に苦労し、製品リリースまでにかなりの時間がかかったという反省があります。その経験を教訓に、Windows 7においては、エンドユーザーエクスペリエンスをどうするのか、あるいは、プラットフォームの信頼性と、エンタープライズマネジメントにも対応した拡張性、そして、将来に向けた可能性をどう実現するのかといったことに注力しました。

 特に重視したのが、Windows VistaおよびWindows XPとの互換性です。新たな機能にも対応させながら、既存のアプリケーションとの互換性をシンプルに実現させることに力を注ぎました。そうした成果が、4億ライセンスもの累計出荷につながっていると判断しています。


――クラウド・コンピューティング時代になり、競合環境はますます厳しくなってきたといえます。そうしたなかで、Microsoftのディベロッパーディビジョンの強みとはなんでしょうか。

 

ソマセガー氏:最も大切にしているのはバランスです。MicrosoftはWindowsクライアント、Windows Phone、Windows Server、Windows Azureといったプラットフォームを提供する会社である一方で、SharePointやSQL Server、Officeなどのアプリケーションも開発しています。

 そのため、ファーストパーティでありながらアプリケーションを開発し、一部ではパートナー企業と他社と競合する場合もある。OracleやAmazon.com、Googleは、Microsoftにとってパートナーである一方で、競合メーカーという位置づけにもなります。

 その点をお互いに明確にしながら、プラットフォームの観点では、いかに相互連携を図り、アプリケーションを統合化していくかを提案する必要がある。これを社内、社外に対して明確にしておく必要がありますし、情報に関しても社内、社外を問わずに区別なく提供していく必要がある。

 ただし、ファーストパーティであるMicrosoftが提供する開発ツールは、大変優れたものであり、提供するプラットフォームもすばらしいものです。そこにMicrosoftの強みがあります。

 

Visual Studioや.NET Frameworkの次世代が2012年度に登場

――7月から始まったMicrosoftの2012年度における、ディベロッパーディビジョンの重点ポイントはなんですか。

ソマセガー氏:開発ツールの観点からいえば、Visual Studioや.NET Frameworkの次のバージョンが登場することが、最大のポイントとなります。これらはすでに2011年5月に米アトランタで開催したTech Ed 2011のなかでアナウンスしていますが、今年9月13日から米アナハイムで開催する予定のBuildにおいて、より詳しくお話しすることになります。

 また、Windows Phoneでは、Mangoを搭載した端末が登場しますから、それにあわせてより使いやすい開発者向けツールを提供する考えです。

 一方で、Windows Azureの開発ツールもより使いやすい、次のバージョンを提供していきたいと考えています。

 加えて、次世代のWindowsを開発するためのツールを用意するのも2011年度の重要なテーマです。ここではVisual Studioがベストなツールになると考えています。


――日本のディベロッパーにはどんなことを期待していますか?

 

ソマセガー氏:Microsoftは、日本のディベロッパーを大変重視しています。これは開発ツールをローカライズするときに、日本語対応を最優先としていることからもわかっていただけると思います。

 Microsoftが日本のディベロッパーを大切にしているのは、日本の開発者コミュニティが大変重要であり、日本からのリクワイアメントが、グローバル展開を進める上でも重要だ認識しているからです。次世代のWindows環境においてもこの関係は変わるものではありませんし、これまでと同様に日本のディベロッパーを重視していくことになります。

 日本のディベロッパーに対して申し上げたいのは、加速するクラウド・コンピューティングのトレンドに乗っていくことがいまは大変重要であるということ、そして、マルチデバイスに対してスキルセットを集中させ、最新の情報を持って対応していくことが必要であること。この2点を強く認識してもらいたい。

 デバイスエクスプロージョンという言葉が使われるように、利用されるデバイスは爆発的な勢いで広がりをみせています。フロントエンドのマルチデバイスにおける表現力をどう高めていくか、そしてバックエンドとなるクラウド・コンピューティングにおいては、アプリケーションのロジックをどうしていくか、データをどう扱うかといったことが大切な要素になります。新たな観点でアプリケーションを開発する姿勢をぜひ持ってもらいたいですね。

 

BuildではWindows 8に関する情報も出る?

――先ほど触れた9月に開催される予定のBuildでは、なにが注目点になってきますか。

ソマセガー氏:Buildでは、新たなプラットフォームと開発ツールに関して興味深いものが出てくると考えてください。どんな内容になるのかといった詳細は、9月を待っていただきたい。

 今回、Buildという新たな名称による開発者向けイベントを開催するのは、幅広いディベロッパーに対して情報を提供し、多くのディベロッパーにビジネスオポチュニティを提供したいという狙いがあるからです。アプリケーションの開発者だけでなく、Silverlightを活用してサービスを提供するウェブデザイナーなどにも参加をしていただき、これまでにはない新たなアプリケーションやサービスを創出してもらうための情報を提供したいと考えています。

 その点でも、これまでの開発者向けイベントに比べ、間口を広げたものになります。新しいエクスペリエンスを持ったアプリケーションやサービスを開発できることを広く知らしめたいと考えています。


――ここではWindows 8に関する情報が出てくるとの憶測もありますが。

 

ソマセガー氏:それに関しては、現時点ではなんらお話しすることはできません(笑)。もう少し待っていてください。

 ただ、ディベロッパーの方々には、こう考えていただきたい。先にも触れたように、Windows 7は出荷開始以来、累計で4億ライセンスの実績があります。まずはWindows 7のプラットフォームに対してアプリケーションやサービスを提供することが大切であり、それがWindows 8に対する最大の準備であり、近道になるといえます。

 Windows 7とWindows 8の開発環境には近いものがあります。Windowsは、エンタープライズから個人ユーザーまで、幅広いユーザーに利用していただいているプラットフォームです。そして、このプラットフォームの上で、多くのディベロッパーとのお付き合いがある。業界最大のエコシステムを持っているのがWindowsであり、それに対する可用性や価値を提供しつづけることが重要なテーマです。

 次世代のWindowsは、大変すばらしいものに仕上がっています。私自身も登場を楽しみに待っている新たなプラットフォームです。ぜひ楽しみに待っていてほしいですね。

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(大河原 克行)
2011/8/19 06:00