アプリストアや高速起動~「Windows 8」情報がリーク?


 Microsoftの次期OS「Windows 8」に関する情報がリークしたようだ。現行版の「Windows 7」は評判、業績ともに上々だが、市場は今、新OSの参入や新カテゴリーの誕生などで大きな変化のまっただ中にある。圧倒的な占有率を誇るパソコンOSの次バージョンがどんなものになっていくのか、いやが上にも関心は高い。

NDA扱いのWindows 8に関するプレゼン資料が流出か

 Microsoft Journalというブログを運営しているFrancisco Martin Garcia氏が6月26日、「Windows 8」の計画を示すプレゼンテーション資料を自分のブログで公開。気付いた他のブロガーの注目を集めたが、すぐにアクセス不能となった。 Microsoft Journalは「Live Space」で公開されていた。だが2日後、Microsoft関連情報のブログサイト、 Microsoft KitchenのStephen Chapman氏が、イタリアのMicrosoft情報サイトから転載するという形で公開。資料は多くの人の目にとまることとなった。

 このプレゼンテーション資料には、全ページに「Microsoft Confidential」(社外秘)「NDA」(秘密保持契約)と書かれており、 Appleの戦略分析、ターゲットオーディエンス、開発者や企業向けの計画、搭載機の筐体、それに個々の機能や特徴に関する説明がまとめられている。作成日は2010年4月20日。枚数にして50枚以上のボリュームがある。

 Microsoftは、メディアの問い合わせに対してもコメントしていない。本当にMicrosoftの次期OSの資料なのかという点では、懐疑的な見方をする人もいる。しかし、公開したChapman氏や、MicrosoftウォッチャーのMary Jo Foley氏は、「本物らしい」と述べており、内部情報が漏れたものだと考えている。

メディア各誌が流出資料からWindows 8を採点

 では、メディアは「Windows 8の資料」をみて、どのように採点したのだろう。

 Computerworldは、資料に説明されている(1)アプリケーションストア(2)消費電力効率化(3)起動時間の短縮(4)ファイルやアプリケーションを別にバックアップすることなくWindowsの再インストールできるプッシュボタンリセット(5)顔認識によるログイン(6)「スレート」端末への対応(7)ヘルプとサポートの強化(8)ID管理改善/クラウド――の8つに期待を寄せている。

 Foley氏が注目している点もほぼこれと同じだ。中でも、スレートについては、組み込み向けの「Windows Embedded Compact」でも対応すると予想し、「どのように差別化を図るのか興味深い」としている。

 また、PC Worldは顔認識と起動時間短縮をピックアップした。顔認識は、多くのPC、さらにはスマートフォンがカメラを搭載しているが、これを「革新的な方法で」活用するものだと評価する。起動時間短縮は、「Ubuntu」などのLinuxディストリビューションも強化しており、Googleが開発中の「Chrome OS」では大きなセールスポイントになるとみられている。

 Ars Technicaは、アプリケーションストアを「最も野心的な機能」と見る。Appleの「AppStore」などスマートフォンで成功しているアプリストアモデルをPC向けOSに導入するというものだ。が、実はMicrosoftがWindows OSでアプリストアを提供するのは初めてではない。

 Microsoftはかつて、「Digital Locker」プラットフォームを利用した「Microsoft Marketplace」を開設したが、不振で2009年8月にサービスを打ち切っている。しかし、今回は環境も大きく変わっている。マーケティング、提供地域、OSとの統合などの問題に対応できれば成功するかもしれない、とArs Technicaは予想している。

 eWeekはクラウド面の計画に注目した。「Windowsアカウントとクラウドの結びつき」などのプレゼン資料中の説明文から、Microsoft はWindows 8で、Chrome OSなどインターネット主導のOSとの競争を視野に入れていると見る。

 また、eWeekはユニークなデザインを持つプロトタイプマシンの画像を「Appleに似ている」と指摘する。このマシンの説明に「タッチ画面を搭載する」とあることから、タブレットが優先的なフォームファクタになることを示唆するものだとの見方を示している。

 Ars Technicaは、Windows 8がデスクトップ、ノート、スレートの3つのフォームファクタに対象としている点に注目。このことが「Microsoftには、iPadやAndroidベースのスレート端末と真正面から競争できる、専用プラットフォームをいまだに持っていない」ことを示していると見ている。

 メディア各社の資料への評価は、意外なものというより、おおむね予想通りということのようだ。Windowsのこれまでの流れ、OS 市場のトレンドを考えると、妥当な内容といったところだろうか。

 Microsoftによると、Windows 7はすでに1億5000万以上のライセンスを販売。過去最高のピッチで伸びているという。Windows は強固なシェアを持つが、ネットブック、タブレットなどのフォームファクタやWebアプリ、クラウドなど新しいトレンドの台頭により PC市場は大きく動いている。Microsoftは守りながら、同時に攻めていくことができるのか――。Windows 8は2012年にリリースと予想されている。

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(岡田陽子=Infostand)
2010/7/5 08:55