ベニオフCEOが基調講演「ソーシャルエンタープライズこそ、ソフトの新しい方向性」

salesforce.comのイベントDreamforce2011が開幕


 8月31日(米国時間)、米・サンフランシスコで米salesforce.comのプライベートイベント「Dreamforce2011」が開幕。会長兼最高経営責任者(CEO)であるマーク・ベニオフ氏が基調講演を行い、企業がソーシャルメディアを活用することで社内の情報共有の促進、顧客との関係性強化などを実現する「ソーシャルエンタープライズ」を実現するための新製品などをアピールした。

米salesforce.com 会長兼最高経営責任者 マーク・ベニオフ氏

 ベニオフ氏は、エジプトやリビアを例に挙げ、「『アラブの春』と呼ばれる革命が、ソーシャル技術を活用して起こった。同様の変革は国だけでなく企業においても起こる可能性がある。顧客の声に耳を傾けない企業は滅びる。これまでもそうした流れがあったが、この流れが今後大きく加速していくだろう。『エンタープライズの春』とでも呼ぶべき事態が起こる」と指摘した。

 そして企業が顧客の声に耳を傾ける手段として企業のソーシャル活用「ソーシャルエンタープライズ」の重要性を訴えた。

 「コンシューマの世界だけでなく、エンタープライズの世界でもソーシャル活用がスタートしている。その一方で、ソーシャルデバイドというものが存在している。お客さまも社員もソーシャル活用が進んでいる。しかし、お客さまは企業とソーシャルなつながりを持っているのだろうか?エンタープライズは本当にソーシャルになっているのか?消費者と企業の間にギャップが開いてしまっていないか?この亀裂をうめるためには何をしなければならないのか?それを探求しなければならない」。

 企業のソーシャル化を実現するための橋渡し役として、(1)データベース、(2)ソーシャルサービスとアプリケーションの連携、(3)Chatterを顧客が利用する仕組みという3つのステップが必要となるとした。

 データベースについては、Database.comによってソーシャルサービスに公開された顧客のプロフィール、発言などを取り込み、さらにモバイルでの展開、オープンなAPIを構築する仕組みを作る。データを置く場所についても、利用者ごとにオプションでチョイスできる仕組みとする。利用できるAPIについては、Database.comのホームページに用意されている最新ツールキットを利用することで取り込むことができる。


ソーシャルエンタープライズのコアは、マルチテナントクラウドコンピューティングdabase.comは複数のソーシャルサービスのデータを統合し、モバイルでの利用を可能とするデータをどこに置くのかは選択が可能

 さらに、Chatterの新機能としてユーザーのプレゼンスを表示する「Chatter Now」、顧客をChatterに招待する「Chatter Customer Groups」、ChatterとSharePointをつなげる「Chatter Connect」、「Chatter Inline Filters」、「Chatter Approvals」なども冬までに提供する予定だ。

 「Chatterを活用することで、情報を知っている人を探して、その人に電子メールを送って質問をするのではなく、質問を投げかけると答えを持っている誰かが返答してくれるようになる。インスタントメッセンジャーのような機能がChatter内に用意されているので、Chatter Nowで相手のプレゼンスを確認後、すぐに会話を始めることができる。Chatter Customer Groupsはお客さまをChatterに招待し、お客さまにChatterを利用してもらうことができるようになる。ファイアウォールが用意されているので、社内のセキュアな情報に立ち入られることなく、顧客と企業の会話ができるようになる」(ベニオフ氏)。
 キーノート会場の最前列には、歌手のニール・ヤング氏、MCハマー氏の姿もあり、それぞれ仕事にChatterを利用し、それぞれのビジネスに有効活用されていることも紹介された。


冬にはChatterの新機能として「Chatter Now」、「Chatter Customer Groups」、「Chatter Connect」、「Chatter Inline Filters」、「Chatter Approvals」を提供予定Chatter Customer Groupsは顧客をChatterに招待することが可能に会場には歌手のニール・ヤング氏の姿も
ソーシャルフィールドからの顧客の質問とChatterを連動する新機能も冬にパイロット版が登場予定ベニオフ氏とMCハマー

 昨年買収した顧客情報の提供サービス「Jigsaw」は、「data.com」に名称を変更。ダン&ブラッドストリートの企業情報サービスと統合した、セールス担当者などに必要な情報を一元的に提供していく。

 HTML5についてベニオフ氏は、「HTML登場と同様の技術的な大きな変化を起こすもので、次世代のハードウェア、ソフトウェアの変化を補完する役割を担う」と位置づける。

 この技術を活用し、Chatterをスマートフォン、タッチパネルデバイスで利用できる「Touch.Salesforce.com」を提供し、一度書いたアプリケーションが、どんなデバイスでも走る環境を作り、迅速にsalesforce.comのサービスと顧客が持つ独自アプリケーションの連携を実現する。

 ソーシャルメディアを上手に活用する企業例として、ゲームを提供するZyngaのサポート窓口、バンク・オブ・アメリカのFacebookページ、オランダの航空会社KLM、ディズニー、バーバリー、コカコーラ、ゲータレイドなどが紹介された。

 「こうした技術的な変化を実践している企業がすでに存在しており、例えばオランダの航空会社であるKLMのツイッターアカウントは、顧客からの質問に的確に答えていくことで、店舗一個分のパワーを保有している。KLMがYouTubeで提供しているビデオにはわれわれも大きなインパクトを受けた」(ベニオフ氏)


冬にはSales Cloudに「Social Contacts」、「Social Sales」、「Collaborative Forecasts」など150を越えるソーシャル系新機能が付け加わる予定「Jigsaw」が「data.com」へ名称変更し、新機能を付け加えて新たに登場予定新世代のハードとソフトをつなぐ存在となるのがHTML5

 PaaSプラットフォームの拡充としては、「HerokuがRubyだけでなくJavaをサポート。エンタープライズJavaを開発している開発者を支援する環境が整った」こともアピールされた。

 今年5月に発表になったトヨタ自動車との連携「トヨタフレンズ」は、ユーザー、自動車、販売店、メーカーなどとの連携を目指したもの。「これを実現するためには、当社としても大きな変化が必要となった。」とベニオフ氏は明らかにした。具体的にはプラットフォームの構造を変化させたのだという。

 ベニオフ氏は、「業界の構造自体が大きな変革期を迎えている。企業も改革と進化を遂げねばならない。ソーシャルエンタープライズとは何なのか。どういう風に皆さんの会社にフィットするのか。このコンセプトに向けてビジネスを進めていくことが、これからのソフトウェアの新しい方向性となる」と断言して初日の基調講演を締めくくった。

HerokuがJavaを採用し、さらにオープンな体制に2500社の顧客を持つradian6はソーシャルメディアから顧客の声を聞くツールとしてトップの地位を獲得5月に発表されたトヨタ自動車との提携で発表された、自動車と人、販売店、メーカーなどをつなぐ「トヨタフレンド」
トヨタフレンドを実現するために、セールスフォース・ドットコムではプラットフォームの構造を変更コカコーラとの連携では、自動販売機を利用する際にもプラスとなるサービスを提供

スマートフォンやタブレットからsalesforce.comへのアクセスを可能にする「touch」
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(三浦 優子)
2011/9/1 10:16